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P&ID プラント設計

【P&ID】注意事項(NOTE)について解説

2024年1月29日

概要

P&ID(Piping and Instrumentation Diagram)は日本語で配管・計装系統図といい、この情報をもとに配管や機器のレイアウトが決定されます。

一方でプロセス上、配管や機器のレイアウトに何かしらの制約や要求事項が発生する場合があります。

この制約や要求事項をNOTE(注意事項)としてP&IDに記載する必要があります。

NOTEは見落とされがちですが、適切に指定されて設計されていないとトラブルや不具合が起こる可能性が高くなるため、非常に重要な項目です。

本記事ではP&IDのよくある注意事項例について紹介します。

注意事項

Gravity Flow

重力で流体を流す箇所に記載します。

下流側の配管高さが配管入口高さを超えないように設置する必要があります。

なお、途中の流路に液溜まり及びガス溜まりがあっても流体は流れますので、Pocketは許容されます。

No Pocket

"High Pocket"によるガス溜まりと"Low Pocket"による液溜まりの両方が生じないように配管設計する場合に記載します。

例えば凝縮水の回収ヘッダでpocketがあると振動や水撃の原因となるため、"No Pocket"の指定をすることがあります。

No Liquid Pocket

"Low Pocket"による液溜まりが生じないように配管設計する場合に記載します。逆に"High Pocket"は許容されます。

例えば酸性ガス配管で液溜まりが生じると腐食の原因となる可能性があるため、この指定をすることがあります。

No Vapor Pocket

"High Pocket"によるガス溜まりが生じないように配管設計する場合に記載します。逆に"Low Pocket"は許容されます。

例えばポンプの吸込配管はガス溜まりを生じると羽根に損傷を与える可能性があるため、"No Vapor Pocket"の配管設計をします。

ただ、配管設計の常識として、ポンプの吸込配管にはP&IDで特に指定しないことが多いです。

Slope

高所から低所へ、勾配を設ける配管形状とする場合に記載します。

水平配管部では指定した勾配を設けます。

液を低所方向へ流す必要があるため、垂直配管は許容されますが、液溜まりが発生する"Low Pocket"は許容されません。

Free Drain

"Low Pocket"がなく、ドレンが指定方向に流れる配管設計とする場合に記載します。

"Slope"と違って水平配管は許容されます。

例えばコンデンサーの液出口配管では、液溜まりを避けるために指定されることがあります。

In View

現場計器を見ながらバルブ等を操作する要求がある場合に記載します。

例えば液面計を見ながら容器内の液を排出する操作が挙げられ、液面計の近くにバルブを設置する必要があります。

Bottom Flat

配管の底部が平らな配管形状とする場合に記載し、レデューサーが必要なときは底部が平らな偏心レデューサーを使用します。

主に液溜まり対策で指定します。

Top Flat

配管の頂部が平らな配管形状とする場合に記載し、レデューサーが必要なときは頂部が平らな偏心レデューサーを使用します。

主にガス溜まり対策で指定します。

Straight Run

配管をまっすぐに設置したい場合に記載します。

例えば差圧式流量計で精度良く流量を測定するためには、ある程度まっすぐに流体を流す必要があり、"Straight Run"で長さを指定します。

Symmetrical

対称な配管形状とし、流体を均等に流したい場合に記載します。

例えば並列で機器を設置し、同流量を処理したいときに指定します。

P&ID上の見た目も対称となっていればわかりやすいですが、そうでないこともありますので"Symmetrical"のNOTEを見落とさないようにしましょう。

Minimum (Min.)

指定した区間の配管距離を可能な限り最短にしたい場合に記載します。

上図はバルブを垂直配管に可能な限り近づけて設置したい場合を想定し、"Minimum"を指定しています。

Minimum (Min.)+寸法指定

指定した区間に指定した長さ以上の距離を確保したい場合に記載します。

例えば流体が合流した後の流量や温度を測定するときは、上図のように十分な距離を取り均一に混合した後に計器を通過するのが望ましいです。

Maximum (Max.)+寸法指定

指定した区間を指定した長さ以内にしたい場合に記載します。

流体が液ヘッドで加圧されて凝縮しているラインでは、高低差が付き過ぎると蒸発して流体の性状が大きく変わってしまうため、高低差に制限を設けることがあります。

Easy Access

バルブ等を容易に操作可能な位置(地上部か階段で行けるプラットフォーム等)に設置したい場合に記載します。

緊急時に操作するバルブ等が該当します。

Top Connection

配管の上部に分岐配管を接続したい場合などに記載します。

例えば分岐配管への液の逆流を防ぎたいときは、上図のように上部から接続することが望ましいです。

High Point

バルブ等の配管要素を流路の高いところに設置したい場合に記載します。

例えば酸性ガスなどの凝縮すると腐食性のある流体を扱うときに、なるべくバルブの腐食を避けるため"High Point"に設置することが望ましいです。

Low Point

バルブ等の配管要素を流路の低いところに設置したい場合に記載します。

例えばドレンの取り出しノズル等に指定することがあります。

まとめ

P&IDの注意事項について解説しました。

注意事項の有無でプロセスの意味合いが変わることもありますので、きちんと確認しましょう。