本記事では、化学メーカーのボーナス(年間一時金)と業績の関係について紹介します。
化学メーカー19社の調査
弊社の組合は、同業他社の水準をベースに賃上げ交渉するのが基本となっています。
しかし、ボーナスに限っては会社の業績依存度が大きいのです。
おそらくは、各社で定められた業績連動の算定式で決定されているのでしょう。
ただ、業績と言っても売上や営業利益、経常利益等、基準は様々ありますよね。
この記事では化学メーカー19社の年間一時金額と各業績を比較し、どのような基準に相関があるのか調査しました。
調査条件は以下の通りです。
・2018~2020年度の3年間のデータをプロットしました。
・3年間全ての年で19社のデータがあるわけではありません。年によってはデータが欠けています。
・化学メーカー19社は売上高1,000億~3兆円の範囲に入っている会社を対象としています。
申し訳ありませんが、会社名は伏せます。
・年間一時金は組合員平均の値を使用しています。実際の額は組合員の中でも階級によって違いますし、管理職以上の一時金は考慮されていません。
・年間一時金は夏・冬のボーナス2回分の合計額です。ボーナス1回分の金額は半分に割った値です。
売上高 VS 年間一時金
縦軸に年間一時金、横軸に売上高を取っています。
グラフの1番の特徴として、売上高と年間一時金にはほとんど相関がないことがわかります。
売上高が1兆円を超える会社はもうちょっと一時金が多くても良さそうなものですが、ほとんど横ばいです。
むしろ売上高5,000億~1兆円の会社の方が、年間一時金が多いケースがあるようです。
おそらくは売り上げに対して営業利益や経常利益が高いのでしょう。
これらのことから、会社の売上高や規模だけでは給料が高いと判断できないことがわかります。
営業利益 VS 年間一時金
縦軸に年間一時金、横軸に営業利益を取っています。
バラつきはあるものの、営業利益が大きいほど年間一時金が増加する傾向にあるようです。
一部タイプミスのようなプロットがありますが、これはミスではありません。
同業者の間では有名ですが、実際にプロットのような凄まじい営業利益を出す会社があるのです。
傾向をわかりやすくするために、営業利益2,000億円までを拡大したグラフを載せました。
傾きは小さいですが、やはり単調増加に近い相関があるようです。
また、多くの化学メーカーの年間一時金は150万~200万円の間にあるようです。化学メーカーで組合平均値が200万円以上あれば、業界の中では高水準と言えるでしょう。
経常利益 VS 年間一時金
縦軸に年間一時金、横軸に経常利益を取っています。
化学メーカー全体の傾向として、営業利益と経常利益がほとんど変わらず、一時金の相関も変わりません。
営業利益は本業のみの利益、経常利益は本業利益と株などの副業利益を足した値です。
よって営業利益と経常利益がほとんど変わらないということは、化学業界は副業をほとんどやらず、本業で真面目にコツコツ稼いでいるということです。
同様に経常利益2,000億円までを拡大したグラフを載せました。
ゆるやかな単調増加傾向にありますね。
純利益 VS 年間一時金
縦軸に年間一時金、横軸に純利益を取っています。
全体の傾向としては営業利益、経常利益と変わらず、純利益が大きいほど年間一時金が増加する傾向にあるようです。
同様に純利益1,500億円までを拡大したグラフを載せました。
ゆるやかな単調増加傾向があるのがわかります。
また、2018~2020年度はそこまで年度による差異がないように見えます。
2020年度の業績は見込み値を使用しているため正確な値ではありませんが、他の業界ほど化学業界は新型コロナによるダメージを受けていないように思えます。
ただし、2021年度は新型コロナの影響で各社年間一時金が減少すると予想されます。
どのくらいの下げ幅かで各社の底力が見えてきそうですね。
営業利益率 VS 年間一時金
縦軸に年間一時金、横軸に営業利益率を取っています。
化学メーカーの利益率はおおよそ5%~30%の間に収まります。
営業利益率が15%くらいまではゆるやかな単調増加の傾向にあるようです。
しかし、15%を超えるとそれ以上は年間一時金の額は増加せず、ほぼ横ばいとなっています。
要するに、営業利益が高すぎる会社に入っても、年間一時金の額は他社と変わらないと言えそうです。
まとめ
・売上高と年間一時金には相関関係がありません。
・営業利益、経常利益、純利益、営業利益率と年間一時金はゆるい単調増加の傾向にあります。
・今回調査した化学メーカー19社の年間一時金はおおよそ150万~200万の間にあります。
・業界水準と比べて極端に業績が良い会社に入っても、その業績が年間一時金に反映されていません。