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公害防止 資格

【大気特論】公害防止管理者の出題分野を解説

2021年2月22日

概要

公害防止管理者大気1種に合格したブログ管理人が、過去の出題傾向から頻出分野を紹介するシリーズです。

やみくもに参考書を読んだり過去問を周回するよりは、最初にある程度出題傾向や頻度を把握した方が効果的です。

出題分野ごとに傾向を解説していますので、資格勉強の方針を決める参考になればと思います。

この記事では大気特論についてまとめています。

出題分野

大気特論での全体の出題分野を以下の表に示します。

出題分野問題数
燃料2
燃焼計算2
燃焼方法及び装置3
排煙脱硫2
窒素酸化物排出防止技術2
揮発性有機化合物排出防止技術0
大気特論測定技術4
合計15

大気特論測定技術が4問で、最も多く出題されています。
一方で揮発性有機化合物排出防止技術は出題されていません。

その他の分野は2~3問出題されています。

15問中9問取れば合格です。
全ての分野をきっちり勉強するのが理想ですが、出題頻度を考えると割に合わない分野もあります。

資格勉強にあまり時間を割けない人は、点を取りやすい分野に絞って勉強するのがよいでしょう。

燃料

気体燃料、液体燃料、固体燃料の3種類の中から2問が出題されています。

固体燃料が1番覚える量が少なく簡単なので、出題されるとラッキーかなと思います。

発熱量の比較

気体燃料、液体燃料、固体燃料問わず、単位質量(単位体積)あたりの発熱量の比較はよく出ます。

一般に発熱量は、気体>液体>固体 となることを覚えておきましょう。

気体燃料の成分

天然ガス(乾式・湿式)、LPG、製油所ガス、コークス炉ガス、高炉ガス、都市ガスの主要成分を問われる問題は良く出ます。

天然ガス(乾式)ほとんどメタン、一部CO2
天然ガス(湿式)メタン、エタン、プロパン、ブタンなど
LPGプロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンなど
製油所ガス水素、C1~C4炭化水素
コークス炉ガス水素、メタン、CO
高炉ガスCO2、ダスト
都市ガスLNG、LPG

ガソリン・灯油・軽油・重油の特徴

各液体燃料の物性がよく出ます。液体燃料によって注目される項目が少しずつ異なります。

ガソリン密度、沸点範囲、オクタン価
ナフサガソリンと同じ沸点範囲
灯油(2種類)密度、沸点範囲、引火点、硫黄分
軽油(5種類)密度、沸点範囲、引火点、流動点、セタン価、硫黄分
重油(6種類)密度、沸点範囲、引火点、動粘度、硫黄分

各物性の大小を問われる問題と、物性の特徴や数字そのものを問われる問題両方あります。

しかし数字そのものを問われる問題はマイナーな項目が出ると難しいです。
特に軽油や重油は種類や号数が多いので全ての物性を覚えきることは困難ですね。

各物性の大小関係を抑えつつ、よく出る数字を覚えておけば2択くらいまでは絞れます。

石炭・コークスの特徴

石炭の種類によって、物性や性質がどのように変化するか問われます。

無煙炭
歴青炭
亜歴青炭
褐炭
真比重、比熱、固定炭素量、揮発分、着火温度、灰分
強粘結炭コークス用途

各物性は石炭の純度によって相関があるものがほとんどで覚えやすいです。

例えばよく出題される物性は、

真比重: 無煙炭 > 歴青炭 > 亜歴青炭 > 褐炭

揮発分: 無煙炭 < 歴青炭 < 亜歴青炭 < 褐炭

着火温度: 無煙炭 > 歴青炭 > 亜歴青炭 > 褐炭

という関係にあります。

無煙炭が最も不純物が少なく、褐炭が多い傾向にあります。

燃焼計算

毎年2問出題されています。

計算問題で解くのに時間がかかるため敬遠されがちですが、計算方法を理解しておけば正解できるのでむしろ確実に抑えたい2問です。

燃焼計算問題を捨てると時間が余ってしまって、試験終了まで待っている間に後悔することになります。

他の暗記問題を先に回答して、最後にこの2問を解くのがオススメです。

気体燃料の燃焼計算

液体・固体の燃焼計算に比べると気体の燃焼計算は簡単です。

計算条件が気体燃料の体積で与えられることが多いからです。
気体の場合、1mol=22.4Lであるため、モル比と体積比が一致して計算がしやすいのです。

その他ポイントとして、

・空気比が1.0より大きく過剰の場合は、過剰分の酸素、窒素を忘れずに計算する。
・窒素は反応には寄与しませんが、反応後の体積割合を算出する場合に影響するので忘れずに足し合わせる。
・主要な燃焼ガス(メタン、エタン、プロパン、水素、CO)の燃焼反応式を書けるようにする。

