概要
動力数Npとは撹拌にかかる動力を無次元化した指標です。
$$Np=\frac{P}{ρn^{3}d^{5}}$$
動力数Np[-]は上式で表されます。
 P:動力[W]、ρ:密度[kg/m3]、n:回転数[1/s]、d:翼直径[m]
実務でNpを算出する目的は、新たに設計する撹拌槽の動力Pを計算するためです。
 
 撹拌Reの説明でも述べましたが、実機サイズの撹拌槽は乱流条件で設計するのが好ましく、実際に乱流となっていることが多いです。
 
 バッフル有りの乱流条件下であればNp=一定と考えてよいため、
$$Np_{1}=Np_{2}$$
$$Np_{1}=\frac{P_{2}}{ρ_{2}n_{2}^{3}d_{2}^{5}}$$
新設する撹拌槽がスケールアップだとすると、添え字の1はスケールアップ前、添え字の2はスケールアップ後を意味します。
 
 求めたいのはP2なので式を変形すると、
$$P_{2}=ρ_{2}n_{2}^{3}d_{2}^{5}Np_{1}$$
となります。
 ρ2、d2は既知なので、残るは回転数n2と動力数Np1です。
 
 n2はPv一定のスケールアップであれば一意に決まります。
 この記事では導出については省略しますが、
$$n_{2}=n_{1}(\frac{d_{2}}{d_{1}})^{-\frac{2}{3}}$$
となります。
 Pv一定でなければ撹拌槽メーカーと相談して決めるのがよいと思います。
 
 残るはNp1ですがスケールアップ前の装置があり、動力が測定できるのであればその値を使用してNp1を計算することをオススメします。
 実測値に勝るデータはありませんからね!
 
 実測値が無い場合には
 ・文献などで提唱されているNpの推算式を使用する
 ・流動解析を使用してトルクから動力及びNpを求める
 というような方法があります。
 
 Npの推算式を使用するのは簡便ではありますが、撹拌槽・翼の寸法が推算式の適用範囲に入っているかどうか注意する必要があります。
 
 また、推算式は1段の小型翼(パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ファウドラー翼など)に関しては研究が進められており適用範囲が広いですが、多段翼やメーカー特有の撹拌翼に関してはそもそも適用できる推算式がないことも多いです。
 
 流動解析に関しては
 ・解析値が良い精度であることを確認する必要がある
 ・解析に時間がかかる
 というような点がデメリットですが、推算式と比較して複雑な形状や流れでも動力を算出できることはメリットです。
Npの推算式
気が向けば追記します。