CFD 論文紹介 撹拌槽

【論文紹介】バッフルの有無による動力の違いをSST k-ωモデルで検証

2020年6月28日

今回は撹拌槽の流動解析に関する研究を紹介します。

論文概要

CFD Simulation of Radially Stirred Baffled and Unbaffled Tanks

Alessandro Tamburini, Gaetano Gagliano, Francesca Scargiali, Giorgio Micale, Alberto Brucato, Michele Ciofalo CHEMICAL ENGINEERING TRANSACTIONS VOL. 74, 2019

撹拌槽はバッフルの有無によって動力や混合性能が変化し、目的によって使い分けられます。

 

この論文では撹拌レイノルズ数600~33,000の乱流域でSST k-ωモデルを使用して流動解析を実施し、バッフルの有無による結果の違いを比較しています。

解析手法

論文より引用

解析で使用されたモデルを上図に示します。撹拌翼はラシュトンタービン翼で、4枚板バッフルのモデルとバッフル無しのモデルを作成しています。

助手
バッフルがあると槽内の混合はどう変わるのでしょうか?
バッフルがあると上下に流れが生じやすく、混合が促進されます。なので一般的にはバッフルを付けることが推奨されます。
しかし、例外もあって重合系や晶析系で固体が壁面に付着しやすい場合はバッフルを付けないこともあります。
ルート

撹拌レイノルズ数Reは500、 1,000、 2,500、 5,000、 10,000、33,000でそれぞれ解析を実施しています。
乱流モデルはSST k-ωモデルを使用しています。

評価方法

撹拌レイノルズ数Reにおける動力数Npと吐出流量数Nqで評価しています。
撹拌レイノルズ数はRe=ρnd2/μ、
動力数はNp=P/(ρn3d5)、
吐出流量数はNq=q/(ND3)でそれぞれ計算されます。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

この図は横軸に撹拌レイノルズ数Re、縦軸に動力数Npをプロットしたものです。
Npが大きいほど撹拌にかかる動力が大きいことを意味します。

グラフの特徴としては、層流域であるRe=1~10くらいまでは線形的にNpが下がっていることが挙げられます。これは層流域では粘度の影響が大きく、より高粘度な液を撹拌しようとするほど(Reが低いほど)、動力がかかってしまうからです。

一方で本論文の解析領域である乱流域(Re≧500)では基本的に低粘度流体であるため粘度の影響は少なく、翼の回転数の影響が大きくなってきます。
加えてバッフルの有無によってNpが異なる挙動を示すことが知られています。
バッフル有りの場合はReが増加するにつれてNpが少し増加し、最終的にはReに依らず一定値を示します。
バッフル無しの場合はReが増加するにつれてNpはどんどん減少していきます。

助手
バッフルがないと、なぜ動力は下がっていくのですか?
バッフルが無いと撹拌槽の液が回転方向にぐるぐる回るだけの旋回流になってしまいます。

こうなると液は遠心力で外側に移動し、撹拌翼のある中心部は液面が下がって空回りしてしまうので動力が下がります。
このような状態は混合性能が非常に悪いのでなるべく避けるべきですね!

ルート

また、実測値(点線)と解析値との比較もされています。
多少の差異はあるものの、Npは概ね良好に一致しています。

論文より引用

続いてこの図は横軸に撹拌レイノルズ数Re、縦軸に吐出流量数Nqをプロットしたものです。
Nqが大きいほど翼の吐出流量が大きいことを意味します。

Reが低い領域は粘性が強く吐出が弱くなっています。Reが増加し遷移域(Re≧100以上)になると粘性の効果が弱まり吐出流量が増加しています。

さらに乱流域になると動力数Npと同様にバッフルの有無によって傾向が異なっています。
バッフルがある場合はReが増加するとさらに吐出量が増加していますが、最終的にはほぼ一定値を示しています。
バッフルが無い場合は空回りして吐出量が低くなっています。

もしバッフルなしの撹拌槽を設計する場合は、回転数を増やしてReを大きくし過ぎると混合が極端に悪くなります。
遷移域のReになるよう、液面の状態を見て回転数を下げて調整したいところです。
ルート

まとめ

このような液の単相流であれば流動解析でもそれなりに良い精度で計算できます。
色々とパラメータを変えてどのような撹拌条件が効果的か調査してみるのも面白いですよ!

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