が挙げられます。

液体・固体燃料の燃焼計算

液体・固体燃料は計算条件として質量、質量割合で与えられることが多く、原子量で割ってモルへ換算する必要があります。

そのため、気体の燃焼計算に比べると計算が複雑になりがちです。落ち着いて計算しましょう。

また、炭素○%、水素○%という形で燃料中の原子割合で与えられるため、各原子1kmolに対して燃焼反応式を立てます。

$$炭素:C+O_{2}=CO_{2}$$

$$水素:H+\frac{1}{4}O_{2}=\frac{1}{2}H_{2}O$$

例えば炭素原子と水素原子に関しては上のようになります。

燃焼方法及び装置

気体・液体・固体燃料の燃焼特性と装置特性が出題されています。

毎年3問出題されていますが、2問は頻出問題、1問はマイナーな問題が出るイメージで、3問全て正解するのは難しいと思います。

頻出2問を確実に取れるよう勉強しましょう。

ガス燃焼とその装置

頻出その1です。
燃焼の形式(予混合燃焼、拡散燃焼)と炎の長さ、バーナーの特徴がよく出題されます。

過去問を繰り返し解いて覚えましょう。

油燃焼とその装置

頻出その2です。
バーナーの種類(油圧式)と特徴がよく出題されます。

参考書にはバーナーの構成や部品に関する細かい内容まで図で載っていますが、さすがに細かすぎる内容は今のところ出題されていません。

過去問でどのレベルの内容が問われるのか確認してから参考書を読むのが良いと思います。

石炭燃焼とその装置

頻出その3です。
固定床燃焼、流動層燃焼、微粉炭燃焼それぞれの特徴と装置についてよく出題されます。

また、ストーカー燃焼についてもたまに出題されますので余裕があれば覚えておくとよいです。

ディーゼル・ガスタービン・コージェネレーション

マイナー問題その1です。

過去にはガスタービンやNOxの内容が出題されたことがありますが、他の分野と被る内容もあるのでここで特に勉強する必要はないかと思います。

すすの発生とその防止

頻出その4です。
各燃焼形態でのすすの性状と発生度合いについて出題されます。

  すすの発生度合い・特徴
ガス燃焼予混合燃焼ほとんど発生しない
 拡散燃焼予混合燃焼より発生しやすい
油燃焼油燃焼ガス燃焼より発生しやすい
重油の噴霧燃焼ではセノスフェアが起こる
 ボイラー重油燃焼起動時や炎が水冷壁に当たるとすすが発生しやすい
石炭燃焼微粉炭燃焼ほとんど発生しない
 ストーカー燃焼局所的な空気不足によりすすが発生する

大まかな特徴を上の表にまとめました。

伝熱面の腐食とその防止

頻出その5です。
低温腐食、高温腐食の特徴と防止策について出題されます。

 腐食原因防止策
低温
腐食
排ガス中SO3が硫酸となり、
酸露点以下になると凝縮し
伝熱面に接触する
硫黄分の少ない燃料を使用する。
酸露点以下にならないようにする。
ガスの流れを一様にする。
粉末状の酸化マグネシウム、ドロマイト
を空気に混ぜる。
過剰空気量を少なくする。
高温
腐食
重油中のナトリウム、バナジウムが
高温伝熱面に付着する
高温部伝熱面の表面温度を下げる。
付着物を落とす。
ドロマイトなどの添加物を注入し
灰の融点を上げる。
バナジウム、ナトリウムの
少ない重油を使用する。
定期点検でスケールを除去する。

それぞれの腐食の原因と防止策を上にまとめました。

低温腐食と高温腐食を混同しないようにしましょう。

通風及び通風装置

マイナー問題その2です。
過去10年で1度出題されるかどうか、という頻度です。

勉強する優先順位は低いです。

燃焼管理用計測器

マイナー問題その3です。
ガス分析計、温度計、流量計の中から1問が出題されています。

覚える量が多い割に出題頻度が高くないので捨ててもよいと思います。

実務で計器をよく扱っている人は有利ですね。

排煙脱硫

脱硫プロセスに関する内容が2問出題されます。

2問とも出題されるポイントが決まっているので、ぜひとも両方正解したいですね。

石灰スラリー吸収法、水酸化マグネシウムスラリー吸収法に関する内容が2問出題されます。

石灰スラリー吸収法

石灰スラリー吸収法の特徴、方式、スケーリング防止策の中から出題されます。

 特徴メリット
スート分離方式
(別置き酸化方式)
吸収塔前に冷却除じん
塔を設置する
ばいじんをあらかじめ除去することで、
石こうの品質が高まる。
スート混合方式
(吸収塔酸化方式)
SO2吸収とばいじんの
除去を同時に行なう
冷却除じん塔が不要でイニシャル
コストが安い。
硫酸の添加が不要。
石灰石過剰率を低く抑えたままで
高い脱硫率が達成できる。

