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化学工学 熱力学

孤立系・閉鎖系・開放系を解説:熱力学において取り扱う系の種類

2022年10月29日

系と周囲

熱力学の分野では、取り扱う対象を系といい、系に無関係なすべてを周囲(あるいは外部、外界、環境)といいます。

熱力学の法則は取り扱う系とその周囲との物質やエネルギーのやり取りの有無によって記述されます。

取り扱う系の種類は孤立系・閉鎖系・開放系の大きく3つに分類されます。

孤立系

系と周囲の間で、物質とエネルギーのどちらもやり取りしない系を孤立系といいます。

孤立系と呼べる系は私たちの身近には存在せず、あえて言うなら宇宙全体で考えれば孤立系と言えます。

したがって、孤立系の熱力学は仮想的、あるいは理想的なものであることを念頭に置いて考えた方がよいでしょう。

 

一方で、孤立系は熱力学において最も基本的な概念です。

例えば熱力学第一法則は孤立系のエネルギーが保存される法則ですし、熱力学の第二法則は孤立系のエントロピーは必ず増大する法則と解釈することもできます。

閉鎖系

系と周囲の間で、物質のやり取りは行わないが、エネルギーのやり取りは行なう系を閉鎖系といいます。

閉鎖系は私たちの身の回りにも存在し、例えば蓋をしたペットボトルのような密閉した容器が挙げられます。

工業的には高圧ガスを封入したボンベは閉鎖系と言えるでしょう。ボンベの保管場所として直射日光の当たらない場所が指定されます。

これは容器内と周囲とのエネルギーのやり取りが可能であるため、直射日光によって容器内の温度が上昇して液化ガスが蒸発し、容器内圧力が高くなるのを防ぐためです。

 

閉鎖系はエネルギーのやり取りが可能なので、閉鎖系だけに注目するとエネルギーが保存されなかったり、エントロピーが減少したりすることがあります。

エネルギー保存については、閉鎖系とその周囲を含めた全体を孤立系として考えれば熱力学の第一法則を適用することができるでしょう。

加えて、閉鎖系における自発変化の方向を知りたい場合は、エントロピーから理論を拡張した自由エネルギー(ギブス自由エネルギー、ヘルムホルツ自由エネルギー)を使用することになります。

開放系

系と周囲の間で、物質・エネルギーのやり取りを両方行なう系を開放系といいます。

私たちの身の回りの空間はほとんど開放系と考えてよいでしょう。

工業的には系に流入・流出する物質の流量や化合物の種類(組成)を把握することが重要です。これを俗に物質収支をとる、といいます。

 

開放系における自発変化の方向は、エントロピーやギブス自由エネルギーだけでは表現しきれませんので、物質量の変化を考慮して理論を拡張した化学ポテンシャルを使用することになります。

おわりに

孤立系・閉鎖系・開放系について解説しました。

以下に各系の特徴をまとめました。

系の種類エネルギーの移動物質の移動

自発変化の

方向性判定

孤立系不可不可エントロピー
閉鎖系不可自由エネルギー
開放系化学ポテンシャル

熱力学の分野では当たり前に出てくる用語なので、覚えておきましょう。