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エネルギー管理士 資格

【課目Ⅳ:熱利用設備(熱交換器・熱回収装置)】エネルギー管理士(熱分野)の出題分野を解説

2022年7月25日

概要

この記事ではエネルギー管理士(熱分野)の出題分野である、熱利用設備(熱交換器・熱回収装置)について解説します。

熱利用設備(熱交換器・熱回収装置)は課目Ⅳ"熱利用設備及びその管理"の中で、選択問題として出題されています。

熱交換器は多くのプラントで使用されており、大部分の方に馴染みがあるのではと思います。

出題内容も比較的簡単なので、特に他の分野にこだわりがなければこの分野を選択することをオススメします。

以下で出題頻度が高かった内容を紹介しています。

熱交換器の種類

熱交換器を構造で分類すると、

  • 多管式熱交換器
  • 二重管式熱交換器
  • 単管式熱交換器
  • ヒートパイプ式熱交換器
  • 空冷式熱交換器
  • プレート式熱交換器
  • フィン付管形熱交換器
  • 蓄熱式熱交換器
  • 全熱交換器

などが挙げられます。

ここでは、特に出題されやすい多管式熱交換器について解説します。

多管式熱交換器

複数の伝熱管を円筒の胴内に配置する熱交換器を多管式熱交換器といいます。

伝熱管を束ねる円板を管板といい、管板の設置方法等により

  • 固定管板式:管板は胴の両端で固定。伝熱管は直管。
  • U字管式:管板は胴の片側のみ固定。伝熱管はU字管。
  • 遊動頭式:管板は胴の片側のみ固定。伝熱管は直管。

