概要
ボイル・シャルルの法則は理想気体の圧力P、体積V、温度Tに関する法則です。
ボイルは実験的に、一定温度における気体の体積は圧力に反比例することを示しました。
$$PV=一定・・・(1)$$
(1)式の関係が成り立つことをボイルの法則といいます。
また、シャルルは圧力一定ならば、一定量の気体の体積は熱力学温度に比例して変化することを示しました。
$$\frac{V}{T}=一定・・・(2)$$
(2)式の関係が成り立つことをシャルルの法則といいます。
ここで、(1)、(2)式を使用して気体の圧力P、体積V、温度Tが変化する場合を考えます。
まず、温度T一定で圧力Pと体積Vが変化する場合を考えます。このとき、ボイルの法則(1)式から、
$$P_{1}V_{1}=P_{2}V'・・・(3)$$
(3)式が成り立ちます。
続いて、圧力P一定で体積Vと温度Tが変化する場合を考えます。このとき、シャルルの法則(2)式から、
$$\frac{V'}{T_{1}}=\frac{V_{2}}{T_{2}}・・・(4)$$
(4)式が成り立ちます。
(3)、(4)式からV'を消去して整理すると、
$$\frac{P_{1}V_{1}}{T_{1}}=\frac{P_{2}V_{2}}{T_{2}}・・・(5)$$
(5)式となります。
したがって、ボイルの法則とシャルルの法則を両方合わせると、(5)式のように気体の体積は圧力に反比例し、温度に比例することがわかります。
この(5)式の関係をボイル・シャルルの法則といいます。
また、この法則は冒頭でも述べたように理想気体で成り立つものなので、実在気体だと計算結果にずれが生じます。
とはいえ、常圧に近い圧力で空気や窒素のような会合性のない気体であれば、実在気体に適用しても実用上ほぼ問題ないと思います。
一方で10MPaを超えるような高圧系になる場合は計算のずれが大きくなるので注意しましょう。
実務上の使用例
ボイル・シャルルの法則は、実務では気体の体積、もしくは体積流量を算出する場合に使用することが多いです。
というのも、温度・圧力は機器の設計で決まることがほとんどだからです。温度・圧力・体積のうち、残った体積を逆算することになります。
機器出口の体積流量計算
熱交換器、反応器、燃焼炉の出口ガスの体積流量を簡易的に求める場合に、ボイル・シャルルの法則を使用します。
例えば熱交換器のガスクーラー、ガスヒーターだとガス組成に変化がないので計算しやすいですね。
仮に熱交換器の圧力損失が小さく無視できる場合に、体積流量1,000m3/hで25℃の気体を50℃まで昇温すると、出口の体積流量Voutは、
$$\frac{P_{in}・1000}{298.15}=\frac{P_{in}・V_{out}}{333.15}$$
$$V_{out}≒1117m^{3}/h$$
となります。
質量ベースで考えるなら熱交換器の入口出口の流量はもちろん同じなのですが、機器の仕様上、体積ベースの値を要求されることがあります。
その場合は上の例のように計算する必要があります。
あるいは、その温度での気体の密度がわかっているなら、密度と質量流量から体積流量を求める方が精度がよく確実ですね。
標準状態換算
ブロワーやコンプレッサー等の装置の仕様はNm3(ノルマルリューベ)で表記されることが多いです。
ノルマルリューベは標準状態(1atm、0℃)での体積を意味するため、実際に運転する温度・圧力での体積を求めたければボイル・シャルルの法則を使用して換算しましょう。
あるいは逆に、実運転条件での体積をNm3に換算することもよくあります。
例えば、40℃、0.2MPaG、100m3/hの気体をNm3/hに換算すると、
$$\frac{(200+101.3)・10^{3}・100}{313.15}=\frac{101.3・10^{3}・V_{N}}{273.15}$$
$$V_{N}≒259m^{3}/h$$
となります。
特に圧力が大きいときは、標準状態へ換算すると値が大きく変化するので、忘れずに変換しましょう。
おわりに
ボイル・シャルルの法則について解説しました。
高圧ガスやエネルギー管理士など、主要な資格試験でもよく使用する式なので覚えておきましょう。