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化学工学 無次元数

【レイノルズ数】について解説:流れの無次元数

2021年7月1日

概要

流れの状態を表わす無次元数をレイノルズ数Reといいます。

$$Re=\frac{ρud}{μ}=\frac{ud}{ν}・・・(1)$$

Re:レイノルズ数[-]、ρ:流体密度[kg/m3]、u:流体の代表流速[m/s]
d:代表長さ[m]、μ:流体粘度[Pa・s]、ν:動粘度[m2/s]

(1)式の分子が慣性力、分母が粘性力を表わし、レイノルズ数が大きいほど慣性力が強く流れが速く激しいことを意味します。

また、流体の流れは、大きく分けて層流と乱流の2つの状態があります。

レイノルズ数の計算を行ない値を知ることで、その流れが層流か乱流かを判別することができます。

具体的な層流・乱流の値の閾値は代表流速uや代表長さdをどう定義するかによって変わります。

例えば、最も有名なものは配管内流れのレイノルズ数です。

配管内の断面平均流速を代表速度u、配管直径(内径)を代表長さdとして計算します。

層流:Re<2300
遷移域:2300<Re<4000
乱流:4000<Re

配管内流れのレイノルズ数の層流・乱流閾値は上の値が目安です。

層流から乱流にすぐ切り替わるわけではなく、両方の特性が混ざった遷移域と呼ばれる不安定な状態が間にあります。

また、撹拌翼による流れを表わす撹拌レイノルズ数というものも存在します。

撹拌流れの無次元数【撹拌レイノルズ数(撹拌Re)】を解説

流れの乱れ具合を表わすレイノルズ数を撹拌に当てはめた指標で、無次元数です。撹拌レイノルズ数は値によって層流、遷移域、乱流のどの状態であるかを判別できます。

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撹拌レイノルズ数の閾値は以下のようになります。

層流:Re≦50
遷移域:50<Re<1000
乱流:1000≦Re

代表速度や代表長さが異なれば層流・乱流の閾値が異なるため、混同しないようにしましょう。

実装置内の流れとレイノルズ数

どの装置にも共通するのが、レイノルズ数は乱流領域になるよう設計した方が良いということです。

乱流のメリットとして、

・流体濃度が均一に近くなる。
・境膜伝熱係数が大きくなり、伝熱効率が良くなる。

以上のような点が挙げられます。

化学プラントで扱う流体は、お互い混ざり合うような均一層ではなく、液液分離するものや固体粒子が混じっている場合もあります。

そのような流体は乱流条件の方が扱いやすいということです。

配管内流れ

"機械工学便覧 基礎編α4 流体工学"より引用

上図に配管の圧力損失を計算するときに必要な摩擦係数λを読み取るムーディ線図を示します。

この図から通常、配管内流れで想定されているレイノルズ数Reは102~107程度であることがわかります。

しかし、よほど粘度の高い流体でない限りは乱流条件で設計するのが望ましいです。
一般的にはRe=104~106程度の値で設計することが多いでしょう。

熱交換器内流れ

熱交換器での伝熱は内部を流れる流体の速度に依存し、流速が速いほど伝熱効率も良くなります。

加えて装置内の流速が遅いと汚れの付着の原因にもなりますから、一般には乱流条件で設計されます。

ただし、よく使用されるシェルアンドチューブ型の熱交換器の場合、流速を速くし過ぎるとチューブの振動や液滴衝突エロージョンによる摩耗が発生する可能性があります。

そのため、流速の上限や閾値が存在し、むやみやたらと流速を上げることはできません。

最近では熱交換器設計用の汎用ソフトで伝熱計算とチューブの振動を両方確認できるため便利になりました。

攪拌槽内流れ

基本的に撹拌レイノルズ数が乱流になるよう設計するのが望ましいです。

注意点としては、ラボから実機へとスケールアップする場合です。

ラボのような小さいスケールだと実機サイズと比較して撹拌レイノルズ数が小さくなる傾向にあります。

ラボでの撹拌条件を意識せずに撹拌翼の回転数を設定してしまうと、ラボの撹拌レイノルズ数は層流で、実機では乱流になってしまうということが起こります。

層流から乱流へと流れの状態が変わってしまうということは、撹拌槽で反応させている製品のスペックも変わりえるということです。

特に撹拌翼の機械的なせん断に依存しやすい重合系や晶析系では、撹拌条件が製品品質に影響を与えやすいことが知られています。

したがって、後々実機へとスケールアップすることを考えるならば、ラボ実験の段階から乱流になるよう撹拌条件を設定するのが望ましいです。

まとめ

レイノルズ数の定義と各装置での考えについてまとめました。

不自然に装置が汚れたり、伝熱性能が出ていないときは装置内の流速低下が疑われるため、レイノルズ数を計算して確認してみましょう。