の主に3種類に大別されます。

固定管板式

"平成26年度 エネルギー管理士試験問題"より引用

固定管板式は最も構造が簡単な多管式熱交換器です。

伝熱管の両端が管板に固定されているので、熱膨張が大きい系には使用し難く、伸縮管継手を設置するなどの対策をする必要があります。

また、伝熱管内は清掃が容易ですが、胴側は物理的な清掃が困難で化学洗浄に頼らざるを得ません。

U字管板式

"平成26年度 エネルギー管理士試験問題"より引用

U字の伝熱管が使用されており、伝熱管の片側が管板に固定されている形式です。

片側はU字で固定されていないため、熱膨張によって熱応力が発生しません。

また、管板ごと管束を抜き出すことができるため、胴側の清掃や点検が容易です。

一方でU字管であるため、伝熱管内の物理的清掃は困難です。

遊動頭式

"平成26年度 エネルギー管理士試験問題"より引用

固定管板式と同じく伝熱管は直管を使用していますが、伝熱管の片側は管板に固定され、もう片側は胴内で指示されて自由に移動可能な構造となっています。

そのため、管束の抜き出しが可能で、胴側、管側ともに清掃や点検が容易です。

その一方で構造が複雑になり、他の2つの形式と比較して高価になります。

ヒートパイプ式熱交換器

両端を閉じた管中に作動流体が封入されていて、この流体の蒸発と凝縮により熱を移動させます。

凝縮液は管内のウィック(灯心)と呼ばれる毛細管膜で外部動力なしに蒸発側に戻す機構となっています。

冷却塔

冷却塔の冷却機構

冷却水は様々なプロセスの熱交換器で冷媒として使用されています。

プロセスから熱を受け取った冷却水は、冷却塔で大気に熱放出し元の温度に戻して再利用します。このような冷却塔を開放型冷却塔(クーリングタワー)といいます。

冷却塔では、冷却水の一部が塔内に通風されている空気中で蒸発し、その蒸発熱により冷却水が冷却されます。

そのため、冷却能力に大きく影響するのは外気の湿球温度であり、理論的には冷却水の下限温度は湿球温度と等しくなります。

冷却水の汚れ

蒸発の際、冷却水中に含まれる不純物は蒸発しないので、冷却水をそのまま循環利用し続けると水質が悪化して伝熱性能が悪くなります。

例えば冷却水に溶解している塩類等は循環利用により次第に濃縮していき、熱交換器の伝熱面に塩類が付着することで伝熱性能が悪化します。

そのため、冷却系の伝熱性能を維持するためには、冷却水の水質を適正に管理する必要があります。

水質管理項目としては、

  • 腐食防止:塩類の濃度など
  • スケール生成防止:pH、電気伝導度など

が挙げられ、冷却水を一部ブローする、防食剤・スケール防止剤を投入することにより管理値を順守します。

排熱回収の熱交換器

エコノマイザ

燃焼排ガスから給水に熱を回収する熱交換器をエコノマイザといいます。

エコノマイザでは給水の温度が低いと、水の入口に近い伝熱管の管壁温度が酸露点以下となることがあります。

このような状態となると排ガス中の水蒸気が伝熱面で凝縮し、その凝縮液中に排ガスの硫黄分が溶け込み硫酸となって腐食を起こします。

これを低温腐食といい、伝熱面を酸露点以上に保つ等の対策が必要となります。

レキュペレータ

燃焼排ガスからの熱回収によって、燃焼用の空気を予熱するための熱交換器をレキュペレータといい、

  • プレート式
  • 多管式
  • ヒートパイプ式

などが挙げられます。

熱交換器の伝熱計算

熱交換器の伝熱計算はほぼ毎年出題されています。

その一方で、計算は簡単なのでぜひともできるようにしておきましょう。

交換熱量計算

流体の流量、比熱、入口出口の温度から交換熱量Qを計算します。

$$Q=G_{h}C_{ph}(T_{h,in}-T_{h,out})・・・(1)$$

$$Q=G_{c}C_{pc}(T_{c,out}-T_{c,in})・・・(2)$$

Q:交換熱量[kW]、Gh、Gc:高温側、低温側の質量流量[kg/s]

Cph、Gpc:高温側、低温側の定圧比熱[kJ/(kg・K)]

Th,in、Tc,in:高温側、低温側の入口温度[℃]

Th,out、Tc,out:高温側、低温側の出口温度[℃]

(1)式が高温流量の式、(2)式が低温流体の式で、どちらの流体からでも交換熱量を求めることができます。

問題文で与えられている条件をよくみて、どちらの式が使えるか確認しましょう。

また、交換熱量を問題文や前問で与えて、入口や出口温度を逆算する問題もよく出題されています。

温度効率

高温流体の温度効率ηh、もしくは低温流体の温度効率ηcを計算する問題も同様に頻出です。

$$η_{h}=\frac{T_{h,in}-T_{h,out}}{T_{h,in}-T_{c,in}}・・・(3)$$

$$η_{c}=\frac{T_{c,out}-T_{c,in}}{T_{h,in}-T_{c,in}}・・・(4)$$

Th,in、Tc,in:高温側、低温側の入口温度[℃]

Th,out、Tc,out:高温側、低温側の出口温度[℃]

(3)、(4)式を覚えておけば計算できます。

エネルギー効率

エネルギー効率εは交換熱量計算や温度効率ほどの出題頻度ではありませんが、できれば合わせて覚えておきましょう。

$$ε=\frac{C_{h}(T_{h,in}-T_{h,out})}{C_{min}(T_{h,in}-T_{c,in})}=\frac{C_{c}(T_{c,out}-T_{c,in})}{C_{min}(T_{h,in}-T_{c,in})}・・・(5)$$

$$C_{h}=m_{h}C_{ph}・・・(6)$$

$$C_{c}=m_{c}C_{pc}・・・(7)$$

Ch:高温流体の熱容量[kW/K]、Cc:低温流体の熱容量[kW/K]

Cmin:高温流体、低温流体の熱容量のうち、小さい方の熱容量[kW/K]

mh:高温流体の質量流量[kg/s]、mc:低温流体の質量流量[kg/s]

Cph:高温流体の定圧比熱[kJ/(kg・K)]、Cpc:低温流体の定圧比熱[kJ/(kg・K)]

CminはChとCcを両方計算してみて、値が小さい方を採用します。

熱交換器の流体間の温度差

熱交換器は2流体の流れの方向によって、

  • 並流形
  • 向流形
  • 直交流形
  • 多重パス形

などに分類されます。

この中でも特に、並流形と向流形の熱交換器の流体の温度差について出題されやすいです。

並流形

高温側、低温側の流体が並流であるときの流体の温度差は、下図のような傾向となります。

流体の入口が同じ側にあるため、入口側が最も温度差ΔTが大きく、出口に近づくにつれ高温側と低温側の温度が近づくようなグラフとなります。

しかし、高温側と低温側の温度は決して一致することはなく漸近します。

したがって、並流形熱交換器では高温側流体を低温側流体の温度以下まで冷却することはできません。

向流形

高温側、低温側の流体が向流であるときの流体の温度差は、下図のような傾向となります。

向流形では高温側と低温側流体の入口が反対方向にあり、並流形よりも効率よく熱交換を行なうことができます。

うまく設計すれば、高温側流体を低温側流体の出口温度以下まで冷却することができます。

おわりに

エネルギー管理士(熱分野)課目Ⅳの熱利用設備(熱交換器・熱回収装置)の分野について解説しました。

課目Ⅱの伝熱工学の基礎と被っている箇所があるので、効率よく勉強しましょう。