概要
塔内のガス流速が速い場合に、トレイ上や充填物表面の液滴がガスに同伴し上段へ運ばれる現象をエントレインメント(飛沫同伴)といいます。
本来下の段に存在する液が上の段に吹き飛ばされてしまうため、分離効率が悪化します。
ただし、全くエントレインメントが起こらない条件で設計しようとすると、塔径がかなり大きくなってしまうためコストがかかります。
実際には数%のエントレインメントは許容して、多少分離効率が悪化したとしても十分な段数や還流比を設定しておくのがよいでしょう。
また、塔頂部は空間に少し余裕があるので、デミスターを付けることで液滴が系外に運ばれるのを防止することが期待できます。
エントレインメント量の計算
流動解析(CFD)でも使用しなければ、ガスが液滴を吹き飛ばすという複雑な現象を理論的に計算することは困難です。
そこで、実験データによる相関式がいくつか提案されています。
しかしいずれも精度はそれほど良くないと言われています。
もし精度が求められる場合は、トレイメーカーに設計を依頼するのが良いでしょう。
もしくは、Jetting(ジェッティング)が起こる許容ガス速度以下で設計する方法もあります。
許容ガス速度はSouders-Brownの式から算出することができます。
$$u_{c}=K\sqrt{\frac{ρ_{L}-ρ_{G}}{ρ_{G}}}$$
uc:許容ガス速度[m/s]、K:定数
ρL:液密度[kg/m3]、ρG:ガス密度[kg/m3]
Huntらの実験式
Huntらはシーブトレイ(多孔板)のエントレインメントに関する実験式を発表しています。
$$e=0.018(73/σ)(u_{vn}/S')^{3.2}$$
e:エントレインメント量[kg(飛沫)/kg(ガス)]、σ:表面張力[dyn/cm]
uvn:片方の下降管を除いた塔断面積についてのガス速度[m/s]
S':見かけ段間隔(トレイ上液面から上段までの間隔)[m]
Fair-Mathewsの相関図
Fairはシーブトレイ、バブルキャップトレイについてエントレインメントに関する相関を発表しています。
ψ:飛沫同伴率[-]
L:液流量[kg/h]、G:ガス流量[kg/h]
ρL:液密度[kg/m3]、ρG:ガス密度[kg/m3]
上の相関図で計算するには、まず横軸の値を求めます。
次にフラッド%の値を計算します。
$$フラッド=\frac{ガス速度[m/s]}{フラッディング時のガス速度[m/s]}×100$$
横軸の値とフラッド%の曲線が交わる点が縦軸の値となります。