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エネルギー管理士 資格

【課目Ⅰ:エネルギー総合管理及び法規】エネルギー管理士(熱分野)の出題分野を解説

2022年6月6日

概要

この記事ではエネルギー管理士(熱分野)の出題分野である、エネルギー総合管理及び法規について解説します。

エネルギー相互管理及び法規の分野は熱分野・電気分野の共通課目になっており、どちらの課目を受験する場合でも勉強する必要があります。

法律に関する内容、エネルギー情勢、熱分野・電気分野の基礎的な知識が幅広く問われる課目となっています。

出題分野

この課目は、大きく3つの大問に分かれており、60%以上正答することができれば合格です。

  • エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令:配点50点
  • エネルギー情勢・政策、エネルギー概論:配点50点
  • エネルギー管理技術の基礎:配点100点

試験時間は80分で、比較的楽な試験だと思います。

問題の出題形式は大きく2つに分かれます。

  • 選択肢から正解を選ぶ形式
  • 計算して数値を回答する形式

選択肢から正解を選ぶ問題は勘で当たる可能性もありますが、数値で答える問題はちゃんと計算方法を知っておかなければ正解することは難しいでしょう。

しかし、私はあえて計算問題をきちんと勉強することをオススメします。

計算問題は計算の手法をいったん覚えてしまえば忘れにくいですし、出題頻度が高いものが多いので勉強の効率が良いです。

 

以下の記事では、各大問で過去に出題頻度が比較的高かった内容をピックアップして紹介します。

エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令

大問1で"エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令"に関する内容が問われます。

あまり馴染みのない法律に関する内容が問われるため、個人的には大問3つの中で最も難しいと思っています。

そのため、取りやすい問題を確実に取っていくことが重要です。

法令の規定文・条文の穴埋め

大問1の一番最初の問題は、たいていエネルギー使用の合理化等に関する法律の規定文・条文の穴埋め問題となっていますが、いきなり難易度が高いです。

選択肢の中から正解の文言を選ぶ形式ですが、似たような文言がたくさん並んでいるので覚えていないと正解するのは難しいです。

その一方で、規定文・条文の出題範囲が広く、全てをカバーするのはかなりの時間を要します。

個人的には捨ててもよい問題かなと思いますが、最低限過去に出題頻度が高かった項目くらいは勉強しておきましょう。

『法』第1条

第1条の条文の穴埋めは出題頻度が高いです。

 この法律は、内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化などを総合的に進めるために必要な措置等を講ずることとし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=354AC0000000049

下線を引いているところが過去に穴埋めになったことがあります。

穴埋め箇所は被ることが少なそうなので、別の箇所のキーワードをチェックしておくと良いかもしれません。

『法』第3条

同様に第3条の条文の穴埋めも出題頻度が高いです。

 経済産業大臣は、工場又は事務所その他の事業場(以下「工場等」という。)、輸送、建築物、機械器具等に係るエネルギーの使用の合理化及び電気の需要の平準化を総合的に進める見地から、エネルギーの使用の合理化等に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定め、これを公表しなければならない。

2 基本方針は、エネルギーの使用の合理化の為にエネルギーを使用する者等が講ずべき措置に関する基本的な事項、電気の需要の平準化を図るために電気を使用する者等が講ずべき措置に関する基本的な事項、エネルギーの使用の合理化に関する事項について、エネルギー需要の長期見通し、電気その他のエネルギー需要を取り巻く環境、エネルギーの使用の合理化に関する技術水準その他の事情を勘定して定めるものとする。

 

3 経済産業大臣が基本方針を定めるには、閣議の決定を経なければならない。

4 経済産業大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、輸送に係る部分、建築物に係る部分(建築材料の品質の向上及び表示に係る部分並びに建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止の用に供される建築材料の熱の損失の防止のための性能の向上及び表示に係る部分を除く。)及び自動車の性能に係る部分については国土交通大臣に協議しなければならない。

5 経済産業大臣は、第二項の事情の変動のため必要があるときは、基本方針を改定するものとする。

6 第一項から第四項までの規定は、前項の規定による基本方針の改定に準用する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=354AC0000000049

基本方針、というキーワードは最低限覚えておきましょう。

『法』第5条

同様に第5条の条文の穴埋めも出題頻度が高いです。

 経済産業大臣は、工場等におけるエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため、次に掲げる事項並びにエネルギーの使用の合理化の目標及び当該目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関し、工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。

