概要
Fickの法則は物質拡散に関する法則です。
$$J_{A}^{*}=-CD(\frac{dx_{A}}{dz})・・・(1)$$
JA*:モル平均移動速度に対するモル流束[mol/(m2s)]、D:拡散係数[m2/s]
C:モル密度[mol/m3]、xA:成分Aのモル分率、z:拡散方向[m]
Fickの法則は(1)式で表されます。
(1)式は成分Aが濃度の高いところから低いところへ移動することを示しています。
このFickの法則を利用して、拡散の形態を知ることができます。
また、ガス吸収におけるモデルの1つである二重境膜説でも、ベースとなっている法則なので覚えておきましょう。
拡散の形態
仮に、A,Bの2成分系がz方向に拡散するとします。
このとき、固定座標系における各成分のモル流束NA、NB[mol/(m2s)]は、
$$N_{A}=C_{A}v_{A}・・・(2)$$
$$N_{B}=C_{B}v_{B}・・・(3)$$
CA、CB:成分A,Bのモル濃度[mol/m3]
vA、vB:成分A,Bの移動速度[m/s]
となります。
各成分のモル流束だけでは、系全体でみたときにどのような拡散となっているかわかりづらいです。
そこで、混合物のモル平均移動速度についてモル流束を求めます。
成分Aの移動速度vAがモル平均移動速度v*に対して、どの程度差があるかについては、
$$J_{A}^{*}=C_{A}(v_{A}-v^{*})・・・(4)$$
(4)式で表されます。
ここで、v*は
$$v^{*}=\frac{C_{A}v_{A}+C_{B}v_{B}}{C_{A}+C_{B}}=\frac{C_{A}v_{A}+C_{B}v_{B}}{C}・・・(5)$$
C:モル密度[mol/m3]
(5)式で表されます。
また、成分Aのモル分率xAは
$$x_{A}=\frac{C_{A}}{C}・・・(6)$$
(6)式で表されます。
(2)、(3)、(5)、(6)式を(4)式に代入すると、
$$J_{A}^{*}=N_{A}-x_{A}(N_{A}+N_{B})・・・(7)$$
(7)式となります。
(7)式に(1)式を代入すると、
$$N_{A}=-CD(\frac{dx_{A}}{dz})+x_{A}(N_{A}+N_{B})・・・(8)$$
(8)式となります。
(8)式においてNB=0の場合を一方拡散といい、NA+NB=0の場合を等モル相互拡散といいます。
また、ガス吸収のような系では、吸収したガス成分に対して液濃度が圧倒的に高いので、
xA<<xBとなります。
このとき(8)式においては右辺第二項が十分に小さいため無視でき、モル密度Cもほぼ一定値であることから、
$$N_{A}=-D(\frac{dC_{A}}{dz})・・・(9)$$
(9)式のように簡略化できます。
拡散係数については以下の記事で紹介しています。
【拡散係数】推算方法を解説:主要物質の実測値も記載
Fickの法則に使用されている係数を拡散係数Dといいます。この記事では主要な物質の拡散係数の実測値と、推算方法を紹介します。
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