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化学工学 吸収・放散

【移動単位数(NTU)】の計算方法を解説:吸収塔の塔高計算に使用

2020年12月14日

概要

移動単位数(NTU)とは吸収塔内での吸収操作の難しさを表わす無次元量です。

吸収効率が大きい(要求されるスペックが厳しい)、または吸収の推進力が小さいほどNTUは大きくなります。つまり、吸収が難しいほど値が大きくなります。

NTUは吸収塔の塔高計算をする際に必要なパラメータであり、本記事ではNTUの計算方法について紹介します。

NTUは通常、積分することによって求めますが、条件によっては計算が簡単になることがありますので、代表的な例について場合分けして紹介します。

NTUの計算方法

充填塔の塔高計算の記事で紹介していますが、NTUは4つの式で算出できます。

【吸収塔】充填塔型吸収塔の塔高計算を解説

吸収塔で最もよく使用される充填塔の塔高計算について紹介します。充填塔の充填高さは、移動単位数(NTU)と移動単位高さ(HTU)の積で表されます。

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ここでは例としてNOGについて考えます。

操作線、平衡線が曲線の場合

NOGは(1)式で表されます。

N_{OG}=\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{A}^{*})}・・・(1)

まず、積分項のyA-yA*について考えてみます。

yA-yA*は上の図において、xAT~xABの範囲内での任意のxAにおける操作線と平衡線のyAの差が
yA-yA*となります。

したがって、(1)式の1/(yA-yA*)の積分は、操作線の式と平衡線の式がわかれば計算できます。

操作線の式

操作線の式は一般に、

G(\frac{y_{A}}{1-y_{A}}-\frac{y_{AT}}{1-y_{AT}})=L(\frac{x_{A}}{1-x_{A}}-\frac{x_{AT}}{1-x_{AT}})・・・(2)

(2)式で表されます。
上図のように縦軸yA、横軸xAとしてプロットすると曲線となります。

平衡線の式

平衡線の式は一般にHenryの法則から、

y_{A}^{*}=mx_{A}・・・(3)

(3)式で表されます。
(3)式だと一見すると、直線に見えます。

しかし、ガス吸収によって激しく発熱するような系では、塔頂から塔底の間で温度分布が付くため、Henry定数mが温度依存により変化します。
この効果により(3)式は傾きmが変化するため曲線となります。

(2)、(3)式から1/(yA-yA*)を算出し、解析的に積分できる場合は積分してNOGを求めます。

積分できない場合は、微小区間に細かく分割して1/(yA-yA*)を算出し、全ての区間を足し合わせる(図積分する)ことでNOGを求めることができます。

しかし実際は操作線、平衡線が両方曲線のケースは限られると思います。
吸収塔の用途として多いのが排ガス処理ですが、吸収させる排ガス濃度はそれほど高くないことが多く、たいていは直線近似できます。

操作線、平衡線が直線とみなせる場合

操作線の式

ガス吸収量が比較的小さい場合は、(2)式において

\frac{y_{A}}{1-y_{A}}≒y_{A}

\frac{y_{AT}}{1-y_{AT}}≒y_{AT}

\frac{x_{A}}{1-x_{A}}≒x_{A}

\frac{x_{AT}}{1-x_{AT}}≒x_{AT}

上の4式のように近似して簡略化できます。
結果、(2)式は(4)式のような形となり直線となります。

G(y_{A}-y_{AT})=L(x_{A}-x_{AT})

y_{A}=\frac{L}{G}(x_{A}-x_{AT})+y_{AT}・・・(4)

平衡線の式

ガスの吸収量が少ない場合は、塔内の温度は一定としてもよいです。
その場合には、(3)式のHenry定数mは一定値となり、直線となります。

y_{A}^{*}=mx_{A}・・・(3)

このように操作線、平衡線が直線とみなせる場合は、(1)の積分式を簡略化することができます。
ここでは導出は省きますが、

N_{OG}=\frac{y_{AB}-y_{AT}}{Δy_{lm}}=\frac{y_{AB}-y_{AT}}{\frac{(y_{AB}-y_{AB}^{*})-(y_{AT}-y_{AT}^{*})}{{\rm{ln}}\frac{y_{AB}-y_{AB}^{*}}{y_{AT}-y_{AT}^{*}}}}・・・(5)

