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化学工学 蒸留

【トレイ(棚段)】を解説:蒸留における効率的な気液接触場

2021年3月19日

概要

棚段塔に使用される液を保持するための板をトレイ(棚段)といいます。

トレイ上に保持した液と塔底から登ってくるガスを接触させるために、トレイにはガスの通り穴が多数空いています。

“絵とき 蒸留技術基礎のきそ”より引用

上図に一般的なトレイの模式図を示します。

トレイの中央部は多数のガス穴が空いており、このエリアで主に気液接触を行ないます。

トレイの種類によってはガス穴にキャップが被せられる等、運転範囲の拡張や効率増加のための工夫がなされています。

トレイの端のエリアは上から液が落ちてくる、あるいは下に液が落ちていくスペースとなっており、このエリアをダウンカマー(液降下部)と呼びます。

“絵とき 蒸留技術基礎のきそ”より引用

また、一般的なトレイの安定操作範囲を上に示します。

トレイの運転範囲のガス流量の上限は一般的にフラッディング点です。
フラッディングが起こると、トレイの穴から噴き出るガスが液を上に持ち上げてしまいます。

こうなると液が降下しなくなるため塔の運転ができなくなります。

また、ガス流量の下限はウィーピング、もしくはウィーピングがより悪化するとダンピングになります。

ウィーピングとはガス流量が少なすぎて液が漏れる現象です。

少し液が漏れる程度なら分離効率が多少悪化するくらいでまだ運転できますが、液漏れが多くなると塔の運転に支障をきたします。

そのため、通常は適正なガス量、液量を計算してその範囲で運転できるようにトレイを設計します。

トレイの種類

トレイメーカーが各社様々なトレイを上市しています。

その中でも代表的なトレイを紹介します。

Sieve Tray(シーブトレイ)

"改訂新版 トレイ・パッキング"より引用

トレイにガス穴を開けただけの最もシンプルなトレイです。多孔板と呼ばれることもあります。
構造が簡単なため、トレイの中でも最も安価です。

ただし、安定運転領域が狭いという欠点があります。

ガス穴の上に何もないため、高ロード時にはガスが液を上に吹き飛ばしやすくエントレを起こしやすいと言われています。

一方で低ロード時にはガス穴から液が下に漏れるウィーピングが起こりやすいです。

これらの欠点を改善するためにその他の様々なトレイが開発されています。

Bubble Cap Tray(バブルキャップトレイ)

"改訂新版 トレイ・パッキング"より引用

実は最も古くから使用されているトレイで、日本語では泡鐘トレイと呼ばれたりします。

ガスはライザーと呼ばれる円筒を通って上昇した後、キャップに空いている切り欠き部(スロット)からトレイ上の液へと放出されます。

ライザーによって最低限の液深が確保されるため、ウィーピングしないのがメリットです。

その一方で、バブルキャップの構造が複雑で圧力損失が大きく、コストが高いのがデメリットです。

Valve Tray(バルブトレイ)

ガス穴の上に可動式のキャップやプレートを取り付けたトレイを総称してバルブトレイといいます。

ガス流速が小さいときは取り付けたキャップがガス穴を塞ぎ、液漏れ(ウィーピング)しないようになります。

ガス流速が大きいときはガスの圧力でキャップが上に持ち上がるため、ガス流路が広がり圧力損失を少なくできます。

キャップやプレートの形状は各社でそれぞれ違いがあり、様々なバルブトレイが上市されています。

Float Valve Tray(フロートバルブトレイ)

"蒸留工学ハンドブック"より引用

旧Nutter社(現Sulzer社)が開発したバルブトレイです。

名前の通りガスの流量・流速に応じて上下に作動する長方形のプレートが取り付けられています。

ガス流量が小さいときはまずプレートの軽い方がしだいに開き、流量が増加するにつれて重い方も持ち上がり、最後には完全にプレートが水平で全開の状態になります。

プレートの大きさや厚みは様々あり、汎用タイプ、低圧損タイプ、高粘度タイプと用途によって特徴があるようです。

Flexi Tray(フレキシトレイ)

"蒸留工学ハンドブック"より引用

Koch Engineering社(現Koch-Glitsch社)が開発したバルブトレイです。

可動式の円板状キャップが取り付けられています。

ガスが水平方向に噴き出すため、エントレしにくいというメリットがあります。

弊社では液量が少なく、かつ圧力損失をつけたくない系に採用されています。

ただしフレキシトレイに限った話ではありませんが、ユーザー側で設計することは難しく、トレイメーカーに依頼することが多いです。

Ballast Tray(バラストトレイ)

"蒸留工学ハンドブック"より引用

Glitsch社(現Koch-Glitsch社)が開発したバルブトレイです。

フレキシトレイと似たような可動式の円板状キャップが取り付けられています。
開発初期は上図のA型のようにプレートが2枚付いている型もありましたが、改良後は1枚になっているようです。

特徴もフレキシトレイと似ており、ガスが水平方向に噴き出すためエントレしにくいです。

Uniflux Tray(ユニフラックストレイ)

"新版 蒸留の理論と計算"より引用

S形の断面をしたボックスを複数並べてバルブの代わりとしています。

片側に切り欠き(スロット)が設けられていて、そこからガスがトレイ上の液中に放出されます。

"新版 蒸留の理論と計算"より引用

ガスの放出方向と液の流れる方向が同じなので、トレイ上の液勾配が小さくなるのが小さくなります。

また、部品数が少なく構造が簡単なため安価なのがメリットです。