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化学工学 撹拌

【Pv値(単位体積当たりの撹拌所要動力)】を解説:撹拌槽のスケールアップ指標

2020年9月23日

概要

単位体積(液量)当たりの撹拌所要動力をPV値といいます。PV[kW/m3]は以下の式で表されます。

$$P_{V}=\frac{P}{V}$$

P:撹拌所要動力[kW]、V:液量[m3]

PVは撹拌槽内の液に十分な動力がかかっているかを判断する指標としてよく使用されます。
単に撹拌所要動力Pだけで評価すると、撹拌槽や撹拌翼が大きいほど値が高くなってしまい、動力が過不足かどうかの判定ができません。

そのため撹拌槽内の液量で割ることでスケールの影響を排除しています。

Pvの目安

以下に撹拌物ごとのPVの目安を示します。(あくまで目安なのでこの範囲に当てはまらない場合もあります。)

粘度によるPv値

低粘度液 0.1≦PV≦1.0
高粘度液 1.0≦PV≦5.0


撹拌動力をそれほど必要としない低粘度液はPVを1.0以下で設計することが多いです。

PVが0.1以下だと撹拌動力が低すぎて混合性能が悪いので撹拌反応槽では採用されにくいです。均一混合を必要としない撹拌槽ではあり得るかもしれません。

逆にPVを1.0以上で運転しても所要動力がかかる割に混合性能はあまり変化しないのでオススメしません。

高粘度撹拌では撹拌所要動力が大きくなるためPVも高くなります。
PVが5.0を超えてくると一般的にイメージされる液体の撹拌ではなく、水飴のような固体に近い性状の液を混ぜるようになります。

もはやその領域では撹拌槽を使用するより混錬機(ニーダー)を使用した方がよいかもしれません。
撹拌槽ではあまりにも粘度が高すぎる液体は混ぜにくい、という意味合いでPVを5.0までで区切りました。

撹拌の種類によるPv値

液液撹拌 0.1≦PV≦2.0
固液撹拌 0.5≦PV≦2.0
気液撹拌 1.0≦PV≦5.0


いずれの撹拌も液は低粘度であることが前提の値です。
撹拌の常として密度差があるものを均一に混ぜるのはとても難しく、動力が必要となります。

液液撹拌は比較的均一混合しやすい系ですが、水と油のような相分離する2液を混ぜる場合はPVが1.0~2.0くらいまでかかることもあります。なおかつ完全に均一分散させることは難しいです。

固液撹拌は固体粒子の比重によります。
液体の密度に近ければPVは低くて済みます。ポリマー粒子などは液の比重に近いことが多いのでそれほど動力はいりません。

一方で金属などの重い粒子は持ち上げるのにエネルギーがいるのでPVが高くなる傾向にあります。
かといってあまりにPVを高くし過ぎると金属粒子が撹拌翼や槽壁にぶつかることで摩耗が生じやすくなりますので注意が必要です。

気液撹拌は混相系の中では最も難しい撹拌です。
固液撹拌では密度差はせいぜい数倍ですが、気液撹拌では1000倍くらいあります。
あっという間にガスが上へ抜けていってしまうので、液中に少しでもガスを留めるために激しく撹拌する必要があります。

また、どのくらいのPVとするかはプロセスによるところもあります。
ガスをワンパスで液に吸収させないといけない場合はPVを高めに設定する必要がありますが、槽上部から出たガスを一部リサイクルしてフィードラインに戻す場合はそれほど必死に混ぜる必要がありません。

Pv一定のスケールアップ

Pvはスケールアップ(ダウン)の検討においてもよく基準とされます。

Pv=一定でスケールアップすることで単位液量当たりに加えるエネルギーを一定にすることができ、スケールアップ後も同じような混合性能を得やすくなります。

特に、

  • Pv=一定
  • 撹拌槽・撹拌翼形状が相似
  • バッフル有りの乱流場

の3条件を満たしたスケールアップはスケールアップ前と同等の混合性能を得られることで知られています。

ちなみに、撹拌槽のスケールアップ指標は以下の記事で解説しています。

撹拌槽のスケールアップ指標について解説

ラボスケールで開発してきた製品を量産化するために、反応器・反応槽を実機スケールへとスケールアップするのは化学工学エンジニアの代表的な仕事の1つと言えるでしょう。本記事では撹拌槽のスケールアップ指標についていくつかまとめました。

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おわりに

単位体積当たりの撹拌所要動力PV値についてまとめました。

撹拌槽設計の基本となる指標ですのでぜひ覚えておきましょう。