一 工場等であつて専ら事務所その他これに類する用途に供するものにおけるエネルギーの使用の方法の改善、第百四十五条第一項に規定するエネルギー消費性能等が優れている機械器具の選択その他エネルギーの使用の合理化に関する事項

二 工場等(前号に該当するものを除く。)におけるエネルギーの使用の合理化に関する事項であつて次に掲げるもの

イ 燃料の燃焼の合理化
ロ 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
ハ 廃熱の回収利用
ニ 熱の動力等への変換の合理化
ホ 放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止
ヘ 電気の動力、熱等への変換の合理化

2 経済産業大臣は、工場等において電気を使用して事業を行う者による電気の需要の平準化に資する措置の適切かつ有効な実施を図るため、次に掲げる事項その他当該者が取り組むべき措置に関する指針を定め、これを公表するものとする。

一 電気需要平準化時間帯(電気の需給の状況に照らし電気の需要の平準化を推進する必要があると認められる時間帯として経済産業大臣が指定する時間帯をいう。以下同じ。)における電気の使用から燃料又は熱の使用への転換

二 電気需要平準化時間帯から電気需要平準化時間帯以外の時間帯への電気を消費する機械器具を使用する時間の変更

3 第一項に規定する判断の基準となるべき事項及び前項に規定する指針は、エネルギー需給の長期見通し、電気その他のエネルギーの需給を取り巻く環境、エネルギーの使用の合理化に関する技術水準業種別のエネルギーの使用の合理化の状況その他の事情を勘案して定めるものとし、これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=354AC0000000049

第5条は第1~3項まで幅広く出題されており、丸暗記できるならやった方がよいくらいです。

『法』第17条

同様に第17条の条文の穴埋めも出題頻度が高いです。

 主務大臣は、特定事業者が設置している工場等におけるエネルギーの使用の合理化の状況が第五条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該特定事業者に対し、当該特定事業者のエネルギーを使用して行う事業に係る技術水準、同条第二項に規定する指針に従つて講じた措置の状況その他の事情を勘案し、その判断の根拠を示して、エネルギーの使用の合理化に関する計画(以下「合理化計画」という。)を作成し、これを提出すべき旨の指示をすることができる。

2 主務大臣は、合理化計画が当該特定事業者が設置している工場等に係るエネルギーの使用の合理化の適確な実施を図る上で適切でないと認めるときは、当該特定事業者に対し、合理化計画を変更すべき旨の指示をすることができる。

3 主務大臣は、特定事業者が合理化計画を実施していないと認めるときは、当該特定事業者に対し、合理化計画を適切に実施すべき旨の指示をすることができる。

4 主務大臣は、前三項に規定する指示を受けた特定事業者がその指示に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

5 主務大臣は、第一項から第三項までに規定する指示を受けた特定事業者が、正当な理由がなくてその指示に係る措置をとらなかつたときは、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。以下同じ。)で政令で定めるものの意見を聴いて、当該特定事業者に対し、その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=354AC0000000049

エネルギー使用量の原油換算

工場や本社でのエネルギー使用量の原油換算値を答える問題です。

頻出問題であり簡単なので、必ず勉強しましょう。

まず、選択肢の中からエネルギー使用量として換算すべき項目のみを選んで合計する必要があります。

ポイントとしては、

  • 基本的に化石燃料のみ(石油、都市ガスなど)を含む。
  • プラスチック廃棄物、木材チップなどを燃料とした発熱量は含まない。
  • 太陽光発電等で発電した電気の熱量換算分は含まない。
  • 化石燃料と太陽光発電両方によって発電した電気の熱量換算分は含む。(化石燃料が含まれているので。)
  • ヒートポンプ等による熱回収分は含まない。
  • コージェネレーション設備で発電した電気や発生した蒸気の熱量換算分は含まない。

