化学工学用語集 物性

【エントロピー】を解説:熱力学の第二法則で定義

2020年11月11日

概要

熱量Q、温度Tを使用して

$$ΔS=\frac{ΔQ}{T}・・・(1)$$

(1)式で定義される状態量Sのことをエントロピーといいます。
統計力学的には系の乱雑さを意味し、エントロピーは増大する方向へ変化していきます。これは熱力学第二法則として知られています。

化学工学専攻の人にとってエンタルピーはまだ熱収支計算で馴染みがあるのですが、エントロピーはさらに抽象的な概念となっているのでよくわからない人も多いのではないでしょうか。

私の経験上、実務においてエントロピーの値を計算したり、議論の対象になることはほとんどありません。

ではエントロピーはどこで出てくるのかというと、混合物の物性を計算する式がエントロピーの概念を利用して導出されています。

したがって実務で直接エントロピーを算出することはないけれども、物性計算を正しく理解するためにはエントロピーを理解する必要があります。

混合物のエントロピー

2成分の気体が混合する場合を考え、混合後のエントロピーΔSmixを導出してみます。

熱力学の第一法則から

$$Q=U+PV$$

$$dQ=dU+VdP+PdV・・・(2)$$

という式が成り立ちます。

ここで定圧条件下で混合する場合を考えます。定圧なのでdP=0となります。
また、外部との熱のやり取りがないようにゆっくり混合させるとdU=0となります。
(2)式をこれらの関係で整理すると、

$$dQ=PdV・・・(3)$$

(3)式となります。(3)式を概要の(1)式に代入すると、

$$dS=\frac{PdV}{T}・・・(4)$$

(4)式となります。

ここで理想気体の状態方程式PV=nRTを代入すると、

$$dS=\frac{nRdV}{V}・・・(5)$$

(5)式となります。
(5)式を成分1,2それぞれについて積分します。
まず成分1について、混合前の体積V1から混合後の体積V1+V2まで積分すると、

$$\begin{align}ΔS_{1}&=\int_{V_{1}}^{V_{1}+V_{2}}\frac{n_{1}RdV}{V}\\&
=n_{1}Rln\frac{V_{1}+V_{2}}{V_{1}}\\&
=-n_{1}Rln\frac{V_{1}}{V_{1}+V_{2}}\\&
=-n_{1}Rln\frac{n_{1}}{n_{1}+n_{2}}\\&
=-n_{1}Rlnx_{1}\end{align}$$

となります。
同様に(5)式を成分2について積分すると、

$$ΔS_{2}=-n_{2}Rlnx_{2}$$

となります。
したがって2成分を混合した後のエントロピーΔSmix

$$ΔS_{mix}=ΔS_{1}+ΔS_{2}=-R(n_{1}lnx_{1}+n_{2}lnx_{2})・・・(6)$$

n1:成分1のモル量、n2:成分2のモル量、R:気体定数
x1:成分1のモル分率、x2:成分2のモル分率

(6)式で表されます。
n1、n2、R、x1、x2は必ず正の値となり、lnx1、lnx2は必ず負の値となることから、ΔSmixは必ず正の値となります。

なので物質の混合とは自然に起こる現象であることがわかります。
逆に2成分を1成分へと分離しようと思うとエネルギーを加える必要があります。

混合物の物性推算ではこの(6)式を使用して導出された式がいくつかあるので覚えておいて損はないです。

ギブス自由エネルギーへの拡張

化学プラントではエントロピーが自然に増大するままに任せていては製品は作れませんよね。
熱をかけたり圧力をかけたりして私たちの望む方向へ変化させているわけです。

概要で紹介した(1)式はあくまでも外部と熱やエネルギーのやり取りがない系について成り立つものです。
外部からエネルギーを加えた場合にどうなるかは熱力学の第二法則だけではわかりません。特に化学反応に関しては分子の数が増える反応もあれば減る反応もあるので複雑ですよね。

そこでエネルギーの影響も加味して系がどの方向へ移動するかを表わす指標が登場しました。
それが自由エネルギーです。

自由エネルギーにはギブス自由エネルギーとヘルムホルツ自由エネルギーがありますが、本ブログでは化学工学で主に使用されるギブス自由エネルギーについて別記事で解説する予定です。

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