論文紹介 蒸留塔

【論文紹介】棚段塔の新型トレイ"spiral nozzle tray"の評価

2020年7月28日

今回は棚段塔に関する研究を紹介します。

論文概要

Combination of spiral nozzle and column tray leading to a new direction on the distillation equipment innovation

Haifeng Cong, Xingang Li, Zhijie Li, Hong Li, Xin Gao, Separation and Purification Technology, 158 (2016) 293-301

棚段塔で使用される代表的なトレイとしてシーブトレイ、バルブトレイがあります。

シーブトレイは蒸留塔の操作範囲が狭い点、バルブトレイは圧力損失が高い点がデメリットとして挙げられます。

この論文では操作範囲がバルブトレイより広く、圧力損失はバルブトレイより小さい
"spiral nozzle tray"の性能を評価しています。

実験・解析手法

論文より引用

上図が実験で使用したスパイラルノズルトレイです。

スパイラルノズルと呼ばれる渦巻状のノズルをバルブキャップの代わりにトレイに取り付けています。

実験ではシーブトレイ、バルブトレイ、スパイラルノズルトレイをそれぞれ使用し、結果を比較しています。

論文より引用

上図に装置概要図を示します。蒸留塔は塔径600mmで実機サイズです。
水と空気を使用して実験しています。

評価方法

トレイの圧力損失、エントレインメント率、段効率ETで評価しています。

段効率は理論トレイ段数Nを実トレイ段数Npで割ったものです。

理論トレイ段数は上式で求めています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

これらの画像はスパイラルノズルからガスが吹き出る様子を観察したものです。
上の写真から順番に、ガス穴基準のF-factor(F0)が2, 6, 10と増えています。

ガスはねじれのすき間から、ねじれに沿って旋回しながら吹き出ていることがわかりました。
このような吹き出方をすることでガスが細かく分裂し、気液接触効率が向上するようです。

論文より引用

続いてこのグラフは縦軸がドライ圧力損失、横軸がガス穴基準のF-factor(F0)で、各トレイの結果を比較しています。
スパイラルノズルトレイはバルブトレイより圧力損失が小さいことがわかります。

論文より引用

同様にこのグラフは縦軸にウェット圧力損失をプロットして比較しています。
傾向としては変わらず、バルブトレイより圧力損失が小さくなっています。

論文より引用

続いて縦軸がエントレインメント(飛沫同伴)率、横軸が塔径基準のF-factor(FT)のグラフを示します。

エントレインメントとは液滴がガスと一緒に上部へ吹き上げられてしまう現象で、高沸点成分が上にいってしまうので蒸留塔の分離性能が悪化します。

そのため、エントレインメント率は少ない方が良いです。
グラフをみるとスパイラルノズルトレイが一番値が小さく推移しており、性能が良いことがわかります。

論文より引用

最後に段効率Etを示します。
一般的にシーブトレイの段効率は50%あればよいほうだと言われていますが、この論文では一番性能の良いところで50%となっています。

バルブトレイの段効率は最も高く75%くらいあります。
しかし横軸のF0が変わるとシーブトレイと同じくらいまで性能が悪化しており、効率の良い運転範囲が狭いです。

一方でスパイラルノズルトレイは広い範囲で60~70%の段効率を維持しており、運転範囲が広く分離性能が良いことがわかります。

助手
このトレイは実用化されているんでしょうか?
論文中では明記されていませんでした。

スパイラルノズル自体はもともと別用途で使用されているようで、普通に売られています。
トレイ穴に合うサイズを買ってくれば改造することはできるでしょう。

しかし実績のないものは採用されにくいでしょうから、導入したければ自分たちで十分にデータを取る必要がありますね!
ルート

まとめ

この論文のように装置形状の工夫で効率を改善できるのが、化学工学の醍醐味ですね!
もし本当に導入検討するのであれば、特許調査も必要になるかと思います。

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