論文紹介 蒸留塔

【論文紹介】シミュレーションによる充填塔のHETP算出

2020年7月22日

今回は充填塔のHETPに関する研究を紹介します。

論文概要

HETP measurement using industrial-scale batch distillation

Nguyen Van Duc Longa,, Dong Young Lee, Sun Yong Park, Byeng Bong Hwang, Moonyong Lee, Chemical Engineering & Processing: Process Intensification, 148 (2020) 107800

HETPとは理論段数当たりの充填高さ[m]で表される指標で、充填塔の分離性能を評価するうえで重要な指標です。

一方で様々な因子に影響されるため、運転条件や装置スケールが変わった際に評価が難しい値でもあります。

この論文ではシミュレーションで理論段数をパラメータとして計算し、実験値と比較することで妥当な理論段数とHETPを算出しています。

実験・解析手法

論文より引用

実験は上図に示すような実機スケールに近い充填塔(塔径100mm、充填高さ約2500mm)で実施されています。

論文より引用

バッチ蒸留で最初の4~5hはひたすら液を蒸発させて上部のCollectorに液を溜めます。
安定して還流できる液量が溜まったら、還流を開始させて気液接触させています。

充填物は規則充填物2種類、不規則充填物1種類を使用しています。

論文より引用

HMP 500WG

論文より引用

HMP 700WG

論文より引用

NMTP 15 

論文より引用

フィード液条件を上表に示します。主成分はジクロロジフルオロメタンCCl2F2 (R-12)でいわゆるフロンです。

環境には良くないですが、Aspenデータベースの気液平衡データが実測値とよく合うということで選定されたようです。

評価方法

R-12の純度の経時変化を実験値と計算値で比較し、理論段数NとHETPを算出しています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

このグラフはHMP 500WGの結果です。縦軸にR-12の純度、横軸に時間を取り実験値と計算値を比較しています。

計算値は理論段数Nを変化させており、N=7、もしくは8で実験値と近い値となっています。

論文ではN=8を妥当な理論段数としており、充填高さ2550mmからHETP=319mmと算出されました。

論文より引用

続いてHMP 700WGの結果です。同様に理論段数はN=9、10で近い値となっています。
論文ではN=9、10の値を両方使用してHETPを求めており、HETP=267、296mmと算出されています。

論文より引用

最後に3つの充填物のHETPをまとめた結果が上表です。
NMTPについては理論段数に関するグラフがなく、HETPのみの記述です。

"New methodology"が論文で求めた計算値、"Vendor"がベンダー提示のHETPカタログスペックです。

計算値はベンダーのカタログスペック範囲に収まっており、ベンダーのスペック通りの分離性能が出ていることがわかります。

助手
ベンダーの製品紹介を聞くと良さそうな話ばかりで、つい新しい装置にしたくなるんですよね!
ベンダーも騙すつもりはないでしょうが、話を鵜呑みにしてはいけませんよ。

もし新しい装置を導入するならしっかりバックチェックして、ベンダーの設計に問題ないか確認しましょう!

トラブルで困るのは結局自分たちなので。
ルート

まとめ

実験で充填物の段数を変えるのは大変ですが、シミュレーションなら自由に変えられます。
うまく実際の系をモデルで再現できれば、この論文のようにHETPを簡単に求められます。

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