概要
この記事は高圧ガス製造保安責任者、甲種機械の受験体験記です。
甲種機械は11月の国家試験で
- 学識
- 保安管理技術
- 法令
以上の3科目を受験し合格することで取得できます。
ただし、毎年春(5月頃)に実施される検定試験で学識、保安管理技術の2科目を受験し合格すれば国家試験では免除されます。
1度に受ける科目数が少ないほど勉強が楽になりますので、確実に資格を取りたい場合は検定試験を受験することをオススメします。
一方で検定試験は講習料、受験料で追加のお金がかかりますから、少しでも出費を抑えたい方は国家試験で一発勝負する方法もあります。
受験のきっかけ
- 将来的に高圧ガス製造保安責任者の資格が必要になる場合があるため
- 自分や周りの人の身を守るため
というのが主な理由です。
化学プラントであればほとんどのプラントで高圧ガスを扱うかと思います。
高圧ガスの扱う量にもよりますが、各事業所ごとに高圧ガスを安全に扱うための職制を設置して管理する必要があります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
したがって、出世や転職を考えた場合にこの資格は有利に働きます。
また、高圧ガスは扱い方をひとつ間違えると大事故につながるものです。
私の場合、自分自身が直接的に高圧ガスを扱う機会はなくても、現場の運転員や他部署の人は当たり前に扱います。
危険な運転や危険な作業をしているのを知った場合に、正しく注意できれば事故を未然に防ぐことができます。
以上の理由で受験に臨みました。化学工学系の資格の中では取る価値の高いものだと思います。
受験科目
高圧ガス製造保安責任者の資格は、
- 甲種化学、甲種機械
- 乙種化学、乙種機械
- 丙種化学(液化石油ガス)
- 丙種化学(特別)
- 第一種冷凍機械
- 第二種冷凍機械
- 第三種冷凍機械
以上の種類があります。
冷凍機械の資格は分野が少し違い、化学工学系として必要なのは甲種、乙種、丙種のいずれかです。
これらのうち甲種が最も難しく、資格の扱いとしては他の上位互換です。プラントでの職制では乙種、丙種のみの資格者では任命できないものもありますから、可能であれば甲種を取るようにしましょう。
甲種化学、甲種機械は受験する科目の違いであり、資格としてはどちらも同等です。
科目 | 甲種化学 | 甲種機械 |
学識 | 気体のPVT関係 気液平衡 反応速度・平衡反応 エンタルピー・エントロピー・ギブス自由エネルギー 燃焼・爆発範囲 | |
保安管理技術 | 化学・機械ともにほぼ同じ内容 | 化学・機械ともにほぼ同じ内容 |
上表におおまかな試験内容をまとめました。
私は機械の方が得意そうだったので甲種機械にしました。甲種化学は受けていないので、化学の科目の詳細についてはご自身でよく確認してください。
自分が得意な方を選びましょう。
試験勉強
勉強時間
検定試験
5月下旬の検定試験に向けて、4月上旬から約2か月勉強しました。
平日は1時間程度、休日は3~4時間程度で合計110~120時間くらいでしょうか。
甲種の学識は筆記試験であるため、試験直前に暗記で詰め込むのが難しいです。きちんと理論を理解して問題を解くのが、安定して点を取る方法だと思います。
そのため、自分が受ける科目の内容と理解度を事前に理解して、勉強するペース配分を決める作業を前もってしておいた方が良いです。
例えば半年前の12月くらいにネットや書店で試験範囲を確認しておき、どのくらい勉強時間がかかりそうか見積もっておきます。3か月でいけそうだと思えば3月から勉強すればよいわけです。
国家試験
11月上旬の国家試験に向けて、10月上旬から約1か月勉強しました。
検定試験を合格すれば、11月の国家試験は法令の1科目だけ受験すればよいため、かなり楽になります。
平日は1時間程度、休日は2~3時間程度で合計50~60時間くらいでしょうか。
法令も検定試験と同様に事前に勉強時間を見積もっておき、ペース配分を決めておいた方が良いです。
ただ、法令は選択問題で暗記科目なので試験直前に詰め込んでも何とかなるかもしれません。自分のやりやすいスタイルでいきましょう。
参考書・過去問
参考書や過去問はセーフティマネージメントサービス(株)のサイトから購入することができます。
どのような参考書があるかについては、高圧ガス保安協会のサイトでも確認できます。
私は学識・保安管理技術は
書籍名 | 定価 |
高圧ガス保安技術 | 6,180円 |
高圧ガス製造保安責任者 | 3,670円 |
よくわかる計算問題の解き方 | 2,100円 |
以上の3つを購入して勉強しました。(定価は私が買ったときの値段で、今後変更になることもあります。)
法令は講習会を受講することで配布される資料"高圧ガス保安法に基づく高圧ガス製造保安責任者試験 法令の要点"がわかりやすかったので、これを中心に勉強しました。
勉強方法
基本的には過去問をベースにしました。
学識は筆記試験なので過去問や参考書を眺めるだけでは理解が深まりません。実際にノートに問題を解くことをオススメします。
過去問に直接回答を書き込むのは、繰り返し解く効果が薄れるのであまりオススメしません。
"高圧ガス保安技術"の分厚いテキストは、わからないことが出てきたときに調べる辞書のような使い方をしていました。
このテキストを端から端まで読むのは時間がかかる割にあまり身に付きません。ページ数も多いし解説もわかりにくいからです。
一方で"よくわかる計算問題の解き方"の参考書はページ数もほどほどでわかりやすいのでオススメです。
各科目のポイント
学識
甲種機械の学識は大きく5つの分野に分けることができます。
【気体の熱力学】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、気体の熱力学について解説します。
気体の熱力学は毎年春(5月頃)に実施される検定試験、11月の国家試験の両方に出題されており、重要な分野です。続きを見る
【流体の流れ】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、流体の流れについて解説します。他の大問と比較して、流体の流れは簡単なので確実に点を取りたいところです。
