概要
流量計は工場において最も重要な計測機器の1つです。
基本的に工場の装置は処理できる量に上限があるため、流量計で処理量を管理する必要があります。
その一方で、工場で扱う流量やプロセスは多種多様であるため、それぞれの運転条件に適した流量計を選定する必要があります。
本記事では流量計の種類や長所・短所などを解説しています。
流量計の種類
差圧式流量計
流路に挿入された絞り機構による圧力差から流量を知ることができます。上の画像はオリフィスですが、他にはノズル、ベンチュリ管があります。
長所
- 国際的に規格が整備されている
- 構造が簡単で安価
- 液体、気体、蒸気のいずれにも適用可
- 可動部がないので保守が容易
短所
- 差圧は流量の2乗に比例するため、実質的な流速測定範囲は狭くなる
- 特にオリフィスでは圧力損失が大きく、省エネルギー的には不利
- 固形物や気泡を多く含む流体には不適
- 脈動流には不適
- 絞り機構の前後に長い直管部が必要
差圧式流量計の詳細は以下の記事で解説しています。
【差圧式流量計】について解説:オリフィス・ノズル・ベンチュリー管
流量計の中で使用頻度の高いものの1つが差圧式流量計です。差圧式流量計は管路内に絞り機構を設けて、縮流により生じる差圧を測定して流量を求めます。構造が簡単で安価ですがエネルギー損失が大きいため、差圧式流量計を他の流量計に切り替える傾向もあります。
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面積式流量計
測定原理は差圧式流量計と同様で絞り機構の前後に生じる圧力差から流量を知ります。
ただし、面積式流量計では圧力差が一定となるように絞りの面積を変化させます。
長所
- 目視で目盛を読み取るタイプなら動力源が不要
- 他の流量計より安価
- 液体、気体、蒸気いずれにも適用可能
- オリフィス流量計と比較して圧力損失が小さい
- 直管長は通常不要
短所
- 測定精度があまり良くなく、通常はスパンの1.5~3.0%の誤差が生じる
- 固形物を含む流体には不適
面積式流量計の詳細は以下の記事で解説しています。
【面積式流量計】について解説:フロートで縮流部面積を調整
面積式流量計は差圧式流量計と原理は同じで、流路内に縮流部を設け、差圧を付けることで流量を測定します。ただ面積式流量計は差圧式流量計とは異なり、差圧が一定になるように絞りの面積及び流量を変化させます。簡易的に流量を測定できるため、工場はもちろんのこと実験室等でもよく使用されます。
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電磁式流量計
ファラデーの法則を利用しており、管内を液体が流れることによって生じる電圧から平均流速及び流量を算出します。
長所
- 液体の温度、圧力、密度、粘度の影響をほとんど受けることなく体積流量の測定ができる
- 液体の導電率が20μS/cm以上あれば、導電率の影響を受けない
- 測定精度が高く、誤差は指示値の0.5%程度である
- 圧力損失が生じない
- 測定可能な流量範囲が広い
- 可動部がなく、保守がほぼ不要
- 固形物、気泡を含む液体の体積流量を測定可能である
- 正逆流の測定が可能
短所
- 気体は測定できない
- 導電性がまったくない(5μS/cm以下)液体は測定できない
- 接液部がライニングであるため、高温流体の測定は困難
電磁式流量計の詳細は以下の記事で解説しています。
【電磁式流量計】について解説:電磁誘導による流量測定
電磁式流量計はファラデーの法則を利用しており、磁界を通過した流体によって生じる電圧から流速及び流量を算出します。原理的に流体の温度・圧力・密度・粘度の影響を受けることなく、体積流量を精度良く測定することができます。
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超音波式流量計
流体に超音波を伝播させ、周波数や伝播する時間から流速及び流量を算出します。
長所
- 圧力損失が生じない
- 管外から後付けで測定できる
- クランプオン形は持ち運びが可能
- 大口径管に適用可能で、その場合は他の流量計より相対的に安価
- 正逆流の測定が可能
短所
- クランプオン形の場合、管の材質等によっては測定できないことがある
- 本質的に流速計であるため、流速分布の影響を受ける
- 測定原理によって固形物や気泡が含まれる場合の測定可否が変わる
- 伝播速度差式:固形物や気泡が多く含まれると測定できない
- ドップラー式:固形物や気泡が液中にないと測定できない
超音波式流量計の詳細は以下の記事で解説しています。
【超音波式流量計】について解説:伝播速度差方式・ドップラー方式
超音波式流量計は超音波が流体の流速により伝播時間や周波数が変化することを利用して流量を測定します。配管の外側から取り付けて超音波を照射し配管内の流体流速を測定できるタイプ(クランプオン型)があるため、元から流量計が設置されていない配管の流量測定で重宝します。
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容積式流量計