などが挙げられます。

次にエネルギー使用量の合計値(ギガジュール)を原油換算します。

原油0.0258キロリットル/ギガジュールなので、単に0.0258をかけるだけで原油換算量が算出できます。

事業者全体としての義務

原油換算のエネルギー使用量次第で特定事業者等に該当するかどうかが決まります。

原油換算
エネルギー使用量
1,500kL/年度 以上1,500kL/年度 未満
事業者の区分特定事業者
特定連鎖化事業者又は認定管理統括事業者
-
選任すべき者エネルギー管理統括者
及び
エネルギー管理企画推進者
-
提出すべき書類エネルギー使用状況届出書(指定時のみ)
エネルギー管理統括者等の選解任届出書(選解任時のみ)
定期報告書及び中長期計画書
-
取り組むべき事項判断基準に定めた措置の実践
電気の需要の平準化指針に定めた措置の実践
事業者の努力目標中長期的にみて年平均1%以上のエネルギー消費原単位
又は
電気需要平準化評価原単位の低減、
ベンチマーク指標の目指すべき水準の達成
行政によるチェック指導・助言
報告徴収・立ち入り検査
合理化計画の作成
支持への対応 など
指導・助言への対応

特に原油換算のエネルギー使用量が1,500キロリットル/年度以上となると、エネルギー統括管理者及びエネルギー管理企画推進者を選任しなければならない点は頻出事項です。

エネルギー管理指定工場等ごとの義務

原油換算のエネルギー使用量次第でエネルギー管理指定工場等に該当するかどうかが決まります。

原油換算
エネルギー使用量
3,000
kL/年度以上
1,500~3,000
kL/年度
1,500
kL/年度未満
指定区分第一種エネルギー
管理指定工場等
第二種エネルギー
管理指定工場等
-
事業者の区分第一種
特定事業者
第一種
指定事業者
第二種
特定事業者
-
業種鉱業
製造業
電気供給業
ガス供給業
熱供給業
左記業種の事務所
左記以外の業種
全ての業種全ての業種
選任すべき者エネルギー
管理者
エネルギー
管理員
エネルギー
管理員
-

前問で原油換算量を計算させてから、エネルギー管理指定工場等の該当を答えさせる問題が多いです。

1,500キロリットル/年度、3,000キロリットル/年度の閾値と該当する区分をきちんと覚えておきましょう。

 

また、第一種エネルギー管理指定工場等で工場か事務所で選任すべき者が変わってきます。

上の表にも記載していますが、

  • 工場:エネルギー管理者
  • 事務所:エネルギー管理員

となります。間違えやすいので気を付けましょう。

エネルギー管理統括者等の役割など

エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員の詳細について問われることがあります。

選任すべき者役割選任の
資格要件
選任時期選任数
エネルギー
管理統括者
経営的視点を踏まえた取り組みの推進、
中長期計画の取りまとめ、
現場管理に係る企画立案、実務の統制
-選任すべき事由が生じた日以後遅滞なく選任1人
エネルギー
管理企画推進者
エネルギー管理統括者を実務面から補佐エネルギー管理士または
エネルギー管理講習修了者
選任すべき事由が生じた日から6ヶ月以内に選任1人
エネルギー
管理者
第一種エネルギー管理指定工場等に係る現場管理エネルギー管理士業種①(10万kL/年度以上):4人
業種①(5~10万kL/年度):3人
業種①(2~5万kL/年度):2人
業種①(2万kL/年度未満):1人
業種②(10万kL/年度以上):2人
業種②(10万kL/年度未満):1人
エネルギー
管理員
第一種、第二種エネルギー管理指定工場等に係る現場管理エネルギー管理士または
エネルギー管理講習修了者
第一種指定事業者
:1人
第二種指定事業者
:1人

業種①は製造業、鉱業を指します。

業種②はコークス製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業を指します。

 

選任の資格要件、選任時期、選任数は出題頻度が高いので覚えておきましょう。

特定エネルギー消費機器

『法』145条では、日本において大量に使用され、そのエネルギー消費性能の向上を図ることが特に必要なものを特定エネルギー消費機器として定めています。

この特定エネルギー消費機器に該当するものが問われることがあります。以下に該当機器を示します。

  1. 乗用自動車
  2. エアコンディショナー
  3. 照明器具
  4. テレビジョン受信機
  5. 複写機
  6. 電子計算機
  7. 磁気ディスク装置
  8. 貨物自動車
  9. ビデオテープレコーダー
  10. 電気冷蔵庫
  11. 電気冷凍庫
  12. ストーブ
  13. ガス調理機器
  14. ガス温水機器
  15. 石油温水機器
  16. 電気便座
  17. 自動販売機
  18. 変圧器
  19. ジャー炊飯器
  20. 電子レンジ
  21. ディー・ブイ・ディー・レコーダー
  22. ルーティング機器
  23. スイッチング機器
  24. 複合機
  25. プリンター
  26. 電気温水機器
  27. 交流電動機
  28. 電球
  29. ショーケース

