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化学工学 熱力学

【熱力学第一法則】を解説:熱と仕事のエネルギー保存則

2022年9月24日

概要

熱と仕事に着目したエネルギー保存則を熱力学第一法則といいます。

熱を利用する場合、その形態は大きく2つに分けることができます。

  • 物質の加熱など、熱そのものとして利用する。
  • 熱を仕事に変換し、動力として利用する。

熱が仕事に変換できることは、産業革命の蒸気機関の発明時には経験的に知られていました。

熱力学の第一法則は、熱と仕事が互いに変換可能であり、熱も仕事もエネルギーの一形態だということを示した法則です。

一般式

上図に示すように、ある系に熱量dQを加えることを考えます。

加えた熱量のうち、一部は温度上昇による内部エネルギーの増加dUに使用されます。

残りは外部への仕事dWとなります。したがって、

$$dQ=dU+dW・・・(1)$$

(1)式となります。

熱量dQを加える前を状態1、加えて平衡に達した後を状態2とすると、

$$\int_{1}^{2}dQ=\int_{1}^{2}dU+\int_{1}^{2}dW・・・(2)$$

(2)式となります。

ここで、内部エネルギーは状態量であるので、状態1から状態2への経路に依存せず、

$$\int_{1}^{2}dU=U_{2}-U_{1}=ΔU・・・(3)$$

(3)式のように表すことができます。

一方で、熱量や仕事は状態量ではないので、状態1から状態2への経路に依存するため、(3)式のように表すことはできません。

ここでは、熱量と仕事を、

$$\int_{1}^{2}dQ=Q_{12}・・・(4)$$

$$\int_{1}^{2}dW=W_{12}・・・(5)$$

Q12:状態1から状態2に変化するときの熱量

W12:状態1から状態2に変化するときの外部への仕事

(4)、(5)式のように表し、(3)、(4)、(5)式を(2)式に代入すると、

$$Q_{12}=ΔU+W_{12}・・・(6)$$

(6)式となります。(6)式が熱力学第一法則として一般的に知られている式です。

経路による熱量の違い

熱量や仕事は状態量ではなく、経路によって値が変化すると前述しました。

ここでは熱量を実際に計算し、経路によって本当に値が異なるのか確認してみましょう。

例として理想気体の状態変化について、状態1から状態3に変化するときの熱量を2種類の経路で算出します。

  • 経路①:等温変化(状態1→状態3)
  • 経路②:断熱変化(状態1→状態2)、定圧変化(状態2→状態3)

経路①、②のどちらも状態1から変化開始し、状態3で変化終了するところは同じです。

計算にあたって使用する物性値は窒素のものをベースとし、以下の条件が与えられているとします。

  • 気体の質量m:1kg
  • 気体定数R:8.314/28=0.297kJ/(kg・K)
  • 定圧比熱容量Cp:1.04kJ/(kg・K)
  • 比熱容量の比γ:1.4
  • 状態1:圧力200kPa、温度300K、体積10m3
  • 状態3:圧力100kPA、温度300K

経路①

経路①は等温変化で状態①から状態③へ変化します。

等温変化の場合、内部エネルギー変化ΔU=0となります。

したがって、(6)式は

$$Q_{経路①}=W_{経路①}=mRT_{3}{\rm{ln}}(\frac{V_{3}}{V_{1}})・・・(7)$$

(7)式となります。

ボイル・シャルルの法則から、等温変化なので、

$$P_{1}V_{1}=P_{3}V_{3}・・・(8)$$

$$V_{3}=20m^{3}$$

(8)式のように状態3の体積V3が計算できます。

求めたV3を(7)式に代入し、

$$Q_{経路①}=1×0.297×300×{\rm{ln}}(20/10)≒61.7kJ$$

経路①の熱量Qは61.7kJとなりました。

経路②

経路②はまず断熱変化で状態1から状態2に変化します。

断熱変化の場合、Q12=0となり、熱のやりとりはありません。

続いて、定圧変化で状態2から状態3に変化します。

定圧変化の場合、熱量Qは

$$Q_{23}=mc_{p}(T_{3}-T_{2})・・・(9)$$

(9)式で計算できます。

(9)式を使用するためには、状態2の温度T2を求める必要があります。

温度T2は状態1から状態2への断熱変化の式から算出します。

$$\frac{T_{2}}{T_{1}}=(\frac{P_{2}}{P_{1}})^{\frac{γ-1}{γ}}・・・(10)$$

(10)式を使用すると、T2=246Kとなりました。

あとはT2を(9)式に代入し、

$$Q_{23}=1×1.04×(300-246)≒56.1kJ・・・(11)$$

Q23=56.1kJとなりました。

したがって、経路②の熱量Qは、

$$Q_{経路②}=Q_{12}+Q_{23}=0+56.1=56.1kJ・・・(12)$$

(12)式から56.1kJとなります。

 

経路①と②を比較すると、

  • 経路①の熱量Q=61.7kJ
  • 経路②の熱量Q=56.1kJ

近い値にはなりましたが、完全には一致していませんね。

仮に熱量Qが状態量であれば、経路①と②の熱量が一致するはずです。

そのため、熱量Qは状態量ではない、ということが示せました。

おわりに

熱力学第一法則について解説しました。

熱や仕事を含めたエネルギー保存則で、特に熱機関を考えるうえでは重要な法則です。