CFD 論文紹介 撹拌槽

【論文紹介】非ニュートン流体の撹拌時に生じるカバーンの調査

2020年9月3日

今回は高粘度撹拌に関する研究を紹介します。

論文概要

Mixing viscoplastic fluids in stirred vessels over multiple scales: A combined experimental and CFD approach

Andrew W. Russell, Lyes Kahouadji, Karan Mirpuri, Andrew Quarmby, Patrick M. Piccione, Omar K. Matar, Paul F. Luckham, Christos N. Markides, Chemical Engineering Science 208 (2019) 115129

非ニュートン流体を小型翼で撹拌した場合、撹拌翼の周りだけ流動し、その外側は混合されず静止している状態になることがあります。

このような状態になったときの翼の周りの流動領域をカバーン(cavern)と呼びます。

この論文では撹拌条件を変えて実験と流動解析の両方を実施し、カバーンの特性を評価しています。

助手
非ニュートン流体や高粘度流体はふつう小型翼で撹拌しませんよね?
その通りです!
通常は翼径の大きい大型翼を使用します。

今回はもし小型翼で非ニュートン流体を撹拌したらどうなるのか、この論文を題材に知ってもらいたいと思っています。
ルート

実験・解析手法

撹拌槽は2, 5, 10Lの3種類を使用し、撹拌翼は翼径/槽径比=0.285のラシュトンタービン翼を使用しています。

論文より引用

流体はCarbopol 980という粉末を所定量水に溶かして作成しています。
非ニュートン性を示し、上図のようなせん断力とせん断速度の相関を示します。

流動解析では上式でFig1の相関と合うようにフィッティングして粘度を入力しています。

評価方法

カバーンの写真とカバーンの直径Dcを翼径Dで割って無次元化した値で評価しています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

まずは流動解析結果の妥当性を検証しています。
縦軸に規格化した流速、横軸に規格化した半径方向の位置をプロットしています。

(a)4.0 s-1、(b)7.0 s-1と翼の回転数を変えてそれぞれ比較していますが、赤点の文献値とCFD解析結果が良く一致しています。

論文より引用

続いて実験でのカバーン形成写真です。
翼周りの流動領域だけ黄色で着色しており、黄色の領域がカバーンです。

ニュートン流体であれば黄色の着色剤が槽全体に広まっていくのですが、非ニュートン流体であるためにこのような現象が起こることがあります。

(a)9.3 s-1、(b)11.7 s-1、(c)14.0 s-1は回転数を変化させており、一番回転数の高い(c)がカバーンが最も大きくなっています。

助手
これは要するに黄色の領域しか混ざっていないということですか?
そういうことですね。

外側の緑色に見える領域は翼の吐出流が届いておらず、まったく混ざっていません。

もし発熱反応が起こるような系でこのような混合状態になってしまうと、除熱が追い付かずに槽内温度が上がり続けてしまいます。

温度上昇によって反応速度はさらに大きくなり、いわゆる"反応暴走"が起こってしまします。

最終的には反応槽圧力が急激に高まり、爆発に至る可能性もあります。
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論文より引用

続いて縦軸が無次元化したカバーン直径、横軸が回転数Nのグラフです。

Case1~3で流体の粘度範囲を変えてデータを取っていますが、どのデータも回転数が高くなるにつれカバーン直径が大きくなっていることがわかります。

また、実験値と解析値がよく一致しています。

論文より引用

最後に上のグラフは縦軸が無次元化したカバーン直径、横軸が無次元数の相関式となっています。

Dc/Dは上式のような相関で表されることが知られています。

Fig16は論文で実施したすべての実験と解析結果をプロットしており、各無次元数の係数を
Rem-3Rey0.6n-0.1ks-1という値にすることで良好に表すことができています。

したがってこの相関式を使用することでカバーンの直径を予測することができる、というのがこの論文の一つの成果となります。

論文の内容はかなりアカデミックな話なので難しいです。

しかし工業レベルでの装置設計に携わる人間として、非ニュートン流体の取り扱いには常に気を配る必要があると思います。

うちの会社でも過去には撹拌装置の安易な転用が行なわれた例があります。

液の物性や撹拌翼のフローパターンを理解し、問題ないことを確認したうえで既設転用するようにしましょう!
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まとめ

今回は非ニュートン流体の撹拌について紹介しました。
ニュートン流体でも高粘度の液は混ざりが悪いため同様に注意が必要です。

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