エネルギー情勢・政策、エネルギー概論

エネルギーに関する情勢や基本知識が問われる大問2です。

最近は特にSDGsの活動もあり、ここ何年かで出題内容が大きく変わりそうな分野でもあります。

ただ、国際単位系・組立単位の問題以外は出題の偏りが少なく、ヤマを貼りにくいです。ある程度まんべんなく出題範囲を勉強しておく必要があります。

国際単位系(SI)

国際単位系であるSI単位に関連する内容がほぼ毎年出題されます。

国際単位系は以下の7つを基準としています。

  • 長さ:メートル[m]
  • 質量:キログラム[kg]
  • 時間:秒[s]
  • 電流:アンペア[A]
  • 熱力学温度:ケルビン[K]
  • 光度:カンデラ[cd]
  • 物質量:モル[mol]

問題のレベルは非常に簡単ですが、自分の専門分野と全く関係ない単位が出題されると厳しいです。

私の場合は、アンペア[A]、カンデラ[cd]が全くの専門外なのでこの2つを重点的に勉強しました。

組立単位

SI単位を組み合わせて表される組立単位についても出題されます。

過去に出題された内容としては、

  • 仕事率:ワット[W]=[kg・m2/s3]
  • 光束:ルーメン[lm]=[cd・sr(ステラジアン)]
  • エネルギー:ジュール[J]=[kg・m2/s2]
  • 力:ニュートン[N]=[kg・m/s2]
  • 圧力:パスカル[Pa]=[kg/(m・s2)]
  • 電荷:クーロン[C]=[A・s]
  • 電圧:ボルト[V]=[J/C]=[kg・m2/(s3・A)]
  • 電気抵抗:オーム[Ω]=[V/A]=[W/A2]=[kg・m2/(s3・A2)]

などが挙げられます。

日本のエネルギー情勢

日本のエネルギー情勢に関する内容です。出題頻度としては数年に1度という程度でそれほど高くはありません。

ただ、試験に出る出ないにかかわらず、エネルギー管理士を目指すなら自国のエネルギー情勢に関心を持つべきです。

最低限チェックしておきたいポイントとしては、

  • 化石燃料(石炭・石油・天然ガス)によるエネルギー供給割合
  • 再生可能エネルギー(水力、風力、地熱、太陽光など)によるエネルギー供給割合
  • 最終エネルギー消費の内訳(産業・業務他・運輸・家庭)

以上の項目です。

年によって値が変化していくので、最新の情報を追いかける必要があります。

地球温暖化

地球温暖化関連の問題は出題頻度が比較的高いです。

いくつかポイントを挙げると、

  • 地球に到達する太陽からの放射エネルギーは、大気圏の外側で太陽光線に垂直な単位面積当たり単位時間当たりに1.365kW/m2である。
  • 温室効果において、主に関与する気体は二酸化炭素と水蒸気である。
  • この2つの気体は、熱ふく射のうちの1μm以上の波長域に比較的強い吸収帯を有している。
  • 水蒸気の方が二酸化炭素より温室効果に及ぼす影響が大きい。

以上のような内容です。

エネルギー管理技術の基礎

エネルギー管理技術に関連する内容から、17~18個ほどの小問で幅広く出題されます。

"基礎"という分野のタイトル通り基礎的な内容が多く、ちゃんと勉強していれば最も点を取りやすい分野だと思います。

ここでは過去に出題頻度の高かった内容を紹介します。

工場等判断基準

工場等においてエネルギーの使用の合理化を図るための判断の基準が定められており、ほぼ毎年その中から1問出題されています。

出題範囲が広く難しいですが、ここでは特に出題頻度の高いものを紹介します。

基準部分(工場)

次の6分野ごとに工場等で順守すべき基準を示したものです。

  1. 燃料の燃焼の合理化
  2. 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
  3. 廃熱の回収利用
  4. 熱の動力等への変換の合理化
  5. 放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止
  6. 電気の動力、熱等への変換の合理化

以上の基準が穴埋めで出題されることが多いです。キーワードをよく覚えておきましょう。

燃焼計算

燃料の燃焼に必要な酸素量もしくは空気量を計算し、数値で答える問題です。

燃料成分は問題によって様々ですが、メタン、エタノール、水素、ブタンなど比較的簡単な化合物が出題されることが多いようです。

 

