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プラント設計 計測機器

【熱電温度計】について解説:熱電対の原理や種類

2024年4月15日

概要

熱電対を使用する温度計を熱電温度計といいます。

熱電対は異種金属線を末端で接合したもので、線間に生じる熱起電力により温度を知ることができます。

熱電温度計は工業用温度計として多用されているものの1つで、構造が簡単で扱い易い、比較的安い等の特徴があります。

本記事では熱電温度計及び熱電対の特徴を解説します。

原理

熱電温度計は様々な原理のもと、現在の構造となっています。

ゼーベック効果

材質の異なる2本の金属線で上図のような閉回路を作ります。

2つの接点を異なる温度に保持すると、この回路に電流が流れます。これをゼーベック効果といいます。

加えて、この電流を起こさせる起電力を熱起電力といいます。

熱起電力の大きさは両接点の温度により決まり、金属線の長さや太さ、接点以外の部分の温度には無関係です。

したがって、片方の接点の温度を一定に保ちつつ回路に生じる熱起電力を測定することで、もう片方の接点(測温接点)の温度を知ることができます。

また、一定温度に保つ方の接点を基準接点または冷接点といい、0℃に保つのが一般的です。

均質回路の法則

単一かつ均質の材料からできている金属線は、部分的に温度差があったとしても熱起電力は発生しません。

これを均質回路の法則といいます。

この法則は、熱電対において両接点以外の部分の温度が熱起電力に影響を与えないことを意味します。

一方で熱電対が劣化等により変質すると均質ではなくなるため、熱起電力に影響を与えるようになります。

中間金属の法則

熱電対の任意の場所に異種金属線を挿入しても、その挿入された金属線の両端の温度が等しいときは熱起電力に影響を与えません。

これを中間金属の法則といいます。

この法則を応用すると、以下の図のようになります。

熱電対の各基準接点と電圧計を銅線等の安価な線で繋ぎます。

t2=t2'、t3=t3'であれば、電圧計が受ける熱起電力は銅線がない場合と同じとなります。

中間温度の法則

2つの熱電対を直列につなぐとき、得られる熱起電力は各々の熱起電力の和になります。

これを中間温度の法則と言います。

例えば上図のように熱電対A,Bそれぞれで発生する熱起電力をE12、E23とすると、

$$E_{13}=E_{12}+E_{23}・・・(1)$$

(1)式が成立します。

この法則を利用すれば、基準接点t2の温度は0℃でなくてもよく、t2の温度で生じる熱電対Bの熱起電力を熱電対Aの熱起電力に加算すればt1の温度を測定することができます。

これを基準接点の温度補償といいます。

熱電温度計の特徴

  • 構造が簡単で扱い易い。
  • 価格が比較的安い。
  • 金属線の材質のみによって特性が決まる。
  • 熱電対の種類によって、低温から高温まで広い範囲の温度測定が可能。

 

熱電温度計では熱電対の種類や特性によって、測定できる温度帯が変わってきます。

熱電対の種類

以下の表にJISに規定されている熱電対の種類を示します。

記号+脚-脚

素線径
[mm]

常用限度
(過熱使用限度)
[℃]

Bロジウム30%を含む
白金ロジウム合金
ロジウム6%を含む
白金ロジウム合金
0.501,500
(1,700)
Rロジウム13%を含む
白金ロジウム合金
白金0.501,400
(1,600)
Sロジウム10%を含む
白金ロジウム合金
白金0.501,400
(1,600)
Nニッケル、クロム及び
シリコンを主とした合金
ニッケル及び
シリコンを主とした合金
0.65~3.20850~1,200
(900~1,250)
Kニッケル及び
クロムを主とした合金
ニッケルを
主とした合金
0.65~3.20650~1,000
(850~1,200)
Eニッケル及び
クロムを主とした合金
銅及びニッケルを
主とした合金
0.65~3.20450~750
(500~800)
J銅及びニッケルを
主とした合金
0.65~3.20400~600
(500~750)
T銅及びニッケルを
主とした合金
0.32~1.60200~300
(250~350)

常用限度とは、空気中で連続使用できる温度の限度を意味します。

過熱使用限度とは、短時間であれば使用できる温度の限度を意味します。

よく使用されるのはT熱電対、K熱電対、R熱電対あたりでしょうか。

補償導線

補償導線は熱電対と基準接点の間を接続する導線です。

熱電対との接続部分(補償接点)と基準接点との温度差を補償する目的で使用されます。

そのため、常温を含むある程度の温度範囲において、使用する熱電対とほぼ同一の熱起電力特性を持つ必要があります。

 

補償導線に使用される線材(心材)は、JISで以下の2種類が規格化されています。

  • エクステンション型:熱電対と同じ材質を使用する
    • 補償性能は良いが高価である
  • コンペンセーション型:熱電対と異なる材質を使用する
    • 補償性能は前者より劣るが安価である

使用する温度範囲と熱電対の種類、価格と精度の兼ね合いでどちらの型を使用するか決めます。

保護管

熱電対を裸線のままで測定雰囲気にさらしていると、変質して寿命が短くなります。

そのため通常は熱電対を保護管に入れて使用します。

保護管に求められる主な性能を以下に示します。

  • 高温に耐える
  • 化学的に安定で雰囲気ガスに侵されない
  • 気密性があり雰囲気ガスを浸透させない
  • 必要な機械的強度を持つ
  • 熱電対に影響を与えるガスを発生させない

また、保護管は金属保護管と非金属保護管の2種類に分けられます。

以下に代表的な保護管の材質をまとめました。

材質常用
温度[℃]
最高使用
温度[℃]
特徴
金属
保護管
SUS304850950耐熱・耐酸・耐アルカリ性に優れる。
酸化・還元性ガスに弱い。
SUS316850950SUS304より高温における耐食性に優れる。
SUS310S1,0001,100Ni,Crの含有量が多く、耐熱性に優れる。
サンドビックP41,0501,20027Cr鋼で耐食性に優れるが、
酸化・還元性ガスに弱い。
カンタルA-11,1001,350Cr24%、Al 5.5%の耐熱鋼。
高温での機械的強度大。
ホワイト1,1001,250Ni80%、Cr20%。酸化雰囲気に強いが、
硫化・還元性ガスに弱い。
非金属
保護管
石英管QT1,0001,050急熱・急冷に強いが機械的強度は小さい。
酸に強く、アルカリに弱い。
磁器管PT21,4001,450アルミナ質。気密性が良い。
高アルミナ管PT11,5001,550気密性が良いが、急熱・急冷に弱い。
溶融アルミナ管PT01,6001,750高純度アルミナ管。
急熱・急冷に最も弱い。
炭化ケイ素管1,250
1,550
1,350
1,600
急熱・急冷に強いが、気密性が悪い。
二重保護管の外管に使用。
窒化ケイ素管1,4001,600炭化ケイ素管とほぼ同じ性質。
溶解アルミニウムに強い。

"エネルギー管理士試験講座 熱分野Ⅳ"より引用

まとめ

熱電温度計について解説しました。

熱電対は実験室から工場まで幅広い場所でよく使用されます。ちゃんと温度を測れるように、適切に扱いましょう。