続きを見る
【材料力学】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、材料力学について解説します。化学工学専攻の人は、大学で材料力学を習うことはほとんどなく、会社の実務でも自分で計算することはないため難しく感じる分野だと思います。
続きを見る
【材料特性・材料劣化】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、材料特性・材料劣化について解説します。材料特性・材料劣化は学識と保安管理技術の2科目で出題される可能性があるため、重点的に勉強したい分野です。
続きを見る
【圧縮機・ポンプ】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、圧縮機・ポンプについて解説します。検定試験と国家試験ともに計算問題で出題されており、他の分野と比較して難易度が高めです。
続きを見る
それぞれの科目でよく出題される内容を上の記事でまとめています。
保安管理技術
保安管理技術の内容は以下の記事でまとめています。
【保安管理技術】高圧ガス甲種機械:検定試験の出題分野を解説
この記事では高圧ガス甲種機械の出題分野である、保安管理技術について解説します。出題範囲が広いため、勉強をしていないと馴染みのない分野は全くわからないという状態になります。
続きを見る
法令
法令の内容は以下の記事でまとめています。
【高圧ガス法令】高圧ガス製造保安責任者試験の概要・出題範囲を解説
この記事では高圧ガス製造保安責任者試験の法令分野の概要や傾向について解説します。検定試験とは毛色が異なり、"高圧ガス保安法"という高圧ガスの扱いに関する法律の内容となります。
続きを見る
講習会・試験の流れ
検定講習会
地域によって違いますが、4月中旬~5月中旬に検定試験の講習会があります。
平日に3日間開催されるので、有給を取る必要があります。開催地は主要な都市なので、私のように田舎の工場に勤めている場合は都会に出れるチャンスですね。
講習は、
1日目:学識と保安管理技術
2日目:学識と保安管理技術
3日目:法令
でした。3日間とも9:00~17;00までみっちりあります。
一応各分野実施されますが、内容は講師の人によって当たりはずれがあります。
試験に出そうなところを重点的に講義してくれる方もいれば、試験にほとんど出ないところを長々と話す方もいます。
講習会受験後はSNSやネットの掲示板等で、各講習会場で試験に出ると言われた分野の情報交換をしている人もいます。大学受験のような受験者同士の争いはないですから、お互いに協力した方が良いと思います。
検定試験
試験前の準備
試験に必要なものとして、
- 筆記用具
- 受験票(写真を貼る)
- 電卓(関数電卓は不可)
- 時計
以上が挙げられます。
特に写真は早めに準備しておきましょう。
また、関数電卓が使用不可です。普段から関数電卓を使っている人は普通の電卓を使いにくいと感じると思います。
本番のために、試験勉強で問題を解くときは普通の電卓を使って慣れておくと良いでしょう。
午前の試験
午前は学識の筆記試験です。10:00~12:00の2時間です。
学識は筆記試験ということもあり、時間に余裕がなかったです。一通り解き終わった頃には残り5分くらいになっていました。
本格的に解き始める前に全ての問題をさっと見渡して、得意な問題から解くのが良いかもしれません。
午前の学識が最大の山場なので力を振り絞りましょう。
午後の試験
午後は保安管理技術の試験です。13:00~14:30の1時間半です。
保安管理技術は打って変わって時間に余裕がありました。過去問を繰り返し解いて慣れていたので、30分くらいで終わりました。
試験開始30分後から途中退室が可能なので、退室する人も多かったです。私も退室しました。
もちろんじっくり見直したい場合は時間いっぱいまで粘りましょう。
後日の結果発表(検定試験)
公式サイトで自分の受験番号を確認して合否を知ることができます。
加えて模範解答が一定期間公表されるので自己採点することもできますが、学識は時間に余裕がなく自分の回答を覚える余裕がなかったです。
また、会社から受験の申し込みをしたので、職場に通知書が送られて所属長から配布されました。
合格者と不合格者で送付される通知書が違うので、職場で他の人が受験しているとお互いに合否がばれます。
気まずい思いをしないためにもしっかり勉強して合格しましょう。
法令講習会
国家試験の1か月くらい前の10月中旬くらいに開催されました。
平日に1日開催されるので有給を取りましょう。開催地は電車で二駅くらいのところでした。電車があまり便利ではないので自家用車で行きました。
もしかしたら自家用車不可の会場もあるかもしれませんので、よく確認してください。
講習時間は9:30~16:30でした。
配布されたテキストに沿って解説していくような講義でした。テキストがよくまとまっており、試験に出やすいところを重点的に解説してくれたのでありがたかったです。
国家試験(法令)
検定試験を無事合格したので、法令1科目の受験でした。法令は9:30~10:30の1時間です。
保安管理技術と同様で、よく勉強していれば最初の30分ですぐ終わると思います。
30分経過後、途中退室しました。
もし検定試験に落ちていた場合はこの後に保安管理技術と学識の試験を受けます。
保安管理技術が11:10~12:40の1時間半で、学識が13:30~15:30の2時間となります。
後日の結果発表(国家試験)
法令はマークシートなので簡単に自己採点できます。なんとか6割はありそうでした。
自己採点して満足してしまったので、公式サイトの合格者番号を見ておらず、職場に送付された通知書で正式な合格を知りました。
合格後は免状用の写真を撮る等の手続きがあります。
おわりに
高圧ガス製造保安責任者、甲種機械の受験体験記をまとめました。
資格を取るためだけの勉強で終わらせてしまうのはもったいなく、業務で求められる知識が多いのでしっかり勉強しておいた方がよいです。