ここでは例として、メタン1Nm3を空気比1.1の燃焼用空気で完全燃焼させる場合の空気量を計算してみます。

まず燃焼反応の化学式を書きます。

$$CH_{4}+2O_{2}→CO_{2}+2H_{2}O・・・(1)$$

(1)式から、メタン1Nm3の燃焼に必要な酸素量は2Nm3であることがわかります。

あとは燃焼用空気の酸素濃度から全体の空気量を算出します。

酸素濃度は特に指定がなければ21%を使用しますが、たいていは問題文中で与えられています。年によっては酸素濃度が高い酸素富化空気(30%)として与えられることもあります。

ここでは酸素濃度を21%とすると、完全燃焼に必要な空気量は

$$2Nm^{3}×\frac{100}{21}≒9.52Nm^{3}・・・(2)$$

(2)式となります。

最後に空気比が1.1なので、

$$9.52×1.1≒10.5Nm^{3}・・・(3)$$

(3)式から10.5Nm3となります。

問題文中に回答する桁数が記載されているので、四捨五入を間違えないようにしましょう。

伝導伝熱

フーリエの法則から伝導伝熱を計算する問題です。

フーリエの法則を理解していれば簡単に解けます。

$$q=-k\frac{dT}{dx}・・・(4)$$

q:熱流束[W/m2]、k:熱伝導度[W/(m・K)]

T:温度[K]、x:物質の厚み[m]

(4)式を覚えておきましょう。

フーリエの法則の詳細については以下の記事で解説しています。

【フーリエの法則】を解説:伝導伝熱の基本法則

同一物質内、あるいは密接した物体間に温度差がある場合、物質の移動を伴わない熱エネルギーのみの移動現象が発生します。この現象を伝導伝熱といい、伝導伝熱における伝熱量の関係をフーリエの法則といいます。

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対流伝熱

伝導伝熱ほど出題頻度は高くないですが、対流伝熱も出題されることがあります。

対流伝熱はニュートンの冷却法則を理解していれば解けます。

$$q=h(T_{w}-T_{bulk})・・・(5)$$

q:熱流束[W/m2]、h:境膜伝熱係数(熱伝達率)[W/(m2・K)]

Tw:壁面温度[K]、Tbulk:流体のバルク温度[K]

(5)式を覚えておきましょう。

ニュートンの冷却法則の詳細については以下の記事で解説しています。

【ニュートンの冷却法則】を解説:対流伝熱の基本法則

温度の異なる物体表面と流体との間には対流伝熱が生じます。このときの伝熱量と温度差の関係式をニュートンの冷却法則といいます。

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放射伝熱

放射伝熱を計算する問題です。

放射伝熱はステファン・ボルツマンの法則を理解していれば解けます。

$$E=εσT^{4}・・・(6)$$

E:熱流束[W/m2]、ε:放射率[-]、T:物体の表面温度[K]

σ:ステファン・ボルツマン定数[W/(m2・K4)]=5.67×10-8 W/(m2・K4)

(6)式を覚えておきましょう。

注意点として、伝導伝熱、対流伝熱は温度差で取っていたので℃とK(ケルビン)どちらの値を使用しても同じ計算結果となっていましたが、放射伝熱では必ずケルビンで計算する必要があります。

 

また、放射伝熱における反射率、吸収率、透過率の関係は、

$$反射率+吸収率+透過率=1・・・(7)$$

(7)式で与えられます。

(6)式か(7)式のどちらかは毎年出題されているほど出題頻度が高いです。

比エンタルピー

比エンタルピーを利用して発生する蒸気量や蒸気発生に必要な熱量を計算する問題です。

問題によって与えられる初期条件が様々なので、比エンタルピー計算の根本を理解しておく必要があります。

 