混同しやすい方式を上の表にまとめました。

水酸化マグネシウムスラリー吸収法

水酸化マグネシウムスラリー吸収法の特徴、化学反応式がよく出題されています。

化学反応式は5つの選択肢の中から誤っているものを選べ、という形式が過去に出題されています。
問題文をよく読み、どのプロセスで起こる反応を問われているのか把握しましょう。

・吸収塔

$$SO_{2}+H_{2}O→H_{2}SO_{3}$$

$$H_{2}SO_{3}+Mg(OH)_{2}→MgSO_{3}+2H_{2}O$$

$$MgSO_{3}+H_{2}SO_{3}→Mg(HSO_{3})_{2}$$

・吸収塔下部液室

$$Mg(HSO_{3})_{2}+MgOH_{2}→2MgSO_{3}+2H_{2}O$$

$$MgSO_{3}+\frac{1}{2}O_{2}→MgSO_{4}$$

・酸化塔

$$Mg(HSO_{3})_{2}+O_{2}→MgSO_{4}+H_{2}SO_{4}$$

$$MgSO_{3}+\frac{1}{2}O_{2}→MgSO_{4}$$

・石こう回収

$$MgSO_{4}+Ca(OH)_{2}+2H_{2}O→Mg(OH)_{2}+CaSO_{4}・2H_{2}O$$

また、水酸化マグネシウムスラリー吸収法の特徴を下にまとめました。
よく出るので全て覚えてください。

 特徴
設備費石灰スラリー法より安い。
ランニングコスト石灰石<水酸化マグネシウム<水酸化ナトリウム
ランニングコストは石灰スラリー法より高い。
危険性弱アルカリだが毒性や腐食性もほとんどない。
COD吸収塔出口のMg(HSO3)2やMgSO3のままではCODが高い。
酸化塔でMgSO4にしてから放流する。
溶解度水酸化マグネシウムより反応後の生成塩の溶解度が
高く、スケーリングの心配がない。

窒素酸化物排出防止技術

サーマルNOx、フューエルNOx、低NOx燃焼技術、排煙脱硝技術から2問出題されています。

脱硫と同様に出題されるポイントが絞られるので点を取りやすい分野です。

サーマルNOx

Zeldovich機構、プロンプトNOx、サーマルNOxの抑制に関する内容がよく出ます。

フューエルNOx

燃料由来の窒素分からNOxが生成される機構をフューエルNOxといいます。

サーマルNOxとの引っ掛けで出題されることがありますので、混合しないようにしましょう。

低NOx燃焼技術

低NOx燃焼技術がよく出題されています。
引っ掛け問題が多いので、サーマルNOx低減とフューエルNOx低減のどちらに効果があるのか確実に覚えましょう

 サーマルNOxフューエルNOx備考
燃料転換抑制効果なし抑制効果あり-
エマルション
燃料
抑制効果あり抑制効果は小さい-
低空気比燃焼抑制効果あり抑制効果あり空気比を下げ過ぎると
すすが発生する。
二段燃焼抑制効果あり抑制効果あり第一段階で80~90%の
空気量とする。
導入には大幅な設備
改造を要する。
排ガス再循環
燃焼
抑制効果あり抑制効果なし-
水蒸気吹込み抑制効果あり抑制効果なし-

また、低NOxバーナーの種類と原理についてもよく出題されます。

 方法NOx抑制原理
急速燃焼形燃料と空気の混合を
良好にする
火炎からの放熱量増加、
高温部での燃焼ガスの滞留時間短縮
緩慢燃焼形緩やかな条件で
燃焼させる
燃焼域、火炎表面積の拡大による火炎温度低下
燃焼域での酸素濃度低下
分割火炎形火炎を分割する火炎温度を低下させ、高温域での
ガスの滞留時間減少
自己再循環形燃焼ガスを
再循環させる
循環域での酸素濃度と燃焼温度の低下
段階的燃焼
組込形
二段燃焼や濃淡燃焼を
バーナーに組み込む
二段燃焼、濃淡燃焼の原理によりNOx抑制

