概要
移流輸送速度と拡散輸送速度の比をぺクレ数Peといい、(1)式で表されます。
$$Pe=\frac{uL}{D}=Re・Sc・・・(1)$$
u:代表速度[m/s]、L:代表長さ[m]、D:拡散係数[m2/s]
Re:レイノルズ数[-]、Sc:シュミット数[-]
また、伝熱の分野においても移流と拡散の比として(2)式で定義されます。
$$Pe=\frac{uL}{α}=Re・Pr・・・(2)$$
$$α=\frac{k}{ρc_{p}}=Re・Pr・・・(3)$$
u:代表速度[m/s]、L:代表長さ[m]、α:熱拡散率[m2/s]
k:熱伝導度[W/(m・K)]、ρ:密度[kg/m3]、cp:比熱[J/(kg・K)]
Re:レイノルズ数[-]、Pr:プラントル数[-]
反応器流れにおけるぺクレ数
理想的な反応器モデルとして、CSTR(完全混合)とPFR(押し出し流れ)があります。
現実の反応器はCSTRとPFRの間に位置しますが、どちらに近いかをぺクレ数で判断できます。
$$Pe=\frac{uL}{D_{z}}・・・(4)$$
u:空塔速度[m/s]、L:流路長さ[m]、Dz:混合拡散係数[m2/s]
混合拡散係数Dzをトレーサー応答等で実験的に求めることで、その反応器の流れの特性を把握することができます。
(4)式で計算されるぺクレ数が、無限大になるとCSTR、ゼロになるとPFRとなります。
閾値は系に依存するので一般的にはあまり定義されていません。
拡散捕集におけるぺクレ数
粒子の拡散捕集において、ぺクレ数は重要な指標となります。
ぺクレ数の定義
$$Pe=\frac{ud_{f}}{D}・・・(5)$$
$$D=\frac{k_{B}TC_{c}}{3πμd_{p}}・・・(6)$$
u:面速度[m/s]、df:繊維径[m]、D:粒子の拡散係数[m2/s]
kB:ボルツマン定数[m2kg/(s2K)]、T:絶対温度[K]、Cc:カニンガムの補正係数[-]
μ:粘度[Pa・s]、dp:粒子径[m]
(5)式は粒子の対流と拡散の輸送速度の比を意味しています。
ぺクレ数が大きくなると粒子は流体の流れと同じ動きをします。
ぺクレ数が小さくなるとブラウン拡散の影響が大きくなり粒子は不規則な動きをするようになります。
拡散捕集機構
フィルターで気流中の粒子を除去する場合を考えます。
(5)、(6)式から粒子径dpが小さいほど粒子の拡散係数Dが大きくなり、ぺクレ数Peは小さくなります。
目安として、粒子径が0.1μmより小さくなると、粒子の拡散係数は1.0×10-10m2/sより大きくなることが多いです。
このときのぺクレ数Peは100~1,000程度となり、このくらいの値以下でブラウン拡散の影響が無視できなくなります。
上図で示すように、粒子はランダムに動くようになり、繊維に衝突して捕集されます。
拡散捕集機構の捕集効率はぺクレ数Peの関数となっていることが多く、十分な捕集効率を得るためにはPe<1が望ましいです。
ぺクレ数をなるべく小さくするために、気流速度uや繊維径dfを小さくする等の対策が考えられます。
まとめ
ぺクレ数について解説しました。
移流と拡散のどちらが支配的かで設計思想や計算手法が変化する場合は、特にぺクレ数が重要になることがあります。