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化学工学 蒸留

【充填塔】のメリット・デメリットを解説:圧力損失が小さく真空蒸留向き

2021年1月11日

概要

液の濡れ面積が大きくなるよう設計された充填物を塔内に詰めて、気液接触させる装置のことを充填塔といいます。

もともとはガス吸収向けの装置として使用されていましたが、充填物の改良に伴い最近では蒸留塔としてもよく使用されます。

"蒸留技術基礎のきそ"より引用

上図に示すように充填塔内には大量の充填物が詰められています。

充填物が詰められているエリアを充填層といい、層の高さを充填高さといいます。
充填高さが長いほど気液接触するエリアが広いため、充填塔の性能は向上します。

また上図のように上から液を、下からガスを吹込み気液接触させますが、フィードの仕方も大事です。

雑にフィードすると、気体と液体が充填層を流れるときに偏りが生じ、充填塔の性能が悪化します。

特に液体に関しては、液分散器(ディストリビュータ)と呼ばれる装置で充填層になるべく均一にいきわたるよう液を散布します。
花壇に水をあげるときに、ジョウロで細かくシャワー状にして水を降らせるのと同じ理屈です。

また、充填物の種類は大きく2種類に分けられます。

不規則充填物・・・小型の充填物をランダムに充填するタイプ
規則充填物 ・・・シート状のものを積層して規則的に充填するタイプ

どちらのタイプも一長一短あるため、系によって使い分けます。

傾向として、不規則充填物は安価なので、排ガス処理設備等のあまりお金をかけたくないところに使用されることが多いです。

規則充填物は不規則充填物よりも高価であることが多く、メインの蒸留設備によく使用されます。

充填塔の特徴

同じ用途で使用される棚段塔と比較して、メリット・デメリットを紹介します。

充填塔のメリット

・空隙率が大きく、圧力損失が小さい
 蒸留では、減圧して真空下で運転することがあります。その際に塔の圧力損失が小さいと、特に有利に働きます。

・材質を容易に変更でき、腐食物質に対応しやすい
 同じ形状の充填物でも、金属、プラスチック、セラミックス、カーボン等様々な材質で作ることができます。

・発泡しにくい
 棚段塔で発砲が問題になる場合は、充填塔に変えてみるのがオススメです。

・塔径が小さい場合は安い
 塔径が大きくなるにつれて、棚段塔の方がコスト面で有利になります。

充填塔のデメリット

・充填物によっては、運転範囲が狭い
 不規則充填物で古いタイプのものは操作範囲が限定されることがあります。

・液が偏流しやすい
 特に不規則充填物は偏流しやすいです。
 塔径が大きくなるほど、液を均一に分配させることが難しくなります。

・汚れ(スケーリング)に弱い

・充填物によって異なるが、たいてい棚段より重くなる