熱交換器 論文紹介

【論文紹介】熱交換器のファウリング調査

2020年6月13日

今回は熱交換器に関する研究を紹介します。

論文概要

Calcium carbonate fouling on double-pipe heat exchanger with different heat exchanging surfaces

Teng, KH, Kazi, SN, Amiri, A, Habali, AF, Bakar, MA, Chew, BT, AlShamma'a, A, Shaw, A, Solangi, KH and Khan, G (2017) Powder Technology, 315. pp. 216-226.

熱交換器は流体を所定の温度に昇温、冷却するために使用されます。

汚れやすい系では長時間使用し続けると伝熱面にスケールが付着し伝熱性能が悪化します。その結果、流体を所定の温度に制御することができず、プラントの正常運転を妨げる原因になります。

この論文では5種類(銅、アルミ、真鍮、炭素鋼、SUS316)の材質を用いて実験し、熱交換器の汚れ特性を評価しています。

実験手法

論文より引用

5種類の材質のチューブ(ID42.1mm、OD46.8mm、長さ1300mm)を使用しています。

論文より引用

チューブの間は同じ材質の試験片(長さ10mm)で接続しています。

実験装置は下図のようになっています。

論文より引用

実験時間は72hrでチューブの内側に温水(50℃)を流し、外側に付着物を含む混合液(25℃)を流してチューブ表面に付着させます。

混合液はCaCl2とNaHCO3を含む液で、反応してCaCO3になります。この炭酸カルシウムCaCO3がチューブ表面で付着していきます。

助手
炭酸カルシウムってチョークに使われていますよね!
そうですね!我々の身近なものによく使われている物質で、
実は水道水や川の水にも含まれているのです。

熱交換器の冷却水として川の水を使用することがありますが、
炭酸カルシウムが実際にスケールの原因となっています。

この論文は水質の悪い冷却水でプロセス液を冷却させる系を模擬した実験となっていますね。
ルート

評価方法

様々な条件下で実験を行ない、チューブ表面に付着したスケールの量g/m2(単位面積当たりの重量)で比較しています。

加えて伝熱計算を行ない、汚れ係数を算出しています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

この図は各材質表面の付着物量(g/m2)の経時変化です。

時間が経つにつれ付着物量が多くなっていることがわかります。材質でみると銅、アルミ、炭素鋼、真鍮、SUS316の順で付着が多くなっています。

助手
銅とかアルミって汚れやすいんですね!
ただ熱交換器の材質に銅やアルミを使っている例はあまり聞いたことがないですね。
一般的には炭素鋼やステンレス(SUS)が多いでしょうか。
ルート

続いて汚れ係数m2K/Wで評価した結果を示します。

論文より引用

汚れ係数でみるとSUS316は72hr経っても0.0001程度であまり変化がありませんが、他4種類の材質は途中で汚れ係数が大幅に増加しています。
最も高いところでは汚れ係数が0.0008を超えています。

私が熱交換器を設計するときは、汚れが少ない系は汚れ係数0.0001~0.0002で設計します。ガスクーラやコンデンサーは汚れが少ないことが多いですね。

一方で汚れが激しいのは高温で加熱するリボイラーで、特に重合して付着しやすいものを加熱する場合はスケールが多くなります。

それでも汚れ係数は0.0008程度で設計しますので、本論文の実験はものすごく汚れやすい条件になっていますね。
ルート

続いて、実験のパラメータを変更した結果を示します。
管外側の混合液流速、温水温度、混合液の濃度を変化させています。

論文より引用

管外側の混合液流速を0.15、0.3、0.45m/sと変化させています。流速の遅い方がスケールが多く付着しています。

論文より引用

温水温度を50、60、70℃と変化させています。温水温度の高い方がスケールが多く付着しています。

論文より引用

混合液濃度を300、400、500mg/Lと変化させています。濃度の高い方がスケールが多く付着しています。

助手
なんというか、実験しなくてもわかるようなことをわざわざ実験してる感じがします・・・

確かに実験しなくてもわかるようなデータですが、ちゃんと理論通りの結果になることを確認するのは実機スケールだと大事なことです!

ラボだとうまくいったのに、実機だと理論通りのことができなくなるのはよくあることですから!

助手さんの言う通り論文として新規性があるかはまた別の話です・・・

ルート

まとめ

付着しやすい材質や運転環境がよくわかる論文だったと思います。
実プラントのトラブルはスケールの付着や腐食等、材質に関連するものが多いので勉強しておいて損はないですよ!

© 2021 化学工学レビュワー Powered by AFFINGER5