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【NRTL式】を解説:汎用的で使用頻度の高い活量係数モデル

2020年11月7日

概要

NRTL式とは活量係数を算出する手法の1つであり、Wilsonの式と同様に3成分以上の多成分系に適用できる式です。

Wilsonの式とは違い2液相分離する系にも適用できるため汎用性の高い手法です。
実務でもとりあえずNRTL式で気液平衡を算出しておけば大きく外すことはないと思います。

ただしシミュレータや文献等に活量係数のパラメータがあることをきちんと確認しましょう。

例えばAspen Plusでは気液平衡モデルをNRTLとしても、2成分のパラメータが入っていない化合物の組み合わせはラウール則(理想溶液)で計算されてしまいます。

$$lnγ_{1}=x_{2}^{2}\biggl(τ_{21}\biggl(\frac{G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}\biggr)^{2}+\frac{τ_{12}G_{12}}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}\biggr)・・・(1)$$

$$lnγ_{2}=x_{1}^{2}\biggl(τ_{12}\biggl(\frac{G_{12}}{x_{2}+x_{1}G_{12}}\biggr)^{2}+\frac{τ_{21}G_{21}}{(x_{1}+x_{2}G_{21})^{2}}\biggr)・・・(2)$$

$$G_{ij}=exp(-α_{ij}τ_{ij})$$

γ:活量係数、x:モル分率、τ:パラメータ
G:分子間のギブス自由エネルギー、α:パラメータ

NRTL式の2成分系の活量係数は(1)、(2)式で表されます。

Wilson式の場合はWilson定数Λのみを算出すればよかったですが、NRTL式ではτとαの2種類のパラメータを決定する必要があります。

例えばAspen Plusにおいてパラメータτとαは

$$τ_{ij}=a_{ij}+b_{ij}/T+e_{ij}lnT+f_{ij}$$

$$α_{ij}=c_{ij}+d_{ij}(T-273.15)$$

a,b,c,d,e,f:定数

上式で定義されており、各定数は実測値をフィッティングして決定します。

ただ、パラメータαに関しては経験的にとる値のパターンが知られています。

 
α=0.2飽和炭化水素+会合しない極性物質
α=0.3無極性物質の組み合わせ(ただしフッ化物とパラフィンは除く)
α=0.47自己会合性物質+無極性物質

αの例を上表に示します。私の経験的にはα=0.2もしくは0.3を使用することが多いです。
αをこのような値で固定することで他の定数のフィッティングが楽になることもあります。

NRTL式の導出

NRTL式もWilsonの式と同様に局所体積分率の考えをもとに立式しています。

第1成分分子の周りに第2成分分子を見出す確率x21

$$x_{21}=x_{2}exp(-\frac{α_{21}g_{21}}{RT})$$

x2:第2成分のモル分率、α21:パラメータ
g21:分子1-2間のギブス自由エネルギー、R:気体定数、T:温度

と表されます。

形はWilson式とほとんど同じで、Wilson定数λがα21g21に変わっただけです。
しかし、パラメータを変えた物理的意味については現在もよくわかっていないようです。いくつかの参考書を確認しましたが、著者の大学の先生ですら物理的意味は不明だ、と記されていることが多かったです。

同様に他の確率についても定義すると、

$$x_{11}=x_{1}exp(-\frac{α_{21}g_{11}}{RT})$$

$$x_{12}=x_{1}exp(-\frac{α_{12}g_{12}}{RT})$$

$$x_{22}=x_{2}exp(-\frac{α_{12}g_{22}}{RT})$$

となります。
続いて定義した確率xをもとにセル1中の1-2分子対の分率x21を表わすと、

$$\begin{align}x_{21}&=\frac{x_{2}x_{21}}{x_{1}x_{11}+x_{2}x_{21}}=\frac{x_{2}exp(-\frac{α_{21}g_{21}}{RT})}{x_{1}exp(-\frac{α_{21}g_{11}}{RT})+x_{2}exp(-\frac{α_{21}g_{21}}{RT})}\\&=\frac{x_{2}exp(-\frac{α_{21}(g_{21}-g_{11})}{RT})}{x_{1}+x_{2}exp(-\frac{α_{21}(g_{21}-g_{11})}{RT})}\end{align}$$

となります。
ここで、

$$τ_{21}=\frac{g_{21}-g_{11}}{RT}$$

$$G_{21}=exp(-α_{21}τ_{21})$$

とおくと

$$x_{21}=\frac{x_{2}G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}・・・(3)$$