排煙脱硝技術

アンモニア接触還元法の出題頻度が圧倒的に高いですが、たまに他の手法も出題されています。

他の手法は余裕があれば覚えておくくらいでよいでしょう。

揮発性有機化合物排出防止技術

VOC関連の分野です。
参考書には記載がありますが、少なくとも過去10年は出題されていません。

とりあえずスルーでよいでしょう。

大気特論測定技術

ボリュームのある分野で、以下に示す6つの分野のうち4問出題されています。
測定法や試薬の名前が紛らわしいうえに種類が多く、難しい分野です。

この分野をいかに攻略するかで大気特論の合否が左右されるといっても過言ではありません。
細かいところまで覚え始めるときりがありませんので、忙しい人は頻出分野に絞って勉強しましょう。

燃料試験方法

気体燃料試験、液体燃料試験、固体燃料試験の中から出題されています。
範囲が広い上に毎年この分野から出題されるわけでもないので、ポイントが絞りにくく難しいです。

参考書に載っているような計算問題は出題されず、分析対象と分析方法が問われることが多いです。

個人的にも苦手でこの分野は捨てていました。
実務でこの分野に関わりがある人は有利だと思います。

試料ガス採取

試料ガスの採取方法と採取器具の材質についてよく出題されています。

他の5つの分野と比べると覚えやすいため、もし出題されたら必ず正解したい分野です。

下の表に採取方法のポイントをまとめました。

採取位置ダクトの屈曲部分、断面形状が急激に変化する部分は避ける。
ダストがたい積したり、落下の著しい場所は避ける。
採取点ガス濃度の変動が採取位置断面で±15%以下であれば、
任意の1点としてよい。
採取口排ガス流に対してほぼ直角に採取管を
挿入できる角度とする。
採取管内径は6~25mm程度とする。
必要に応じて一次ろ過材を採取管の先端または後段に
装着する。
必要に応じて保温・加熱する。
導管なるべく短くする。
なるべく下り勾配になるよう加工する。
必要に応じて保温・加熱する。

また、測定成分と材質の相性についても頻出ですので覚えましょう。

硫黄酸化物の分析方法

SOxの化学分析方法が出題されています。
しかし出題頻度としては後述するSO2の自動計測の方が高いので、優先順位は低いです。

過去には分析方法と用いる試薬の組み合わせが出題されていますが、正確に覚えていないと正解できません。

余裕があれば取り組む程度でよいでしょう。

二酸化硫黄の自動計測

SO2自動計測器の種類や特徴について出題されています。
6つの分野の中では出題頻度が高いため、ぜひとも勉強しておきましょう。

特に出やすい各計測器の妨害物質についてまとめました。

計測器の種類妨害物質
溶液導電率方式CO2、NH3、HCl、NO2
赤外線吸収法式H2O、CO2、炭化水素
紫外線吸収法式NO2
紫外線蛍光方式炭化水素
干渉分光方式H2O、CO2、炭化水素

窒素酸化物の分析方法

NOxの化学分析方法が出題されています。
出題頻度はSOxの化学分析方法と同様に低く、後述するNOxの自動計測の方が高いので、優先順位は低いです。

余裕があれば勉強しましょう。

窒素酸化物の自動計測

NOx自動計測器の種類や特徴について出題されています。
SO2自動計測と同じく出題頻度が高いため、確実に正解を取れるよう勉強しましょう。

各計測器の妨害物質についてまとめました。SO2自動計測器と混同しないようにしましょう。

計測器の種類妨害物質装置構成
化学発光方式CO2流量制御部、反応槽、測光部、オゾン発生器
赤外線吸収法式H2O、CO2、SO2、炭化水素回転セクター、ガスフィルター、工学フィルター
試料セル、比較セル、測光部、増幅部
紫外線吸収法式SO2、炭化水素回転セクター、試料セル
プリズム(回折格子)、増幅部
差分光吸収方式SO2、炭化水素(参考書に記述なし)

まとめ

おさらいで全体の出題範囲を下の表に示します。

出題分野問題数
燃料2
燃焼計算2
燃焼方法及び装置3
排煙脱硫2
窒素酸化物排出防止技術2
揮発性有機化合物排出防止技術0
大気特論測定技術4
合計15

どの分野もバランスよく出題されるため、純粋な勉強量が問われる科目です。

詳細な内容については参考書や過去問で繰り返し確認して覚えましょう。