概要
ある絶対温度Tの黒体から放射されるエネルギーEbが温度Tの4乗に比例することを表わした法則をステファン・ボルツマンの法則といい、(1)式で表されます。
$$E_{b}=σT^{4}・・・(1)$$
Eb:全放射(輻射)エネルギー[W/m2]、T:絶対温度[K]
σ:ステファン・ボルツマン定数[W/(m2K4)]
(1)式右辺の比例定数をステファン・ボルツマン定数と呼び、その値は(2)式となります。
$$σ=5.67×10^{-8}\ {\rm{W/(m^{2}K^{4})}}・・・(2)$$
ステファン・ボルツマンの法則は輻射伝熱計算において最も基本的な法則の1つです。
全放射エネルギーは温度の4乗に比例することから、温度依存性が極端に大きいです。
常温に近い温度においては放射エネルギーは無視して伝熱計算を実施しても問題ないことがほとんどですが、工業炉のような高温の物質を扱う場合には輻射伝熱計算を考慮する必要があります。
導出
ステファン・ボルツマンの法則の導出は様々ありますが、この記事ではプランクの法則からの導出を簡単に紹介します。
(3)~(5)式にプランクの法則を示します。
$$E_{bλ}=\frac{C_{1}}{λ^{5}[{\rm{exp}}(\frac{C_{2}}{λT})-1]}・・・(3)$$
$$C_{1}=2πh{c_{o}}^{2}・・・(4)$$
$$C_{2}=hc_{o}/k・・・(5)$$
Ebλ:波長λにおける放射エネルギー[W/m2]
C1:第一放射定数[W・μm4/m2]、C2:第二放射定数[W・μm4/m2]
h:プランク定数=6.6256×10-34 [J・s]、k:ボルツマン定数=1.3805×10-23 [J/K]
co:真空中の光速=2.998×108 [m/s]
(3)式はある波長λにおける放射エネルギーを表わしていますから、(3)式を波長全域にわたって積分すれば全放射エネルギーEbを算出できます。
$$E_{b}=\int_{0}^{∞}E_{bλ}dλ=\int_{0}^{∞}\frac{C_{1}}{λ^{5}[{\rm{exp}}(\frac{C_{2}}{λT})-1]}dλ$$
ここで、(7)式とおいて整理します。
$$α=\frac{C_{2}}{λT}・・・(7)$$
積分の変数をαに変換するために、(7)式を両辺微分すると(8)式となります。
$$dα=-\frac{C_{2}}{λ^{2}T}dλ・・・(8)$$
(8)式に(7)式を代入しλを消去すると(9)式となります。
$$dλ=-\frac{C_{2}}{α^{2}T}dα・・・(9)$$
積分区間について、(7)式からλ=0~∞のとき、α=∞~0となります。これらの関係から、
$$\begin{align}E_{b}&=\frac{C_{1}T^{5}}{{C_{2}}^{5}}\int_{∞}^{0}\frac{α^{5}}{e^{α}-1}(-\frac{C_{2}}{α^{2}T})dα\\&=\frac{C_{1}T^{4}}{{C_{2}}^{4}}\int_{0}^{∞}\frac{α^{3}}{e^{α}-1}dα・・・(10)\end{align}$$
となります。
ここで、積分の値に関して、
$$\int_{0}^{∞}\frac{α^{3}}{e^{α}-1}dα=\frac{π^{4}}{15}・・・(11)$$
(11)式が成立することを利用します。(11)式の詳細はこちらのサイト様に記載があります。
(11)式を(10)式に代入すると、
$$E_{b}=\frac{π^{4}C_{1}}{{15C_{2}}^{4}}T^{4}・・・(12)$$
(12)式となり、ステファン・ボルツマン定数σの内訳を導出できました。
プランク定数、ボルツマン定数、光速からステファン・ボルツマン定数の値を計算すると、記事冒頭の値と一致します。
$$σ=\frac{π^{4}C_{1}}{{15C_{2}}^{4}}≒5.67×10^{-8}・・・(13)$$
まとめ
ステファン・ボルツマンの法則について解説しました。
放射伝熱計算の基礎的な式なので、必ず覚えておきましょう。