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化学工学 吸着

【Langmuirの吸着等温式】を解説:単分子層吸着の等温式

2023年2月20日

概要

吸着剤表面に単分子として吸着すると仮定し導出された(1)式をLangmuirの吸着等温式といいます。

$$q=\frac{q_{∞}Kp}{1+Kp}・・・(1)$$

q:吸着量[kg/(kg-吸着剤)]、q:飽和吸着量[kg/(kg-吸着剤)]

p:平衡分圧[-]、K:吸着平衡定数[-]

Langmuirの吸着等温式は最も基礎的な等温式の1つであり、気相の吸着で系の圧力が低い場合に見られることが多いです。

本記事ではLangmuirの吸着等温式の導出等について解説します。

Langmuirの吸着等温式の導出

仮定

Langmuirの吸着等温式の導出にあたっては、いくつかの仮定を置いています。

  1. 吸着剤表面にはエネルギー的に均一な吸着サイトが存在する。
  2. 1つの気体分子が吸着サイトへ吸着されると、吸着は完了する。
  3. 吸着は可逆的で、脱離は吸着された分子の数に比例して発生する。
  4. 吸着した分子同士の相互作用はない。

特に2番目の仮定はLangmuirの吸着等温式が単分子層吸着と言われる所以となっています。

導出

気体分子が吸着しているサイトの割合をθとします。

まず吸着速度vaは、気体の分圧pと未吸着のサイトの割合1-θに比例すると考えると、

$$v_{a}=k_{a}p(1-θ)・・・(2)$$

(2)式のように表すことができます。

また脱着速度vdは、吸着サイトの割合θに比例すると考えると、

$$v_{d}=k_{d}θ・・・(3)$$

(3)式のように表すことができます。

 

吸着平衡においては吸着速度と脱着速度が等しいので、

$$k_{a}p(1-θ)=k_{d}θ$$

$$θ=\frac{(k_{a}/k_{d})p}{1+(k_{a}/k_{d})p}・・・(4)$$

(4)式となります。

ここで、吸着平衡定数Kを、

$$K=\frac{k_{a}}{k_{d}}・・・(5)$$

(5)式とします。

また、吸着量qは飽和吸着量qに吸着サイトの割合θをかけたものなので、

$$q=q_{∞}θ・・・(6)$$

(6)式となります。

(5)、(6)式を(4)式に代入し整理すると、

$$q=\frac{q_{∞}Kp}{1+Kp}・・・(1)$$

冒頭の(1)式が得られ、Langmuirの吸着等温式を導出できました。

Langmuirプロット

吸着平衡実験を行なった場合に、得られるデータは吸着量qとそのときの分圧pです。

これらのデータから(1)式のパラメータqとKを決定しますが、(1)式が非線形だとフィッティングしにくいです。

そこで、(1)式を変形し線形化した式をグラフにプロットすると、より簡単にパラメータを決定できます。これをLangmuirプロットといいます。

(1)式を両辺逆数を取ると、

$$\frac{1}{q}=\frac{1}{q_{∞}K}\frac{1}{p}+\frac{1}{q_{∞}}・・・(7)$$

(7)式あるいは

$$\frac{p}{q}=\frac{1}{q_{∞}K}+\frac{p}{q_{∞}}・・・(8)$$

(8)式となります。

(7)式では縦軸1/q、横軸1/p、(8)式では縦軸p/q、横軸pとしてプロットすればy=ax+bの形の線形の式になります。

計算例

例として、以下に示す条件下でLangmuirプロットをやってみましょう。

濃度p [g/m3]吸着量q [g/g]1/p1/qp/q
0.4510.3162.2173.1651.427
0.7930.3271.2613.0582.425
1.2400.3380.8062.9593.669
1.9100.3500.5242.8575.457
2.4100.3350.4152.9857.194
2.6600.3560.3762.8097.472
2.9900.3580.3342.7938.352

吸着平衡実験により、実験したときの分圧(もしくは濃度)pとそのときの吸着量qが得られます。

今回は(7)、(8)式両方プロットしてみますので、pとqから1/p、1/q、p/qをそれぞれ算出すると上の表の値になります。

それぞれLangmuirプロットすると、

(7)式のLangmuirプロット

(8)式のLangmuirプロット

上のグラフになります。

表計算ソフトで近似直線を引きましたが、(7)式はR2が0.7898と悪く、(8)式の方が良い相関が得られました。

(7)式から、

$$\frac{1}{q_{∞}K}=0.1769・・・(9)$$

$$\frac{1}{q_{∞}}=2.7966・・・(10)$$

(8)式から、

$$\frac{1}{q_{∞}K}=0.2338・・・(11)$$

$$\frac{1}{q_{∞}}=2.7589・・・(12)$$

が近似直線より得られます。それぞれqとKを求めると、

  • (7)式:q=0.358、K=15.808
  • (8)式:q=0.362、K=11.798

となり、式により多少の差異が生じます。線形プロットしたときのR2から考えると、(8)式の方が精度が良さそうです。

おわりに

Langmuirの吸着等温式について解説しました。

大学のテストや資格試験では、Langmuirプロットによる計算問題は出題されやすいため、ぜひ覚えておきましょう。