CFD 論文紹介 撹拌槽

【論文紹介】ポピュレーションバランスモデル(PBM)で晶析撹拌槽の流動解析

2020年7月5日

今回は晶析撹拌槽の流動解析に関する研究を紹介します。

論文概要

3-D CFD-PBM coupled modeling and experimental investigation of struvite precipitation in a batch stirred reactor

Seyyed Ebrahim Mousavi, Mahbuboor Rahman Choudhury, Md. Saifur Rahaman⁎ Department of Building, Civil, and Environmental Engineering, Concordia University, 1455 de Maisonneuve Blvd, West Montreal, Quebec H3G 1M8, Canada, Chemical Engineering Journal 361 (2019) 690-702

晶析における結晶径は完全混合槽を始めとする理想的な仮定のもとで計算されるのが一般的で、複雑な3次元モデルで計算するのは容易ではありません。

この論文ではPopulation Balance Model(以下PBM)を使用して結晶径分布を表現し、系内の過飽和度によって結晶径が成長する解析を実施しています。

解析手法

論文より引用
論文より引用

解析で使用されたモデルを上図に示します。撹拌翼はラシュトンタービン翼で、4枚板バッフルを設置しています。

解析ソフトはANSYS Fluent v.17.1で、乱流モデルはRNG k-εで解析しています。

助手
以前、晶析のような固液撹拌ではラシュトンタービン翼は好ましくないと聞いたのですが?
実際に生産するにあたってはこの翼を選ばない方がよいでしょうね。
ただ、流れが単純でわかりやすいのでアカデミックな分野ではいまだによく使用されています。
ルート

晶析系は上式で表されます。析出物はスツルバイト結石と呼ばれ、動物の尿路結石の成分になったりするものです。

この式のイオン積IAP、過飽和度SIはそれぞれ上式のような形で表されます。

この過飽和度SIが大きければ結晶成長速度が速くなることが一般的に知られています。

この論文では成長速度 G(t)をSIの関数と定義してモデルに組み込んでいます。

また、結晶径はPBMで分布を持たせて現実に近い計算を行なっています。

論文より引用

本論文の晶析系ではpHによって結晶の核発生の有無が変わってきます。

解析モデルでは"Metastable Zone(準安定領域)"という結晶成長はするが、新しく核発生はしない前提で計算されています。

評価方法

動力数Np、結晶径分布、平均結晶径で評価しています。

結果

それでは結果に移ります。

論文より引用

この図は横軸に撹拌レイノルズ数Re、縦軸に動力数Npをプロットしたものです。
文献値の実線と比較してCFD解析結果がよく一致していることがわかります。

論文より引用

続いて上図は結晶径分布の0~60minの経時変化です。時間が経つにつれ右側に分布がシフトし粒子径が大きくなっています。

助手
晶析ってあまり結晶径は変わらないんですか?
上の図を見ても結晶径が変わっているように見えません。
系によると思います。

この論文では過飽和度があまり高くない条件で解析されているので、結晶の成長速度も遅くなっています。

ただ、過飽和度が高い条件は核発生も起きますからCFDで再現するのはかなり難しいですね。
ルート
論文より引用

続いてこの図は平均結晶径を経時変化を示しています。

CFD解析値は単調に増加しているのに対して、実験値は50~60minで結晶径が小さくなっています。

これは実験では結晶の破砕の影響があったのではないかと考えられます。

まとめ

晶析撹拌槽のCFD解析はかなり難易度が高いですが、撹拌の影響や傾向を知るくらいには使えそうです。
実験条件の絞り込みやスケールアップ後の影響を確認するのに有益ですね。

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