概要
分子の幾何学中心が球形からどのくらいずれているかを表わすパラメータを偏心因子といいます。
$$ω=-{\rm{log}}_{10}(\frac{P}{P_{c}})_{at T_{r}=0.7}-1.0・・・(1)$$
ω:偏心因子、P:Tr=0.7における蒸気圧、Pc:Tr=0.7における臨界圧力
Tr:対臨界圧力
偏心因子ωは(1)式で定義されます。
希ガスであるネオンやアルゴンは球形原子であるため、ω≒0となります。
極性が大きいほど偏心因子ωも大きくなるため、物性推算式に極性の影響を組み込む場合によく使用されます。
偏心因子の推算法
偏心因子ωは(1)式から、蒸気圧と臨界圧力さえわかれば求められますが、蒸気圧データがない場合は沸点、臨界温度を利用した以下の式で推算することもできます。
Clapeyronの式
$$ω=\frac{3}{7}\frac{θ}{1-θ}{\rm{log}}P_{c}-1$$
$$θ=\frac{T_{b}}{T_{c}}$$
Pc:臨界圧力[atm]、Tb:標準沸点[K]、Tc:臨界圧力[K]
試しにプロパンの偏心因子を求めてみます。
$$θ=\frac{231.1}{369.8}=0.625$$
臨界圧力Pc=41.9atmを使用して、
$$ω=\frac{3}{7}\frac{0.625}{1-0.625}{\rm{log}}(41.9)-1=0.159$$
となりました。
物性データベースによるとω=0.152ですので近い値となっています。
Lee-Keslerの式
$$ω=\frac{-{\rm{ln}}P_{c}-5.92714+6.09648θ^{-1}+1.28862{\rm{ln}}θ-0.169347θ^{6}}{15.2518-15.6875θ^{-1}-13.4721{\rm{ln}}θ+0.43577θ^{6}}$$
$$θ=\frac{T_{b}}{T_{c}}$$
同様にプロパンの偏心因子を求めてみます。
θ=0.625、臨界圧力Pc=41.9atmを代入して、
$$ω=0.150$$
となりました。
物性データベースによるとω=0.152ですので、こちらの推算式も近い値となっています。