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化学工学 蒸留 吸収・放散

【フラッディング(溢汪)】を解説:蒸留塔の運転上限

2020年12月23日

概要

充填塔の操作においてガス速度を速くし過ぎると、液が塔内を流下できなくなりガスによって持ち上げられてしまいます。
この結果、塔底から液が出てこなくなり塔頂から液が溢れ出します。

この状態をフラッディング(溢汪 いつおう)といい、フラッディングが始まる点をフラッディング点と呼びます。

"蒸留工学ハンドブック"より引用

上図は縦軸がHETP、横軸がガス流速Gのグラフです。

フラッディングは、ローディング点(D点)を超えてガス流速を増加させ、E点に達したときに起こります。
D点とE点のガス流速の差があまりないことから、理論上最も気液接触の効率が良いD点で操作することは少ないです。

運転上、少しガス流速が上振れるだけでフラッディングしてしまう危険がありますからね。

フラッディングが起こると塔の正常な運転が出来なくなりますので、塔の設計上及び運転上は、絶対に避けたいところです。

しかし、プラントの生産能力増強に伴い液ガス処理量が増えますので、フラッディングに近づきます。

既設の塔を改造せずに生産量を増やす場合は、フラッディングすれすれで運転することもあり、運転管理がシビアになってきます。

フラッディング速度の算出

フラッディング速度は相関図や相関式を使用して算出することが多いです。

Eckertの相関図

"化学工学便覧第7版"より引用

$$横軸:\frac{L}{G}(\frac{ρ_{G}}{ρ_{L}})^{\frac{1}{2}}$$

G:ガス流速[kg/m2/s]、L:液流速[kg/m2/s]
ρG:ガス密度[kg/m3]、ρL:液密度[kg/m3]

横軸の値を計算して、図の曲線から縦軸の値を読み取ります。
その値から、縦軸に含まれているフラッディング速度を算出します。

$$縦軸:\frac{G_{f}F_{p}}{ρ_{G}ρ_{L}g}(\frac{ρ_{W}}{ρ_{L}})(\frac{μ_{L}}{μ_{W}})^{0.2}$$

Gf:フラッディング速度[kg/m2/s]、g:重力加速度[m/s2]
ρG:ガス密度[kg/m3]、ρL:液密度[kg/m3]、μL:液粘度[Pa・s]
ρw:20℃における水の密度[kg/m3]、μw:20℃における水の粘度[Pa・s]
Fp:充填物因子[1/m]

充填物因子Fpはラシヒリングやポールリング等の汎用的な充填物であれば、値が化工便覧等に載っています。

Sawistowskiの実験式

フラッディング速度を算出するための実験式として、Sawistowskiの式が提案されています。

$${\rm{ln}}[\frac{G_{F}^{2}F_{p}}{ρ_{G}ρ_{L}}g(\frac{μ_{L}}{μ_{W}})^{0.2}]=-4[\frac{L}{G}(\frac{ρ_{G}}{ρ_{L}})^{0.5}]^{0.25}$$

GF:フラッディング速度[kg/m2/s]、G:ガス流速[kg/m2/s]
L:液流速[kg/m2/s]、g:重力加速度[m/s2]
ρG:ガス密度[kg/m3]、ρL:液密度[kg/m3]、μL:液粘度[Pa・s]
μw:20℃における水の粘度[Pa・s]、Fp:充填物因子[1/m]

Eckertの相関図を定式化した形となっています。
含まれるパラメータもほとんど同じですね。