まず、エンタルピーの計算では絶対値は重要ではなく、基準となる状態と変化後のエンタルピーの差(エンタルピー変化)が重要となります。

例えば、質量20kg、30℃の水を120℃の乾き飽和蒸気とするのに必要な熱量を求めてみます。

  • 30℃の水の比エンタルピー:125.8kJ/kg
  • 120℃の飽和水の比エンタルピー:503.8kJ/kg
  • 蒸発潜熱:2,202kJ/kg

以上の条件が与えられているとします。

ここでは基準となる状態は昇温がスタートする30℃であり、変化後は120℃の乾き飽和蒸気です。

ちなみに、乾き飽和蒸気とは水が100%蒸発して蒸気になっているものです。今回は20kgの水が全て蒸発すると考えるということです。

乾き飽和蒸気にするために必要な熱量とは、冒頭で述べた"基準となる状態と変化後のエンタルピーの差"となりますから、

$$Q=20×(503.8+2,202)-20×125.8≒5.16×10^{4}kJ$$

となります。

 

ちなみに、乾き飽和蒸気ではなく湿り蒸気のエンタルピーを問われる可能性もあります。

湿り蒸気とは、乾き飽和蒸気と飽和水が共存している状態であり、乾き度(もしくは湿り度)からエンタルピーを換算する必要があります。

例えば乾き度0.9である場合は、質量分率で乾き飽和蒸気が90wt%、飽和水が10wt%であることを意味します。

乾き飽和蒸気、飽和水のそれぞれのエンタルピーを算出し合計することで湿り蒸気のエンタルピーを算出できます。

エクセルギー

例えば蒸気タービンのような装置で、加えた熱量分のエネルギー100%を仕事として取り出すことはできず、可逆サイクルの種類により取り出せる効率が決まります。

この取り出し得る最大の仕事量をエクセルギーといい、有効エネルギーとも呼ばれます。

 

例えばカルノーサイクルの場合のエクセルギーEは、

$$E=Q(1-\frac{T_{0}}{T})・・・(8)$$

Q:熱量[kJ]、T0:低温熱源[K]、T:高温熱源[K]

(8)式で与えられます。

問題では、単に"エクセルギー"という用語を答えさせるパターンや、カルノーサイクルのエクセルギーを答えさせるパターンなど様々出題されています。

空気調和設備

空気調和設備に関する小問が、ほぼ毎年1問は出題されています。

ただ、空気調和設備関連は出題範囲が広く、難しい分野でもあります。

ここでは、過去に複数回出題されたことのある内容について紹介します。

エアコンのエネルギー消費性能

エアコンの消費性能について以下のように規定されています。

エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等において、現在国内向けに出荷する業務の用に供するために製造されたエアコンディショナーは、エネルギー消費効率として通年エネルギー消費効率を用いることが定められている。この基準エネルギー消費効率の値は、冷房能力により異なるが、およそ3.9~6.0の範囲にある。

"エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等"

下線の箇所が問われたことがあります。

エアコンの基準エネルギー消費効率の値は今後の技術開発次第で変わることがあるかもしれませんね。

空気調和設備の負荷の低減

空気調和設備の負荷の低減について以下のように規定されています。

空気調和設備の負荷の低減に関して、『工場等判断基準』の『基準部分(工場)』は、「工場内にある事務所等の空気調和の管理は、空気調和を施す区間を限定し、ブラインドの管理等による負荷の低減及び区画の使用状況等に応じた設備の運転時間、室内温度、換気回数、湿度、外気の有効利用等についての管理基準を設定して行うこと。」及び「冷暖房温度については、政府の推奨する設定温度を勘案した管理標準とすること。」を求めている。

"工場等判断基準"

下線の箇所が問われたことがあります。

火力発電の熱効率

火力発電における発電量と熱効率に関する計算問題です。

ほぼ毎年出題されており、簡単なのでぜひとも解けるようにしておきましょう。

熱効率を算出する式は、

$$熱効率=\frac{W×3,600}{B×H}・・・(9)$$

W:1時間当たりの発電電力[W・h]、B:燃料消費量[L]

H:燃料発熱量[J/L]

(9)式となります。

1時間当たりで計算することになるので、単位変換に気を付けましょう。

また、発電電力がkW、燃料発熱量がMJ/Lなど、大きい値が与えられることが多いので、桁にも注意しましょう。

三相誘導電動機

三相誘導電動機の三相電力や力率を計算する問題です。

出題頻度が高く、簡単なのでぜひとも解けるようにしておきましょう。

三相電力を算出する式は、

$$P=\sqrt{3}V_{l}I_{l}cosθ・・・(10)$$

P:三相電力[W]、Vl:線間電圧[V]、Il:線電流[A]、cosθ:力率[-]

