※当ブログではアフィリエイト・Google Adsense・The Moneytizerによる広告を掲載しています。

化学工学 撹拌

【浮遊限界撹拌速度】Njsについて解説:粒子の完全浮遊状態

2022年2月7日

概要

"完全浮遊"の定義は通常、Zwieteringの定義による「粒子が1個も槽底に1~2秒以上留まっていない状態」とされており、このときの撹拌回転数を浮遊限界撹拌速度、もしくは完全浮遊撹拌速度といいます。

この状態では粒子の全表面が液体と接しているため固液界面積が最大で、物質移動や反応の効率が良くなっています。

固体粒子の均一分散でも同様に固液界面積は最大となっていますが、動力がかかり過ぎるため効率が悪いです。物質移動や反応が目的の場合は均一分散にする必要性があまりありません。

したがって、固液撹拌では完全浮遊状態となるよう設計するのが最も良い仕様となることが多いです。

この記事では浮遊限界撹拌速度Njsの算出式等について紹介します。

算出式

浮遊限界撹拌速度Njs[1/s]は一般にZwieteringの相関式(1)から算出できます。

$$N_{js}=\frac{Sν^{0.1}{d_{p}}^{0.2}(gΔρ/ρ_{L})^{0.45}X^{0.13}}{d^{0.85}}・・・(1)$$

$$Δρ=ρ_{S}-ρ_{L}$$

S:装置形状因子、dp:粒子径[m]、ν:動粘度[m2/s]、g:重力加速度[m/s2]

Δρ:固体粒子と液体の密度差[kg/m3]、ρS:固体粒子密度[kg/m3]、ρL:液体密度[kg/m3]

X:固体粒子濃度[wtfrac]、d:翼径[m]

Sは装置形状によって変化する因子で、槽の大きさ、撹拌翼の種類、バッフルの有無等の影響をこのパラメータのみで表しています。

下表に代表的な値を示します。

種類SNpd/DC/D
プロペラ6.60.51/31/4
ディスク

タービン

3.95.01/21/6
パドル(2枚翼)2.35.92/31/7

Np:動力数[-]、D:槽径[m]、C:翼の槽底からの距離[m]

"撹拌技術"より引用

正直なところ、このパラメータSに関する知見は不足しており、実際に計算したい系にぴったりと当てはまるものはないのが普通でしょう。

実際は参考程度にNjsの値を算出しておき、設計回転数はそれよりも高くする、あるいはインバータ等で回転数を変えられる仕様にしておくのが良いでしょう。

どうしても正確なNjsを求める必要があるときは、実験等によって測定するしかありません。

しかしラボスケールでは測定できても実機では測定することが難しいです。実機で正確なnjsにおいて設計したい場合は、CFD(流動解析)で固液混相流の計算を精度良く行なう必要があります。

実験での測定方法

実験で浮遊限界回転速度を算出したい場合は、目視で確認するのが最も確実な方法でしょう。

透明な撹拌槽を槽底が見えるように設置して、回転数が低い状態から実験を開始し徐々に回転数を上げて槽底の粒子の状態を観察します。

ある回転数で槽底にある粒子がすべて流動する状態になりますが、そのときの回転数が浮遊限界撹拌速度Njsとなります。

おわりに

粒子が完全に浮遊している状態の回転数である、浮遊限界撹拌速度Njsについて解説しました。

Zwieteringの相関式で推算できますが、撹拌条件によっては推算精度が低いので過信しないようにしましょう。