概要
化学メーカーの実務担当者であるブログ管理人が普段参考にしている本の中でおすすめを紹介します。今回は物性推算です。
物性推算は化学工学のどのような計算においても重要である一方で、大学ではあまり力を入れて教育しない分野でもあります。
そのため、物性推算の参考書は蒸留などの単位操作と比較してあまり充実していない印象です。
また、物性推算の良書は出版年が古く、絶版になっていることが多いです。
大学であまり研究する人がおらず、新しく参考書を書く先生がいなくなっているのが要因の1つだと思います。
加えて汎用シミュレータの発展により、物性推算モデルを詳しく知らなくてもソフトが内部的に計算して処理してくれるようになったことも大きいでしょう。
しかしモデルを理解したうえでシミュレータを使用するのと、理解せずに使用するのとでは全然意味合いが違います。
特に気液平衡は蒸留塔や熱交換器の設計をするうえで理解しておくべきです。
今回紹介する参考書は特に気液平衡に関して詳細な内容が書いてあるものを中心に選定しました。
参考書紹介
今回ご紹介する参考書は定価で買えれば安いものが多いのですが、残念ながら絶版になっているものが多いです。
大学の図書館や職場に置いてあれば非常にラッキーだと思います。
1位:"設計者のための物性定数推算法"
出版社 | 日刊工業新聞社 |
出版年 | 1985年 |
著者 | 大江修造(著) |
ページ数 | 374 |
価格 | 絶版・中古のみ? |
物性推算・蒸留分野で有名な大江先生の著書です。
神本です。
このブログの物性系の記事の多くはこの本を参考にして書いています。
化学工学の物性推算で最も重要な気液平衡はもちろんのこと、密度、比熱、熱伝導度、粘度等様々な物性の推算方法について詳しく載っています。
しかしながら絶版になっているようで、ネットには中古で定価より高値で売られています。
足元を見られているようですが、それだけの価値はあります。
2位:"分離のための相平衡の理論と計算"
出版社 | 講談社 |
出版年 | 2012年 |
著者 | 大江修造(著) |
ページ数 | 229 |
価格 | 定価4,500円 |
1位に引き続き大江先生の著書です。2012年と最近に出版された本です。
化学工学系でここ10年以内に出版されている本は軒並み内容が簡単になり初学者向けとなっている中、この本は中級者以上向けで内容が充実しています。
気液平衡を中心とした物性推算モデルの解説が載っています。
ただ、ネットで調べると在庫がない店が多いようです。
さすがにまだ絶版にはなっていないと思いますが、欲しい人は見かけたらすぐ買うべきです。
3位:"気体、液体の物性推算ハンドブック"
出版社 | McGraw-Hill |
出版年 | 1985 |
著者 | 平田光穂(編) |
ページ数 | 684 |
価格 | 絶版・中古のみ? |
洋書の翻訳本です。
内容は1位の参考書と似ており、物性推算全般についてかなり充実しています。
ただ、個人的には1位の本の方がわかりやすかったので、3位としました。
1位の本と同様に中古でも数が少なくネットでは高い値段が付いているようです。
4位:"気液平衡データ集"
出版社 | 講談社 |
出版年 | 1988 |
著者 | 大江修造(編) |
ページ数 | 742 |
価格 | 絶版・中古のみ? |
大江先生の気液平衡データ集です。
基本的には各物質の気液平衡データが載っている本ですが、序章としてWilson式の詳しい解説があります。
個人的にはデータ集そのものよりも、Wilson式の解説ですごくお世話になりました。
これだけ詳しい解説は他の著書にはないと思います。
5位:"最近の化学工学65 物性推算とその応用"
版社 | 三恵社 |
出版年 | 2016 |
著者 | 化学工学会基礎物性部会(著) |
ページ数 | 258 |
価格 | 3,300円 |
2016年と割と最近に発売された参考書です。
最近の物性推算に関してマニアックな内容が載っています。ある程度物性推算の知識がある人で、最近の物性推算のトレンドを確認するのに買うのが良いでしょう。
初学者向けではないと思います。
まとめ
私が実務で使用している物性推算の参考書を紹介しました。特に1位、2位の参考書には大変お世話になっています。
どんな化学工学の計算でも物性は使用するため、重点的に勉強したい分野です。