(10)式となります。

力率改善

コンデンサを接続して力率改善する場合のコンデンサ容量を計算する問題です。

3~4年に1回くらいは出題されています。

コンデンサ容量は、

$$Q_{c}=P(tanφ_{1}-tanφ_{2})=P(\frac{\sqrt{1-cos^{2}φ_{1}}}{cosφ_{1}}-\frac{\sqrt{1-cos^{2}φ_{2}}}{cosφ_{2}})・・・(11)$$

Qc:コンデンサ容量[var]、P:有効電力[W]

cosφ1:改善前の力率[-]、cosφ2:改善後の力率[-]

(11)式で計算できます。

改善後の力率は100%であることが多いので、tanφ2=0となり、第2項は消えます。

最大需要電力

工場の最大需要電力から平均電力等を計算する問題です。

同様にほぼ毎年出題されており、簡単なのでぜひとも解けるようにしておきましょう。

この問題は例題を解いて理解する方がわかりやすいと思います。以下の条件が与えられているとします。

  • 最大需要電力:5,400kWに抑える
  • 最大需要電力は使用電力の30分ごとの平均値で管理する
  • 9時から9時20分までの電力使用量が2,400kW・h

このときの9時20分から9時30分の平均電力を何kW以下に抑えるべきかを求めてみます。

9時から9時30分までの30分間の電力使用量の最大が5,400kWなので、

$$\frac{P_{1}×20+P_{2}×10}{30}=5400・・・(12)$$

P1:9時から9時20分までの電力使用量、P2:9時20分から9時30分までの電力使用量

(12)式となります。

P1は与えられている条件から、

$$P_{1}=\frac{2400}{20/60}=7200kW・・・(13)$$

(13)式となります。あとは(13)式を(12)式に代入することでP2を算出することができます。

結果、P2=1,800kWとなり、9時20分から9時30分の平均電力を1,800kW以下に抑えればよいことがわかります。

流体機械

ポンプ、ファン、ブロワ、コンプレッサ等の流体機械に関する小問がほぼ毎年1問出題されています。

出題内容は年によって様々ですが、今回は比較的出題頻度の高い送風機の所要動力について紹介します。

ファンなどの送風機の所要動力P[kW]は、

$$P=\frac{QH}{60}×\frac{100}{η}・・・(14)$$

Q:風量[m3/min]、H:風圧(吐出側と吸込側の圧力差)[Pa]

η:送風機の効率[%]

(14)式で表されます。

もし式を忘れた場合は、所要動力Pの単位キロワット[kW]と単位が合うように、問題文で与えられたパラメータを組み合わせましょう。

電気加熱

電気加熱の種類や特徴を問う小問で、比較的出題頻度が高いです。

ここでは電気加熱の種類の中で、特に出題頻度の高いものを紹介します。

誘導加熱

絶縁されたコイルの中に導電性の被加熱物を置きます。コイルに交流電流を流すと被加熱物の中に交番磁束を生じ、渦電流が誘起されます。

誘導加熱はこの渦電流によるジュール熱で加熱する方法です。

誘導加熱の特徴としては、

  • 被加熱物を非接触で加熱できる。
  • 高温、急速で効率の高い加熱ができる。
  • 加熱周波数の選定により、局部加熱や均一加熱を自由に行うことができる。

以上のような点が挙げられます。

誘電加熱

2枚の平行板電極の間に絶縁物を挿入し、交流電圧を加えることで誘電体損失により発熱する手法です。

誘電加熱の特徴としては、

  • 電気的に絶縁な物質の加熱に使用できる。
  • 急速加熱が可能である。
  • 局部加熱や均一加熱を自由に行うことができる。

以上のような点が挙げられます。

照明設備

照明設備に関する小問がほぼ毎年出題されています。

同様に出題内容は年によって様々ですが、比較的出題頻度の内容について紹介します。

事務室の推奨照度範囲

「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」は、日本工業規格の照度基準等に規定するところにより管理標準を設定して使用すること、調光による減光又は消灯についての管理標準を設定し、過剰又は不要な照明をなくすことを求めています。

JISの「照明基準総則」では、事務所ビルにおける事務室の推奨照度範囲を500~1,000[lx]としています。

おわりに

エネルギー管理士(熱分野)の出題分野である、エネルギー総合管理及び法規について解説しました。

基礎的な計算問題で確実に点を取りつつ、法律関係の問題をどこまで暗記できるか、というイメージです。