概要
一定温度における平衡吸着量と圧力(または濃度)の関係を吸着等温線といいます。
工業プロセスにおける吸着装置は等温下で運転させることが多く、吸着等温線の傾向を把握することは重要です。
本記事では、吸着等温線の分類について解説します。
吸着等温線の分類
一般に、平衡吸着量は吸着質の圧力(濃度)が高くなるほど増加しますが、その増加傾向は吸着材・吸着質の種類によって様々です。
ここでは、IUPAC(国際純正・応用化学連合)による吸着等温線の6種類の分類を紹介します。
Ⅰ型
吸着剤の表面が平坦とみなされる場合はⅠ型に適合します。
Ⅰ型の吸着は一般に圧力が低い場合に見られ、圧力が増加すると吸着量は上図にように一定値に収束します。
このような型は、Langmuirが提唱した単分子吸着理論で得られる吸着等温式と一致するため、Langmuir型とも呼ばれます。
また、ミクロ孔やウルトラミクロ孔を持つ吸着剤への吸着もこのⅠ型に分類されます。
Ⅱ型
Ⅱ型の吸着等温線の傾向を上図に示します。
圧力が高くなると、一旦は飽和に近い吸着量を示しますが、さらに圧力が上がると吸着量が急激に増加するような等温線となっています。
このような傾向を示す場合、固体表面に多分子層として吸着していると考えられます。
最初の飽和傾向は単分子吸着が飽和に近づくため発生しますが、さらなる圧力上昇により多分子吸着が発生することで吸着量が増加します。
このような多分子吸着の理論はBrunauer、Emmett、Tellerらが提唱しており、頭文字を取りBET型とも呼ばれています。
Ⅲ型
Ⅲ型の吸着等温線の傾向を上図に示します。
圧力が高くなるにつれて吸着量がどんどん増加する傾向となっています。
水溶液から固体への吸着など、吸着剤表面と吸着質の相互作用が弱い場合に見られます。
また、Ⅲ型の吸着等温線は、Freundlichの吸着等温式で表わすことができます。
Ⅳ型
Ⅳ型の吸着等温線の傾向を上図に示します。
Ⅳ型では、吸着時と脱着時の等温線が一致しないことがあります。これをヒステリシス(履歴現象)といいます。
ヒステリシスが起こる理由として、2~50nm程度のメソ孔を持ち、穴の入口と孔の中で凝縮時の圧力が異なるためだと言われています。
Ⅴ型
Ⅴ型の吸着等温線の傾向を上図に示します。
Ⅴ型はFreundlichの吸着等温式の傾向を持ちつつ、メソ孔を有しヒステリシスが確認されるため、Ⅲ型とⅣ型の特徴を併せ持つ吸着等温線となります。
Ⅵ型
Ⅵ型の吸着等温線の傾向を上図に示します。
第一層の吸着が完了した後に第二層の吸着が生じるため、階段状の吸着等温線となります。
これは細孔を持たず表面が均一な吸着質への多分子層吸着で見られます。
おわりに
吸着等温線について解説しました。
吸着分野における基礎的な知識ですので、ぜひとも覚えておきましょう。