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化学工学 蒸留

【蒸留】を操作方法ごとに解説:プラントの代表的な分離操作

2021年1月25日

概要

沸点差を利用して混合物を分離・濃縮する操作のことを蒸留といいます。

化学プラントや石油プラントで最もよく使用されている分離方法です。

工場と言えば、下の写真のような細長い装置を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
大きいものでは40~50mくらいの高さに達します。

 "Random Packings and Packed Towers Design and Applications"より引用

この細長い装置が蒸留塔であり、塔内で蒸留操作をしています。

化学プラントで蒸留がよく行われている理由は、化学反応にあります。

工業規模で行なわれている化学反応は、どんなに単純な反応でも100%進行させることは難しく、未反応の原料や副生物が製品に混じってしまいます。

製品は普通、規格として高い純度が求められますから、反応後の混合物から不純物を分離する必要があります。

分離できれば方法は何でもよいのですが、数ある分離方法の中でも原理が明確で技術的に確立されている方法が、沸点差を利用する蒸留分離です。

蒸留の種類

蒸留は操作方法によっていくつかの種類に分けられます。

単蒸留

還流をかけない蒸留のことを単蒸留といいます。

単蒸留の中でも、回分式と連続式に分かれます。

回分式

ウイスキーや焼酎などの蒸留酒は回分式単蒸留で製造しています。

蒸留させる液を最初に全て釜に仕込み、加熱して蒸発させるだけです。

気液平衡1回分の濃縮効果しかないため、低沸点成分の濃度はそこまで増加しません。

ラボ実験等では単蒸留で行なわれることもあります。

工業規模における製品は100%に近い純度が求められますので、単蒸留を使用することはほとんどありません。

連続式

連続式単蒸留のことを一般にフラッシュ蒸留と呼びます。

フィード液を連続的にドラムにフィードしますが、ドラムの手前に減圧弁を付けておき、液を減圧します。

Pxy線図の記事で述べましたが、圧力が下がると液は蒸発しやすくなります。
減圧弁で液が部分的に蒸発するような圧力まで減圧します。

減圧した液はドラムにフィードされ、瞬間的に気液平衡に達し、気体と液体に分離します。

その後、分離した気液はそれぞれドラムの上と下から抜き出します。

精留

還流をかける蒸留のことを精留といいます。

精留の中でも、回分式と連続式に分かれます。

回分式

蒸留させる液を入れた釜の上に、蒸留塔を設置します。

釜から蒸発した気体は、還流をかけて戻ってきた液と接触して新たな気液平衡状態を作ることができるので、単蒸留よりも濃縮効果が高いです。

蒸留塔の能力を十分なものにすれば製品純度を100%近くまで上げることも可能です。

ただし、回分式であるため処理量はそれほど多く出来ません。
少量多品種の製品に向いている方法です。

連続式

一般的にイメージされる蒸留塔は、この連続精留であることが多いです。

連続精留を行なう蒸留塔のことを特別に精留塔と呼びます。しかし、実務では精留塔だろうと普通に蒸留塔と呼ぶことが多いです。

精留塔は連続的に原料をフィードし、なおかつ還流をかけることで、製品を高い純度で連続的に取り出すことができます。

そのため、生産量が多いプラントでは精留塔を使用します。

また、精留塔は大きく2種類に分けられます。

棚段塔・・・トレイ上に液を保持して気液接触させる
充填塔・・・表面積の大きい充填物表面に液を纏わせて気液接触させる


蒸留において古くは棚段塔が主に使用されていましたが、最近では性能の良い充填物が開発され、充填塔も蒸留塔で使用されています。