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化学工学 集塵

【ミストエリミネーター】について解説:ミスト除去装置の構造・種類

2023年5月15日

概要

排ガス処理方法の中で主要なものの1つが湿式法で、吸収液で排ガス中の有害成分を除害します。

湿式法では吸収液の一部がミストとして排ガス中に含まれることが多く、このまま大気に放出されると有害成分の除去効率が低下します。

したがって、排ガス中からミストを除去する必要があり、このミスト除去装置をミストエリミネーターといいます。

ちなみに用途は排ガス処理に限らず、液とガスを接触させる装置にはミストエリミネーターを付けることが多いです。

構造・種類による分類

サイクロン式

ガスを旋回運動させて粒子に遠心力を作用されることにより、ガスから分離する装置です。

ダストの分離に使用されることが多いですが、ミスト分離にも使用できます。

  • 限界流速:25m/s程度
  • 限界捕集ミスト径:100μ程度
  • 圧力損失:200mmAq程度

ミストエリミネーターの中では限界捕集ミスト径が100μm程度と大きく、粗いミストを分離する場合に使用するのが望ましいです。

サイクロンの詳細は以下の記事で解説しています。

【遠心力集塵】について解説:サイクロンによる粒子捕集

含じんガスを旋回運動させて粒子に遠心力を作用させることで分離する機構を遠心力集塵といい、その代表的な装置をサイクロンといいます。重力よりも大きい加速度(数百~数千倍)を粒子に与えることができるため、重力集塵よりも小さい粒子を多く捕集することができます。

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折り板式

ガス流れに対して板を斜めに設置することで、ミストに働く慣性力により捕集します。

折り返しの回数が多いほど捕集効率が向上しますが、必要な設置スペースが増えます。

一般にベーンセパレーターとも言われます。

  • 限界流速:3~4m/s程度
  • 限界捕集ミスト径:30μm程度
  • 圧力損失:25mmAq程度

ミスト処理量が多くても処理できるのが特徴です。

一方で、ガス流速が速くなると捕集したミストが再飛散して捕集効率が落ちます。

衝突板式

折り板式にベーンブレードと呼ばれる分離室を設けて改良したものです。ベーンブレードの形状はメーカーによって様々です。

こちらもベーンセパレーターと呼ばれることがあります。

  • 限界流速:8~12m/s程度
  • 限界捕集ミスト径:10μm程度
  • 圧力損失:30mmA程度

流速が速くなっても分離室で液が保持されるため、ミストが再飛散しにくいのが特徴です。

ワイヤーメッシュ式

 

ワイヤーを網目状に編み合わせたものです。

網目(メッシュ)の細かさで性能がほぼ決定されます。

網目が細かいと捕集できるミスト径が小さくなりますが、圧力損失が大きくなるのがネックです。

  • 限界流速:2~3m/s程度
  • 限界捕集ミスト径:10μm程度
  • 圧力損失:15mmAq程度

捕集したミストが凝集しガス流速に抗って落下しうるミスト径になるまで液がホールドアップされる構造であるため、ガス流速は2~3m/sが限界です。

網目が特殊な高性能のワイヤーメッシュだと、ミスト径5μm程度まで十分に捕集できるもののあります。

ワイヤーメッシュの詳細は以下の記事で解説しています。

【ワイヤーメッシュ】について解説:メッシュ状シートによるミスト捕集

ミストエリミネーターの中でも主要な形式の1つがワイヤーメッシュです。細いワイヤーを編み込んでメッシュ状のシートとし、このシートを複数重ね合わせてミストの捕集効率を増加させています。ガスはワイヤーメッシュの網目を通過しますが、ミストは慣性力によりワイヤーに衝突することで捕集されます。

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繊維充填層式(ファイバーベッド)

ブラウン拡散によりミストを捕集させるため、ワイヤーメッシュよりも網目を細かく編み込んだものです。

繊維充填層が円筒状となっていることが多く、キャンドル型と呼ばれることもあります。

  • 限界流速:0.2m/s程度
  • 限界捕集ミスト径:3μm以下
  • 圧力損失:500mmAq以下

サブミクロン以下の非常に小さいミストを捕集することができます。

その一方で、通過ガス流速は他のミストエリミネーターよりも遅くする必要があり、圧力損失も比較的大きくなります。

まとめ

ミストエリミネーターについて解説しました。

それぞれの特徴を知っておけば、ミストエリミネーターの選定のときに役立ちます。