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化学工学 伝熱

【熱交換器】を目的や構造ごとに解説:プラントの重要な伝熱装置

2021年3月13日

概要

温度の異なる流体を流し、熱交換させる装置のことを熱交換器といいます。

化学プラントではそれぞれの工程や装置ごとに様々な温度で運転しているため、所定の温度まで加熱、あるいは冷却する装置が必須です。
したがって、熱交換器は化学プラントにおいて最もよく使用されている装置の1つです。

装置の大きさや種類も様々なものが存在し、プロセスに適したものが設計・選定されます。
ただ、熱交換器のどこまでの仕様を誰が設計するのか、という点については会社によって異なると思います。

弊社では物性から伝熱計算までは社内で設計し、その後の機械的な構造についてはベンダーに依頼することが多いです。

熱交換器の分類

熱交換器には様々な種類と分類方法があります。
ここでは使用目的と構造による分類について紹介します。

使用目的による分類

全く同じ構造の熱交換器であっても、使用目的によって呼び名が変わります。
ここでは代表的な例を示します。

Heater(加熱器)

メインの流体を加熱する目的で使用される熱交換器をHeaterといいます。
一般的にヒーターという言葉はよく使われるのでイメージしやすいかと思います。

反応器や蒸留塔の前段に設置して予熱する目的で使用されることが多く、予熱器と呼ばれることもあります。

Evaporator(蒸発器)

メインの流体を蒸発させる目的で使用される熱交換器をEvaporator、もしくはVaporizerといいます。
メインの流体を加熱させる点ではHeaterと同じですが、こちらは流体を蒸発させるまで加熱します。

Reboiler(再沸器)

主に蒸留塔の塔底に設置されており、塔底から流出する液を加熱して蒸発させ、ガスとして塔内に戻す装置をReboilerといいます。

蒸留塔の内部は液とガスが入り混じっている状態で、塔底に集まった液を再び沸騰させてガスに戻すことから再沸器と呼ばれています。

Cooler(冷却器)

メインの流体を冷却させる目的で使用される熱交換器をCoolerといいます。
クーラーも一般的によく使われる言葉なのでイメージしやすいと思います。

Condenser(凝縮器)

メインの流体を冷却して凝縮させる熱交換器をCondenserといいます。

電子部品のコンデンサと間違わないようにしましょう。あちらの英語名はCapacitor(キャパシタ)です。

こちらは"condense(凝縮する、凝縮させる)"装置でCondenserです。

蒸留塔の塔頂から流出するガスを凝縮させるために設置されることが多いです。

構造による分類

実務上で重要なのは構造による分類です。
構造が異なれば使用する伝熱計算式も異なるため、それぞれの熱交換器の特徴を把握しておくことは重要です。

多管式熱交換器(Shell & Tube)

"熱交換器設計ハンドブック"より引用

化学プラントで最もよく使用されている熱交換器です。

名前の通り、複数の伝熱管(チューブ)を束ねたものを円筒胴(シェル)の中に入れた形式となっており、Shell & Tubeと呼ばれることもあります。
伝熱管を束ねる円板を管板といい、管板とシェルとの取り合い構造によりさらに細かく分類されます。

伝熱としては、シェル側とチューブ側に別々の流体を流し、熱交換させます。中で仕切られているため、正常な状態ではそれぞれの流体は混ざらないような構造となっています。

設計手法が確立されており、ユーザー側としては信頼感のある熱交換器です。
様々な流体や操作条件に対応できるため、多管式熱交換器で設計上特に問題なければこの形式になることが多いです。

二重管式熱交換器

"熱交換器設計ハンドブック"より引用

内円筒と外円筒に別々の流体を流し、熱交換させる形式となっています。多管式熱交換器の伝熱管が太い1本になったようなタイプです。

伝熱面積を稼ぐために、内円筒を折り返して鉛直方向に積み上げます。

構造が簡単であるため、内円筒と外円筒の両方をクリーニングすることができます。
そのため、汚れやすい系に向いています。

一方で伝熱面積はそれほど稼げませんから、大流量を処理するのには不向きです。

渦巻板式熱交換器

"熱交換器設計ハンドブック"より引用

2枚の平行版を渦巻状に巻いて2つの流路を構成した熱交換器です。スパイラル式熱交換器と呼ばれることもあります。

"熱交換器設計ハンドブック"より引用

流路が曲がっていることにより汚れが生じにくく、総括伝熱係数が多管式熱交換器よりも大きくなるのが特徴です。
なおかつ装置サイズがコンパクトなのもメリットです。

デメリットは、流路の両端をパッキンでシールするタイプの場合、渦巻板の伸縮によりガスケットのシール性が悪くなり、2流体が混ざり合う可能性があることです。

この現象を防ぐために両端を溶接してシールするタイプもありますが、そうすると流路内を機械的に掃除することができなくなるため、汚れが生じやすい系には使用しづらくなります。

平板式熱交換器

"熱交換器設計ハンドブック"より引用

多数の溝が彫ってある平板(プレート)を重ねてガスケットを介して締め付けて固定し、各平板間に2流体を交互に流して熱交換させます。プレート式熱交換器と呼ばれることもあります。

この熱交換器も多管式熱交換器より総括伝熱係数が大きくなるメリットがあります。

また、分解が可能で保守点検が容易な点や、プレートの枚数を増減させることで伝熱面積を調整することができます。
流体の流量増加にもある程度対応しやすい点が良いです。

デメリットはガスケットはゴム製のものを使うことが多く、高温・高圧系には使用し難い点です。
ガスケットの消耗で液漏れした、という話もたまに聞きます。