技術記事 蒸留

既設プラントの蒸留計算をするときに気をつけていること5選

概要

蒸留計算の手法自体は確立されているのですが、蒸留塔の能力計算となると途端に実測値と計算値が合わなくなることがよくあります。

合わない原因は様々で、いかに早く正確に原因を突き止められるかはエンジニアの腕によります。

本記事では、化学メーカーの設計担当者が実務で既設プラントの蒸留計算をするときに気をつけていることを5つ紹介します。

言い換えれば、蒸留塔が理論通りに運転できないときに確認すべき5点です。

もちろんこれ以外にもトラブル原因は様々ありますが、最低限これくらいは毎回きちんと検討すべきだと思う項目を挙げています。

気をつけていること5選

物性が合っているか

伝熱の計算でも物性は大事と書きましたが、蒸留では特に大事です。

いかに後の蒸留計算を正確にしようとも、最初の気液平衡物性がずれていればおしまいです。

以下に蒸気圧の推算方法を解説した記事を貼っておきます。

・純物質の蒸気圧推算

【純物質の蒸気圧】推算方法を解説:Antoine式が精度高い

蒸気圧とは気体と液体が平衡関係にある場合の気相の圧力のことで、化学プラントの装置設計においては非常に重要な物性です。特に蒸留塔のような2成分以上の混合物の気液平衡を扱う場合に、まず純物質の蒸気圧を算出する必要があります。

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また、2成分の気液平衡を推算するモデルについて、どれを選べば最も現実に近い計算ができるかを決定しなければなりません。

特に水系の非理想性が強い系では、適切なモデルを選択しなければ計算結果が全然合いません。

簡単に使い分けを解説した記事を下に貼っておきます。

・2成分間の気液平衡推算

【気液平衡】推算方法を解説:状態方程式モデル・活量係数モデルの使い分け

化学プラントにおいて気液平衡は多くの機器で取り扱いがあり、重要な物性となっています。その一方で、2成分間の相互作用を予測するのは非常に難しく、どんな系にも適用できるモデルは今のところ存在しません。したがって、取り扱う系に応じて気液平衡モデルを使い分ける必要があります。

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温度計・圧力計がどの位置に刺さっているか

既設装置の計算をするときは運転データを大いに参考にしたいところです。

蒸留塔には主に温度計・圧力計が設置されていると思いますが、どの位置に刺さっているかを確認するのが重要です。

蒸留塔の塔内は通常、温度・圧力分布が生じていますので、定常運転でも計器の位置が違えば値も異なります。

また、計器の測定箇所が気相なのか液相なのかも重要なポイントです。

十分に気液平衡が達成されている系では気相と液相の温度は同じ値となりますが、実際にはそうなっていないことがほとんどでしょう。

一般に気相は低沸点成分が多いため温度が低くなり、液相は高沸点成分が多いため温度が高くなります。

気相と液相で温度がずれるため、どちらの相を測定しているのかきちんと確認しましょう。

過去に運転条件の変更はあったか

蒸留塔の設計では、ある程度運転条件に変動があっても問題ないようにインターナル含めて設計されます。

しかし増産に増産を重ねた結果、設計当初の運転範囲からどんどんずれることがあります。

蒸留塔の処理量が増えると、エントレインメントが起こりやすくなり蒸留効率が悪化します。

蒸留計算をしてみて既設の方が分離性能が悪く、なおかつロードが高い場合はエントレを疑うべきでしょう。

さらにロードを上げてしまうとフラッディングを起こし運転できなくなるため注意が必要です。

理論段数は適切か

平衡段理論で計算する場合は、設定している理論段数が適切かどうか確認する必要があります。

理論段数がずれると正しい評価ができませんからね。

蒸留塔の設計段階時は運転データがないので、使用する物性が正しいものとして理論段数を決定するしかありません。

しかし既設の能力解析時は、実機のデータから実際の運転での理論段数を求めることができます。

実際の運転と計算結果にずれがある場合は、

  • 塔がエントレやウィーピングで正常に機能していない。
  • 計算に使用している物性が正しくない。

などの理由が考えられます。

ご参考までに、理論段数の計算方法についてまとめた記事を貼っておきます。

【理論段数】の推算方法を解説:蒸留塔の分離性能を決める!

理想的な条件を考えると、トレイの各段では気液平衡に達しています。このときに、要求される塔出口のスペックを満たすために必要なトレイ段数のことを理論段数といいます。

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インターナルがちゃんと充填されているか

トレイや充填物、ディストリビューター等がきちんと塔内に設置されて能力を発揮しているか、確認しましょう。

理論上の計算とは関係のないところで不良があり、蒸留塔の能力が出ないこともあります。

弊社で過去にあったらしい不良としては、

などです。

このような不良が原因だったとしても、最初にトラブルが起こったときはまず設計者が疑われるのが悲しいところです。

まとめ

蒸留計算をするときに気をつけていることを5つ紹介しました。

慣れてくればその蒸留塔でどの項目が重要か、わかるようになってくるので検討が楽になりますよ。

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