概要
浮力と粘性力の比を表わす無次元数をグラスホフ数Grといいます。
$$Gr=\frac{gβ(T_{w}-T_{e})L^{3}}{ν^{2}}・・・(1)$$
Gr:グラスホフ数[-]、g:重力加速度[m/s2]、β:流体の体膨張係数[1/K]
Tw:壁面温度[K]、Te:バルク温度[K]、L:代表長さ[m]、ν:動粘度[m2/s]
グラスホフ数は(1)式で表されます。
自然対流においては、流体の温度差によって密度差が生じ、その密度差で生じる浮力が流体の流れの駆動力となります。
グラスホフ数が大きいほど浮力による対流の影響が大きいことを意味します。
実用上は、自然対流における熱伝達率hを算出するのにグラスホフ数がGrが使用されます。
ただ、自然対流による放熱損失は機器設計上無視する場合も多く、強制対流伝熱ほど計算する頻度は高くないイメージがあります。
無次元数の関係式
グラスホフ数は様々な無次元数と組み合わせて使用されます。
レイリー数Ra
グラスホフ数Grはプラントル数Prを乗じることでレイリー数Raという無次元数となります。
$$Ra=Gr・Pr・・・(2)$$
自然対流伝熱においては、レイリー数Raを閾値として表現することが多いです。
層流自然対流
垂直平板に沿う自然対流伝熱について、様々な式が発表されています。
例えば壁温一定条件下において(3)式が挙げられます。
$$Nu=0.478(Gr・Pr)^{1/4}(\frac{Pr}{0.861+Pr})^{1/4}・・・(3)$$
また、(3)式よりも簡易的な式として、(4)式が挙げられます。
$$Nu=0.59(Gr・Pr)^{1/4}・・・(4)$$
ただし(4)式は104<Gr・Pr<109の範囲において成り立ちます。
(3)、(4)式のグラスホフ数Gr、プラントル数Prからヌセルト数Nuを算出し、ヌセルト数に含まれる熱伝達率hを算出します。
乱流自然対流
一般にレイリー数Ra=Gr・Pr=108~109を超えると、層流自然対流から乱流自然対流へと遷移します。
垂直平板に沿う乱流自然対流については、例えば以下の(5)式が挙げられます。
$$Nu=0.0302Gr^{2/5}\frac{Pr^{7/15}}{(1+0.494Pr^{2/3})^{2/5}}・・・(5)$$
まとめ
グラスホフ数について解説しました。
強制対流における流れの特性はレイノルズ数が表しますが、自然対流における流れの特性はグラスホフ数が表します。