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化学工学 吸収・放散

【吸収塔】充填塔型吸収塔の塔高計算を解説

2020年12月11日

概要

吸収塔でよく使用される充填塔の塔高計算について紹介します。

上図のような充填塔の物質収支を考えます。

まず微小区間dzでの有効な気液界面積は、

$$aAdz$$

a:充填物の気液界面積[m2/m3]、A:塔の断面積[m2]

となります。

次に微小区間dzにおいて物質収支を取ります。

$$G_{B}(y_{A}+dy_{A})=G_{T}y_{A}+N_{A}aAdz・・・(1)$$

$$L_{B}(x_{A}+dx_{A})=L_{T}x_{A}+N_{A}aAdz・・・(2)$$

GB:塔底から流入するガス流量[mol/s]、GT:塔頂から流出するガス流量[mol/s]
LB:塔底から流出する液流量[mol/s]、LT:塔頂から流入する液流量[mol/s]
NA:モル流束[mol/m2/s]
yA:A成分のガスモル分率[-]、xA:A成分の液モル分率[-]

(1)式が気相の物質収支、(2)式が液相の物質収支です。

ここで、微小区間におけるガスの吸収量が微量であるとすると、液ガス全体の流量はほとんど変わりませんから、

$$G_{T}≒G_{B}≒G$$

$$L_{T}≒L_{B}≒L$$

上の2式が成り立ちます。
これらを利用して(1)、(2)式を書き換え、(3)、(4)式となります。

$$G(y_{A}+dy_{A})=Gy_{A}+N_{A}aAdz・・・(3)$$

$$L(x_{A}+dx_{A})=Lx_{A}+N_{A}aAdz・・・(4)$$

(3)、(4)式を変形すると、

$$Gdy_{A}=Ldx_{A}=N_{A}aAdz・・・(5)$$

(5)式となります。

ここで、モル流束NA二重境膜説で導出した式を使用します。

$$N_{A}=K_{G}(P_{A}-P_{A}^{*})=K_{y}(y_{A}-y_{A}^{*})\\
=K_{L}(C_{A}^{*}-C_{A})=K_{x}(x_{A}^{*}-x_{A})・・・(6)$$

KG:ガス境膜基準の総括物質移動係数[mol/m2/s/Pa]
Ky:ガス境膜基準の総括物質移動係数[mol/m2/s]
KL:液境膜基準の総括物質移動係数[mol/m2/s/Pa]
Kx:液境膜基準の総括物質移動係数[mol/m2/s]

(6)式に4通りの式が含まれているため、充填高さZも4通りの式で表すことができます。
ここでは例として、

$$N_{A}=K_{y}(y_{A}-y_{A}^{*})$$

を使用して導出します。この式を(5)式に代入して、

$$Gdy_{A}=K_{y}(y_{A}-y_{A}^{*})aAdz$$

$$dz=\frac{Gdy_{A}}{K_{y}(y_{A}-y_{A}^{*})aA}・・・(7)$$

(7)式となります。
(7)式をz=0~Z、yA=yAT~yABにわたって積分し、充填高さZを求めます。

$$Z=\frac{G}{K_{y}aA}\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{A}^{*})}・・・(8)$$

(8)式の項について、積分の前の係数を移動単位高さ(HTU)といいます。
また、積分値は移動単位数(NTU)といいます。

HTUとNTUについては、(6)式でどのモル流束式を使って導出したかで呼び方が変わります。
今回用いた式の場合は、気相基準の総括HTU(HOG)、気相基準の総括NTU(NOG)と呼ばれます。

$$\frac{G}{K_{y}aA}=H_{OG}$$

$$\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{A}^{*})}=N_{OG}$$

HOG:気相基準の総括HTU[m]、NOG:気相基準の総括NTU[-]

(8)式は最終的に、

$$z=H_{OG}N_{OG}・・・(9)$$

(9)式のように表されます。

他3つのモル流束についても同様の手順で導出することができます。
導出後の式をまとめると、

$$Z=\frac{G}{K_{y}aA}\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{A}^{*})}
=\frac{G}{k_{y}aA}\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{Ai})}\\
=\frac{L}{K_{x}aA}\int_{x_{AT}}^{x_{AB}}\frac{dx_{A}}{(x_{A}^{*}-x_{A})}
=\frac{L}{k_{x}aA}\int_{x_{AT}}^{x_{AB}}\frac{dx_{A}}{(x_{Ai}-x_{A})}・・・(10)$$

$$z=H_{OG}N_{OG}=H_{G}N_{G}=H_{OL}N_{OL}=H_{L}N_{L}・・・(11)$$

HOG:気相基準の総括HTU[m]、NOG:気相基準の総括NTU[-]
HG:気相HTU[m]、NG:気相NTU[-]
HOL:液相基準の総括HTU[m]、NOL:液相基準の総括NTU[-]
HL:液相HTU[m]、NL:液相NTU[-]

となります。

一般に、HOG、HOLに関しては実験から求まる値で、設計したい条件で実験するのが最も精度が高くなります。
実験できない場合には文献値を調べます。排ガス成分としてよくある化合物は文献値があることが多いです。

また、NOG、NOLの値は塔の操作条件とHenry定数から算出することができます。
そのうち記事にします。