概要
電磁式流量計はファラデーの法則を利用しており、磁界を通過した流体によって生じる電圧から流速及び流量を算出します。
原理的に流体の温度・圧力・密度・粘度の影響を受けることなく、体積流量を精度良く測定することができます。
一方で、導電性が全くない有機溶剤や気体は測定できません。
この記事では電磁式流量計の特徴を解説しています。
原理
フレミングの右手の法則
上図に電磁式流量計の主な構成を示します。励磁コイル、コア、電極、変換器等で構成されています。
流体が右側から左側に流れている状態で磁界を上から下向きに加えると、フレミングの右手の法則に従う向きに起電力が発生します。
この起電力を管側面の電極で取り出します。
また、起電力が短絡しないように測定管の内面をフッ素樹脂やゴム、セラミック等の絶縁物でライニング加工、あるいはモールド加工しておきます。
取り出した起電力は変換器で電圧を増幅しつつ、磁束密度で割算処理することで流量が求まります。
ファラデーの法則
ファラデーの法則から、起電力E[V]の大きさは(1)式で表されます。
$$E=kBDv・・・(1)$$
E:起電力[V]、k:検出器固有の定数[-]、B:磁束密度[T]
D:測定管内径[m]、v:平均流速[m/s]
また、体積流量Q[m3/s]は(2)式で表されます。
$$Q=\frac{π}{4}D^{2}v・・・(2)$$
(2)式で(1)式の流速vを消去すると、
$$Q=\frac{πD}{4kB}E・・・(3)$$
(3)式となります。
したがって、起電力Eは体積流量Qに比例することがわかります。
電磁式流量計の特徴
- 液体の温度、圧力、密度、粘度の影響をほとんど受けることなく体積流量の測定ができる。
- 液体の導電率が20μS/cm以上あれば、導電率の影響を受けない。
- レンジアビリティが大きく(50~300:1)、簡単にレンジ変更できる。
- 測定精度が高く、誤差は指示値の0.5%程度である。
- 圧力損失が生じないため、エネルギー損失がない。
- 検出器内で可動部がなく、保守がほぼ不要。
- 固形物や気泡を含む液体の体積流量が測定可能である。
- 腐食性流体の測定に適している。
- 正逆流の測定が可能である。
- 気体や導電性が全くない液体は測定できない。
- 接液部がライニングであるため、高温流体の測定は不向き。
電磁式流量計の選定
口径
電磁式流量計を取り付ける際の口径は、流速が0.3~10m/s程度となるように決定します。
より好ましくは以下の条件となります。
- 一般的な推奨流速:1~5m/s
- 流体に摩耗性がある場合:3m/s以下
- 流体が付着しやすい場合:3m/s以上
ライニング
測定管内面のライニングについて、各材質の特徴を以下の表に示します。
ライニング 材質 | 測定流体例 | 特徴 | 備考 |
PFA | 浸透性の強い流体 (フッ酸、塩酸、酢酸) 付着、固化し易い流体 腐食性流体 (電解液、苛性ソーダ、硫酸) その他一般流体 | ライニングの耐食及び 機械的強度大。 内面が平滑で 耐付着性に優れる。 | 適用温度は -10~160℃。 浸透に注意。 |
ポリウレ タンゴム | 上水、下水、工業用水 汚泥、海水など | 耐摩耗性に優れる。 土砂混じりの汚水に適する。 弱酸、弱アルカリに適する。 | 適用温度は 0~40℃。 有機溶剤を含む液 には不適。 |
セラミック | 硬質スラリー、腐食性流体 付着性流体、高温流体 高圧流体 | 耐摩耗性はウレタンゴムの 約10倍あり特に優れる。 高温・高圧でも変形しない。 | フッ酸、りん酸、 強アルカリには不適。 |
電極材質
電極材質の特徴を以下の表に示します。
電極材質 | 測定流体例 | 特徴 |
SUS316L | 上水、下水 | 海水、塩酸、硫酸、硝酸 水酸化ナトリウムには不適合。 |
ハステロイC | 酢酸、水酸化ナトリウム | 塩酸、硫酸、硝酸などに弱い。 |
タンタル | 海水、塩酸、硫酸、硝酸 酢酸、塩化第二銅、酢酸鉛 次亜塩素酸 | ほとんどの薬品に適合。 フッ化薬品は不適合。 |
チタン | 海水、酢酸 塩化ナトリウム | 塩酸、硫酸、硝酸に不適合。 |
白金-イリジウム | 海水、酢酸、水酸化ナトリウム 硫酸、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム | ほとんどの薬品に適合。 王水、次亜塩素酸、塩化銅、 シアン化塩には不適合。 |
タングステン カーバイド | 赤泥スラリー、鉱石スラリー 酸化鉄スラリー、高濃度パルプ | 摩耗性液体に適合。 スラリー流体に最適、腐食性 流体には不適合。 |
まとめ
電磁式流量計について解説しました。
測定可能な導電性流体に対しては、良い精度で流量を測定できます。