CFD 論文紹介 撹拌槽

【論文紹介】撹拌槽の流動解析における回転領域のサイズ影響調査

2020年8月21日

今回は撹拌槽の流動解析に関する研究を紹介します。

論文概要

THE INFLUENCE OF ROTATING DOMAIN SIZE IN A ROTATING FRAME OF REFERENCE APPROACH FOR SIMULATION OF ROTATING IMPELLER IN A MIXING VESSEL

M. ZADRAVEC, S. BASIC, M. HRIBERSEK, Journal of Engineering Science and Technology Vol. 2, No. 2 (2007) 126 - 138

撹拌槽などの回転機械について流動解析を行なう場合、モデルは回転領域と静止領域に分けて作成するのが一般的です。

しかし回転領域をどの程度のサイズで作成すればよいかは、あまり調査されていません。

この論文ではラシュトンタービン翼を使用した撹拌槽で、回転領域のサイズを変えて解析し結果を比較しています。

実験・解析手法

論文より引用
論文より引用

上図と上表に回転領域のサイズを示します。
この論文ではno.1~4の4種類のサイズの回転領域を用意して解析しています。
回転領域の直径Mと高さmがそれぞれ表の値となっています。

助手
先輩は普段どのくらいのサイズの回転領域で解析してます?
完全に経験的な話ですが、上の4つの中で言うとno.3とno.4の間くらいのサイズで解析したいですね。

翼に対して高さ方向はno.3くらいの長さで良いと思いますが、半径方向が短すぎると感じます。

半径方向は翼の吐出で流速が速くなっているところなので、回転領域を大きめに取って計算精度を上げたいですね!
ルート
論文より引用

計算時間短縮のため、解析モデルは1/2モデルで計算しています。
メッシュは上図に示す通り、テトラメッシュを主とした形状で切っています。

解析ソフトはANSYS-CFXで、乱流モデルはSST k-ωを使用しています。

また、解析だけではなく実験(PIV)で流速を測定して解析値と比較しています。

PIVとはParticle Image Velocimetryの略で、撹拌槽にトレーサー粒子を投入し、レーザーを照射した測定断面の粒子の変位を検出することで流体の流速を測定する手法です。

評価方法

流線と、鉛直方向位置zを翼高さWで割って無次元化した値z/W、半径方向の速度勾配で評価しています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

上のグラフは各解析の水平断面、垂直断面で見た流線を示しています。
左から順番にno.1、no.2、no.3、no.4と並んでいます。

全体の流れとしてみるとno,1~4でそれほど大差はなく、ラシュトンタービン翼の放射流を再現できていると考えられます。

しかし回転領域と静止領域の境目を見ると、回転領域が大きいno.4が最もスムーズな流線となっているように見えます。

論文より引用

続いて上のグラフは縦軸が鉛直方向位置zを翼高さWで割って無次元化した値、横軸が流速vを翼端速度vtipで割って無次元化した値をプロットしています。
翼の中心部がz/W=0となるところで、最も流速が早くなります。

実線及び点線が解析値で、黒点のプロットがPIVでの実測値です。
どのモデルも概ねよく一致しています。
4つのモデルの中では回転領域が一番大きいno.4が実測値と最もよく一致しています。

論文より引用

no.4が最も実測値とよく合う理由として上図のデータを論文中で示しています。
縦軸が半径方向の速度勾配、横軸が半径方向の位置となっています。

このグラフでは半径方向の位置が0.022~0.025mの間で速度勾配が85から-80まで急激に変化しています。

問題となるのが半径方向の位置で、no.1~no.3は回転領域の半径が0.0203、0.0213、0.0223mとなっており、速度勾配が大きい位置より小さくなっています。

no.4の回転領域の半径は0.0263mで、速度勾配の大きい箇所が回転領域内に収まっています。

これらのことから、翼の吐出によって発生する速度勾配の大きい領域が回転領域に収まるように作成すると、精度の良い解析結果になると考えられます。

助手
なるべく回転領域は大きく取った方が良いということでしょうか?
この論文の結果を見る限りでは大きく取れるのであれば取った方が良いでしょう。

しかしコイルが槽内に入っている場合や大型翼の場合は、回転領域を大きく取れませんので可能な範囲で工夫することになります。

ただ、流動解析するうえで重要なのは解析目的に応じたモデルを使用することです!

"槽全体の流れを大まかに把握したい"という目的であればno.1の回転領域サイズでも十分に傾向は見れます。

一方で"翼背面の剥離渦の形成を詳しく調査したい"という目的ならばno.4でなければダメでしょう。

ちなみにうちの会社での実機レベルの計算では、大まかに流れがわかれば十分ということが多く、いかにモデルを簡略化して早く結果を出すか、が求められます。
ルート

まとめ

回転領域のサイズに関しては特に指標もないため、皆さん経験的に作成されているのではないでしょうか。

余裕があれば回転領域が違うサイズで何ケースか解析して、結果が大きく変わらないか確認したいところです。

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