CFD 論文紹介 撹拌槽

【論文紹介】SiO2ナノ粒子流体による撹拌槽伝熱能力の向上

2020年7月10日

今回は撹拌槽の伝熱に関する研究を紹介します。

論文概要

An experimental and numerical study of heat transfer in jacketed vessels by SiO2 nanofluid

Parinaz Hafezisefat1 · Mohsen Nasr Esfahany · Mohammad Jafari, Heat Mass Transfer (2017) 53:2395–2405

撹拌槽の冷却には水や不凍液がよく使われます。しかし反応系の要求水準が上がり、従来の冷媒では冷却能力が足りないことがあります。

本論文ではSiO2を含むナノ粒子流体を冷媒として用いることで伝熱性能の向上を図っています。

実験・解析手法

本論文では実験とCFD解析を両方実施しています。

論文より引用

上図に実験装置の概要を示します。
撹拌槽のジャケットに所定の条件の冷媒を流して伝熱実験をしています。

実験は大まかに分けて二種類あり、一つ目がグリセロール水溶液をジャケットに流す実験です。0、20、30、40wt%と濃度を変えて粘度条件を変化させています。

二つ目がSiO2ナノ粒子流体をジャケットに流す実験です。0、0.1、0.25、0.8vol%と濃度を変えています。

また、撹拌槽内はどの実験でも850rpm一定で撹拌させ、槽内側の影響が出ないようにしています。

論文より引用

解析で使用されたモデルを上図に示します。CFDではジャケット側の流れ場と温度場を解析しています。

乱流モデルはk-εモデルを使用しています。

評価方法

伝熱性能はヌセルト数Nuで評価しています。

ヌセルト数Nuは一般的に上式で表されます。

加えてヌセルト数は実験的にレイノルズ数Re、プラントル数Prと相関があることが知られています。
この論文では槽内側のヌセルト数は上式を使用しています。

ジャケット側のヌセルト数は上式を使用し、各定数は実験値でフィッティングしています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

この図はメッシュ数を変化させた場合のレイノルズ数Re、ヌセルト数Nuを調査しています。

メッシュの数が456,000と615,000でほとんど同じ値となっているのでこのくらいのメッシュ数で解析するのが妥当だということがわかります。

助手
なぜメッシュ数が変わるとヌセルト数が変わるのですか?
境膜伝熱係数hやヌセルト数Nuは壁面のメッシュの大きさや使用している壁関数によって値が大きく変わります。

自分がCFDで解析している系が一般的にどの程度の伝熱係数になるのか把握しておけば、解析値が妥当か判断しやすいですね!
ルート
論文より引用

上図は水で実験した場合のNu-Reのグラフとなります。

評価方法でヌセルト数Nuの相関式を示しましたが、一般的にレイノルズ数が増加するほどヌセルト数も増加する傾向となります。

実験値、CFD解析値を比較すると、解析値の方が少し値が小さいですがそれなりによく表現できています。

論文より引用

続いてグリセロール溶液の結果を示します。解析値の方が少し大きいNuとなっていますが傾向はよく一致しています。

絶対値としてはある程度の誤差は出るものの、解析値同士の比較であれば十分設計に活用できる精度ではないでしょうか。
ルート
論文より引用

続いてナノ粒子流体の実験結果を示します。
横軸はRe、縦軸は境膜伝熱係数(ナノ粒子)/境膜伝熱係数(水)となっています。

どの結果も縦軸の値が1以上になっているため、水のときよりは伝熱性能が向上しています。
粒子濃度を多くするほど性能が向上し、最大で1.1倍になっています。

助手
境膜伝熱係数が1.1倍になるのはすごいんですか?
粒子濃度が小さいのかもしれないですが、正直もっと性能が向上しないと工業レベルで使おうとはならないです。

やはり物理的に伝熱面積を増やすのがわかりやすく効果が大きいです。

とはいえCFDでジャケット伝熱の評価がある程度できることがわかったのはこの論文の一つの成果だと思います。
ルート

まとめ

撹拌槽の伝熱評価は熱交換器と違って計算式の適用範囲が小さく不十分なところが大きいように思います。
この論文のようにCFD解析で評価するのも検討の一つの手段として入りそうですね。
ナノ粒子冷媒で思ったほど性能が向上していなかったのは残念ですが、今後の研究に期待しましょう。

別途記事で、撹拌槽伝熱と改善方法について解説しています。

【撹拌槽伝熱】総括伝熱係数U・伝熱面積A・温度差ΔTそれぞれの改善手法を徹底解説

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