(5)式となり、NOGを求めることができます。

液流量が大きく分圧がある場合

液流量を増やしていくと、(4)式の直線の傾きであるL/Gが増大します。

液流量が十分に大きい場合は、上図に示すように操作線は垂直な線になります。
このとき、yA*はyの値によらず一定値を示しますから、yA*はyの関数ではなくなることがわかります。

したがって(1)式を簡単に積分できるようになります。

N_{OG}=\int_{y_{AT}}^{y_{AB}}\frac{dy_{A}}{(y_{A}-y_{A}^{*})}=[{\rm{ln}}(y_{A}-y_{A}^{*})]^{y_{AB}}_{y_{AT}}\\ ={\rm{ln}}\frac{y_{AB}-y_{A}^{*}}{y_{AT}-y_{A}^{*}}・・・(6)

積分すると(6)式となり、NOGを簡単に求めることができます。

ちなみに、液流量を増大させる場合は、吸収水をワンパスで流してしまうのは効率が良くないので、塔底液を塔頂へ循環させて液量を増やすのが効率が良いです。

液流量が大きく分圧がゼロの場合

溶解度が高く、瞬時にガスが液に溶ける場合は平衡分圧がゼロに近くなります。
この場合はyA*≒0となりますから、(6)式に代入すれば、

N_{OG}={\rm{ln}}\frac{y_{AB}}{y_{AT}}・・・(7)

(7)式となり、より簡単にNOGを算出することができます。

計算例

操作線、平衡線が直線とみなせる場合について、図積分による方法と(5)式を使用する方法でNOGを算出してみます。

上図のような吸収塔で、濃度1500ppmの成分Aを25℃の水で90%吸収除去するときのNOGを計算します。
ただし、L/G=40.3、Henry定数m=33とします。

成分A濃度1500ppmを90%除去しますから、塔頂の出口A濃度yATは残り10%の150ppmになります。

また、A濃度は微小なので操作線は(4)式を使用します。

y_{A}=\frac{L}{G}(x_{A}-x_{AT})+y_{AT}・・・(4)

(4)式を使用して、塔底での液中A濃度xABを算出します。

1500=40.3(x_{AB}-0)+150

x_{AB}≒33.5ppm

また、(3)式のHenry定数の式から、

y_{A}^{*}=33x_{A}・・・(3)

(3)、(4)式から1/(yA-yA*)は、

y_{A}-y_{A}^{*}=40.3(x_{A}-0)+150-33x_{A}=7.3x_{A}+150

\frac{1}{y_{A}-y_{A}^{*}}=\frac{1}{7.3x_{A}+150}・・・(8)

(8)式となります。
ここで、1/(yA-yA*)をyAについてyAT~yABの間で図積分します。

図で表すと上のようになります。

ただし、(8)式はxAについての関数になっているので、dyAをdxAの式に置き換える必要があります。
(4)式を微分することでdyとdxの関係式を求めると(10)式となります。

dy_{A}=40.3dx_{A}・・・(10)

1区間当たりの長方形の横の長さはdyA、縦の長さは1/(yA-yA*)となります。

仮にxAの刻みを1として、縦軸1/(yA-yA*)はエクセル等で各区間の値を算出し、全ての区間を足し合わせると、

N_{OG}≒0.136×40.3×1≒5.47

となり、NOGを算出できました。
積分の刻みをもっと細かくすれば精度が良くなります。

続いて、(5)式を使用してNOGを算出します。

算出にあたっては平衡値yAB*、yAT*を(3)式で算出します。

y_{AB}^{*}=33×33.5≒1106ppm

y_{AT}^{*}=33×0=0ppm

したがって、(5)式から、

N_{OG}=\frac{y_{AB}-y_{AT}}{\frac{(y_{AB}-y_{AB}^{*})-(y_{AT}-y_{AT}^{*})}{{\rm{ln}}\frac{y_{AB}-y_{AB}^{*}}{y_{AT}-y_{AT}^{*}}}} =\frac{1500-150}{\frac{(1500-1106)-(150-0)}{{\rm{ln}}(\frac{1500-1106}{150-0})}}≒5.34

図積分で求めた値と近くなりましたね。
一般には(5)式を使用して求める方が簡単なので、簡略式を使用できる場合はそちらを使いましょう。

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