(3)式となります。
同様にx12についても

$$τ_{12}=\frac{g_{12}-g_{22}}{RT}$$

$$G_{12}=exp(-α_{12}τ_{22})$$

とおくことで

$$x_{12}=\frac{x_{1}G_{12}}{x_{2}+x_{1}G_{12}}・・・(4)$$

(4)式が導けます。

また、

$$x_{11}+x_{21}=1$$

$$x_{22}+x_{12}=1$$

という関係も成り立ちます。

ここで、Scottの2液理論から

$$G^{1}=x_{21}g_{21}+x_{11}g_{11}$$

$$G^{2}=x_{12}g_{12}+x_{22}g_{22}$$

G1:セル1周りの混合物のギブス自由エネルギー
G2:セル2周りの混合物のギブス自由エネルギー

という式が成り立ちます。

純物質のギブス自由エネルギーは成分1の場合x21=0、x11=1なので

$$G^{1}=g_{11}$$

となります。
成分2も同様に

$$G^{2}=g_{22}$$

となります。

ここで過剰ギブス自由エネルギーgE

$$\begin{align}g^{E}&=x_{1}G^{1}+x_{2}G^{2}-x_{1}g_{11}-x_{2}g_{22}\\&
=x_{1}(x_{21}g_{21}+x_{11}g_{11})+x_{2}(x_{12}g_{12}+x_{22}g_{22})\\&
-x_{1}g_{11}-x_{2}g_{22}\\&
=x_{1}x_{21}g_{21}+x_{2}x_{12}g_{12}+x_{1}(1-x_{21})g_{11}\\&
+x_{2}(1-x_{12})g_{22}-x_{1}g_{11}-x_{2}g_{22}\\&
=x_{1}x_{21}(g_{21}-g_{11})+x_{2}x_{12}(g_{12}-g_{22})\end{align}$$

と整理できます。
両辺をRTで割り、(3)(4)式を代入すると

$$\begin{align}\frac{g^{E}}{RT}&=x_{1}x_{21}\frac{g_{21}-g_{11}}{RT}+x_{2}x_{12}\frac{g_{12}-g_{22}}{RT}\\&
=x_{1}x_{2}\biggl(\frac{τ_{21}G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}+\frac{τ_{12}G_{12}}{(x_{2}+x_{1}G_{12})}\biggr)\end{align}・・・(5)$$

(5)式が求まります。

ここで、Wilson式と同様に活量とギブス自由エネルギーの関係から

$$lnx_{1}+lnγ_{1}=\frac{g^{i}}{RT}+\frac{g^{E}}{RT}+(1-x_{i})[\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{i}}{RT}+\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{E}}{RT}]・・・(6)$$

gi:理想溶液のギブス自由エネルギー、gE:過剰ギブス自由エネルギー

(6)式をベースに活量係数を算出します。

これまでの過程でgE/RTの項はわかっていますので、残りの項を算出します。

Wilson式の導出と同様にgiについては

$$g^{i}=RT(x_{1}lnx_{1}+x_{2}lnx_{2})・・・(7)$$

(7)式が成り立ちます。

(7)式を両辺RTで割りx1について偏微分します。

$$\begin{align}\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{i}}{RT}&=lnx_{1}+1-ln(1-x_{1})-1\\&=lnx_{1}-ln(1-x_{1})・・・(8)\end{align}$$

残るはgE/RTの偏微分項です。(5)式をx1について偏微分すると、

$$\begin{align}\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{E}}{RT}&
=\frac{τ_{21}G_{21}(1-2x_{1})(x_{1}+x_{2}G_{21})-τ_{21}G_{21}(x_{1}-x_{1}^{2})(1-G_{21})}{(x_{1}+x_{2}G_{21})^{2}}\\&
+\frac{τ_{12}G_{12}(1-2x_{1})(x_{2}+x_{1}G_{12})-τ_{12}G_{12}(x_{1}-x_{1}^{2})(G_{12}-1)}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}・・・(9)\end{align}$$

(9)式となります。

これですべての項が求まりました。

最後に(5)、(7)、(8)、(9)式を(6)式に代入します。

$$\begin{align}lnx_{1}+lnγ_{1}&
=\frac{g^{i}}{RT}+\frac{g^{E}}{RT}+(1-x_{1})[\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{i}}{RT}+\frac{∂}{∂x_{1}}\frac{g^{E}}{RT}]\\&
=x_{1}lnx_{1}+x_{2}lnx_{2}+x_{1}x_{2}\biggl(\frac{τ_{21}G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}+\frac{τ_{12}G_{12}}{(x_{2}+x_{1}G_{12})}\biggr)\\&
+x_{2}\biggr(lnx_{1}-ln(1-x_{1})\\&
+\frac{τ_{21}G_{21}(1-2x_{1})(x_{1}+x_{2}G_{21})-τ_{21}G_{21}(x_{1}-x_{1}^{2})(1-G_{21})}{(x_{1}+x_{2}G_{21})^{2}}\\&
+\frac{τ_{12}G_{12}(1-2x_{1})(x_{2}+x_{1}G_{12})-τ_{12}G_{12}(x_{1}-x_{1}^{2})(G_{12}-1)}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}\biggr)\\&
=lnx_{1}+τ_{21}G_{21}x_{2}\biggr(\frac{x_{2}(x_{1}+x_{2}G_{21})-x_{1}x_{2}(1-G_{21})}{(x_{1}+x_{2}G_{21})^{2}}\biggr)\\&
+τ_{12}G_{12}x_{2}\biggr(\frac{x_{2}(x_{2}+x_{1}G_{12})-x_{1}x_{2}(G_{12}-1)}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}\biggr)\\&
=lnx_{1}+x_{2}^{2}\biggr(τ_{21}\biggr(\frac{G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}\biggr)^{2}+\frac{τ_{12}G_{12}}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}\biggr)\end{align}$$

整理すると、

$$lnγ_{1}
=x_{2}^{2}\biggr(τ_{21}\biggr(\frac{G_{21}}{x_{1}+x_{2}G_{21}}\biggr)^{2}+\frac{τ_{12}G_{12}}{(x_{2}+x_{1}G_{12})^{2}}\biggr)$$

となり(1)式が導出できました。
同様に第2成分についても式を立てると(2)式が導出できます。

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