流体を計器内の容積で測り取る形式の流量計です。特に積算流量の測定に向いていますが、流量計としても使用することができます。
長所
- 積算流量値が高精度で測定できる
- 高粘度流体の測定に適している
- 流量計前後の直管部が不要
- 外部エネルギーの供給なしで指示値が得られる
短所
- 流体中に固形物があると、回転子のすき間に挟まり支障をきたす
- 特に粘度の高い流体では圧力損失が大きい
- 粘度が小さい流体は回転子のすき間から漏れやすく、精度が悪くなる
- 大流量の測定では検出部が大きくなり、高価となる
渦式流量計
流路内に設置した柱によりカルマン渦を発生させ、その渦の周波数から流速及び流量を算出します。
長所
- 構造が簡単で比較的安価
- 可動部がなく保守が容易
- 測定誤差が指示値の1%程度で精度が良い
- 液体、気体、蒸気のいずれにも適用可
- 差圧式と比較して圧力損失が小さい
短所
- レイノルズ数が小さいと渦の発生が不安定になり測定できない
- 固形物や気泡を多く含む流体や、高粘度流体の測定には不適
タービン式流量計
流路内に設置したタービンの回転速度から流速及び流量を算出します。
長所
- 測定精度が良く、誤差は±0.5%程度である
- 高圧流体に適している
- 小型で大流量の測定が可能
短所
- 高粘度流体や固形物を含む流体には不適
- 回転部があるため、部品の定期的な交換が必要
コリオリ式流量計
U字管をある周波数で振動させておき、管内に流体を流したときに生じるねじれ角を検出することで質量流量を算出します。
長所
- 質量流量が直接測定できる
- 測定精度が高い
- 高粘度流体、固形物を含む流体、高圧流体、脈動流等幅広い流体に適用可能
- 流量計前後の直管部が不要
短所
- 一般的に高価である
各種流量計の比較
測定条件の比較
各種流量計の測定条件の比較を以下の表に示します。
流量計 | レンジ アビリティ | 測定 精度 | 主な 適用口径 | 必要 直管長 | 測定可能 温度 | 測定可能 圧力 |
差圧式 | 3~10:1 | ±2.0%FS | 15~ 3,000A | 上流10~62D 下流5~7D | -40~ 650℃ | ~42MPa |
面積式 | 5~12:1 | ±1.0~ 2.0%FS | 10~ 400A | 不要 | -200~ 450℃ | ~60MPa |
電磁式 | 50~300:1 | ±0.5~ 1.0%RD | 2.5~ 3,000A | 上流5D 下流3D | -10~ 180℃ | ~40MPa |
超音波 | 20~30:1 | ±1.0~ 1.5%FS | 6~ 7,000A | 上流10~15D 下流5D | 液体0~100℃ 気体-30~180℃ | ~2MPa |
容積式 | 10~20:1 | ±0.2~ 1.0%RD | 10~ 500A | 不要 | -30~ 300℃ | ~10MPa |
渦式 | 10~40:1 | ±1.0~ 3.0%RD | 15~ 300A | 上流10D 下流5D | -200~ 420℃ | ~4MPa |
タービン式 | 15~25:1 | ±0.2~ 0.5%RD | 6~ 600A | 上流15D 下流5D | -250~ 500℃ | ~10MPa |
コリオリ式 | 20~100:1 | ±0.3%RD | 10~ 150A | 不要 | -240~ 200℃ | ~40MPa |
※レンジアビリティとは一定の精度が保てる最大流量と最小流量の比を表わします。例えば5:1の場合、最小流量に対して最大流量は5倍大きく流せるという意味になります。
※FSはFull Scaleの略で、測定範囲に対する誤差を意味します。
※RDはReadingの略で、読取値に対する誤差を意味します。
適用流体の比較
各種流量計の適用流体の比較を以下の表に示します。
流量計 | 液体 | 気体 | 蒸気 | スラリー | 高粘度流体 | 脈動流体 |
差圧式 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ |
面積式 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ | 〇 |
電磁式 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | 〇 |
超音波 | 〇 | 〇 | 〇 | ×:伝播式 〇:ドップラー式 | 〇 | △ |
容積式 | 〇 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 |
渦式 | 〇 | 〇 | 〇 | × | △ | × |
タービン式 | 〇 | 〇 | △ | × | △ | △ |
コリオリ式 | 〇 | △ | × | △ | 〇 | 〇 |
〇:適用可、△:制約あり、×:適用不可
まとめ
流量計について解説しました。
流量計の選定が適切でないと物質収支が取れないため、プラントの運転が難しくなります。各種流量計の特徴を把握しておきましょう。