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P&ID プラント設計

【P&ID】各段階の発行について解説

2024年2月19日

概要

P&IDの作成は必要な情報が全て揃ってから始まるわけではありません。

作成スケジュールが限られているため、様々な分野の担当者が同時並行で作業したり、部署や会社を跨いで内容を都度確認するのが普通です。

したがって、P&IDは仮図面を何回も発行していき、修正を重ねて完成図を目指します。

この仮図面の発行は、ある程度区切りのいい所まで検討が進んだタイミングで行なわれることがほとんどで、どのような意図で仮図面を発行するのか名前が付いています。

  • 内部レビュー用発行:Issue for Internal Review (IFIR)
  • 顧客承認用発行:Issue for Approval (IFA)
  • 詳細設計用発行:Issue for Design (IFD)
  • 工事用発行:Issue for Construction (IFC)
  • 竣工図:As Built

本記事では各段階のP&ID発行について解説しています。

P&IDの各発行段階

内部レビュー用発行(IFIR)

P&IDを一通り作成した段階での最初の発行です。

工場を建てるユーザーがP&IDを作成する場合は関係部署内レビューとなり、エンジニアリング会社が顧客の為にP&IDを作成する場合は社内レビューとなります。

関係部署内、あるいは社内で各設計担当者がレビューし、様々な観点から問題がないかどうか確認します。

また、この段階で確定していない情報・データがある場合は"HOLD"とし、情報が確定した段階でP&IDに反映します。

ここではいくつかのポイントを挙げます。

表記方法や統一性

P&ID上の記号や表記方法が統一されているか確認します。社内で表記方法が指定されている場合は、その方法に則っているかを確認します。

各機器、配管、計器のラベルや番号についても正確に割り振られているか、抜け漏れがないかも確認します。

また、レジェンドに使用されている全ての記号や略語が適切に定義されているかを確認します。

プロセスの反映

以下のような資料をもとに、プロセスが正しく反映されているか確認します。

  • プロセスフロー系統図(PFD)
  • 材料選定図(MSD)
  • 緊急/安全図(ESD)
  • 機器データシート

また、配管設計においてプロセス上必要な注意事項があれば、"NOTE"として該当箇所に記載されているかを確認します。

装置の運転

主に装置が安全に運転できるか確認します。例えば以下のような項目が挙げられます。

  • 運転に必要な計器が過不足なく設置されているか(圧力計、温度計、流量計、液面計等)
  • トラブル時でも安全に運転できるようバルブや計器が設置されているか
  • 保全/補修のための機器の分離や切り離し対策は十分か
  • バルブの操作性は問題ないか
  • 非定常運転(スタートアップ、シャットダウン、機器の切替)に必要なラインや計器が設置されているか
  • 試運転準備時のスチームブローや化学洗浄が実施できるようラインが設置されているか

プロセス制御

計装機器と制御系の配置がプロセスの要求を満たしているかを確認します。

加えて、プラント運転の安全確保に必要な起動インターロック、緊急停止、緊急脱圧システム等が適切に組み込まれているかも確認します。

プロジェクトスペック

機器や配管、計装、土建の設計基準、安全や環境法への対応基準が正しく反映されているか確認します。

顧客承認用発行(IFA)

内部レビューの内容を反映したP&IDを顧客承認用として発行します。

顧客はこのP&IDを確認し、修正点等をコメントします。P&ID作成側はコメントをもとに、P&IDに反映します。

この顧客レビューは1回とは限らず、複数回必要な場合もあります。

また、HAZOPスタディもこの段階で実施されます。

HAZOPスタディは、顧客を含めた関係エンジニアが集まって、流量/温度/圧力/液面等の条件が変動した場合にどのような状況が起きるのか、加えてその状況に対する安全対策は十分かをライン1本1本に対して検証・確認していく作業となります。

詳細設計用発行(IFD)

顧客のコメントやHAZOPのレポート、基本設計結果をP&IDに反映し、詳細設計用のP&IDが発行されます。

詳細設計用のP&IDをもとに配管・計装の詳細設計が実施されます。

また、ベンダー設計でHOLDにしていた箇所(配管の取り合い、調節弁・安全弁のタイプ・サイズ等)についても、データの入手に伴いP&IDに反映し仕様を確定させます。

工事用発行(IFC)

配管詳細設計が完了し建設用の配管図が作成された後、工事用P&IDを発行します。

竣工図(As Built)

基本的には工事用P&IDに沿ってプラント建設が進められます。

しかし現場において工事中や試運転中に不具合が発見され様々な変更が加わるため、P&IDも修正する必要があります。

これらの変更を反映して最終的に建設されたプラントを表わしたP&IDを"竣工図(As Built)"P&IDといい、ようやく完成版のP&IDとなります。

まとめ

P&IDの各段階の発行について解説しました。

P&IDは関係部門の協力を得ながら、皆で修正して作成していくものです。自分の部署だけで完結する仕事ではありませんので、他部署との日ごろの関係構築が意外に重要だったりします。