概要
流れの乱れ具合を表わすレイノルズ数を撹拌に当てはめた指標で、無次元数です。
撹拌レイノルズ数Reは(1)式で表されます。
$$Re=\frac{ρnd^{2}}{μ}・・・(1)$$
ρ:液密度[kg/m3]、n:回転数[1/s]、d:翼径[m]、μ:液粘度[Pa・s]
撹拌レイノルズ数は値によって層流、遷移域、乱流のどの状態であるかを判別できます。
目安として
層流:Re≦50
遷移域:50<Re<1000
乱流:1000≦Re
に分けられます。
工業的には混合の良い乱流域で設計するのが望ましいです。
層流は装置内に流れのよどみを生じやすく、濃度分布、温度分布の原因となります。
装置の汚れや腐食もこのような滞留部で発生することが多いです。
撹拌Reの使用例
撹拌Reは他の無次元数と組み合わせて使用されることがよくあります。
ここではいくつか例を示します。
動力数Npの算出
縦軸に動力数Np、横軸に撹拌Reを取ったグラフを上に示します。
一般的に知られている撹拌翼はこのような特徴的な曲線となります。
この曲線をNp-Re曲線といいます。
撹拌Reが小さい層流域ではNpは撹拌Reに逆比例します。
撹拌REが大きい乱流域では邪魔板(バッフル)の有無によってNpの値が変化します。
邪魔板がある場合はNpの値は乱流域で一定値を示します。
邪魔板がない場合は撹拌Reが増加するとNpは少しずつ減少する傾向となります。
実務では撹拌Reを計算し、Np-Re曲線のグラフから動力数Npを読み取るか、もしくはこの曲線が定式化されていればその式に撹拌Reの値を代入してNpを求めます。
ヌセルト数Nuの算出
撹拌槽の伝熱能力を知るためには境膜伝熱係数h及びヌセルト数Nuを計算する必要があります。
熱交換器の伝熱計算ではNuをReとプラントル数Prの相関式から算出することで有名ですが、撹拌槽でも同様にNuは撹拌ReとPrの相関式として表されます。
$$Nu=CRe^{a}Pr^{b}(\frac{μ}{μ_{w}})^c$$
a,b,c:係数、μ:バルク流体の粘度[Pa・s]、μw:壁面近傍での液粘度[Pa・s]
撹拌ReとPrからNuを算出し、Nuから境膜伝熱係数hを算出します。